第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

終末期医療

[O6] 一般演題6

[O6-03] 文献にみるDNARの決定場面と医療者の苦悩

○矢野 愛実1、青木 友梨花2、白矢 梨紗2、作田 裕美3 (1. 関西医科大学付属病院、2. 大阪市立大学医学部附属病院、3. 大阪市立大学看護学研究科)

Keywords:DNAR、蘇生措置決定

【目的】本研究の目的は、わが国の臨床現場において、DNAR指示はどのように決定され運用されているのか、関わる医療者はどのような思いを抱えているのかを明らかにすることである。【方法】文献は「医学中央雑誌web版」を用い、キーワードを「蘇生措置決定」「DNAR」「保健医療従事者」とし、国内文献を収集した。収集した文献を、DNAR指示の決定場面の5W1H、DNARに関する「医療者の苦悩」「看護師の誤った運用」「医師の誤った運用」で整理し文献カードを作成した。倫理的配慮として、引用は原文を用いるとともに、引用文献名および引用文献箇所を明確に記述した。【結果と考察】DNARまたはDNR指示の決定場面、医療者の苦悩の詳細な記述があった31件を分析対象とした。決定場面の「When:いつ」では、患者本人の意識が低下した状況で決定されていた。しかし、意識調査の結果によると、医療者はより早い段階で行うことが望ましいと考えていた。「Where:どこで」と「Who:だれが」では、医師と家族の面談時の決定が大半であり、患者による事前申告は希少であった。医療者は患者本人からの意思を確認すべきと考えているが、実際は家族への確認にとどまっていた。「Why:なぜ」では、患者家族が治療の限界や患者への負担を考えた、であった。「What:何を」「How:どのようにして」では、昇圧剤や侵襲の高い医療行為を望まないことを伝えるであった。また、医療チームがDNRを提案した事例のうち、家族も希望する一致率は76%であった。DNARの誤った運用に関しては、在宅療養者に関わる医師、および訪問看護師が急変時に119番通報の実施や指示している現状があった。こうしたことから、DNARに関する「医療者の苦悩」は深いことが分かった。看護師はアドボケーターとしての苦悩を抱え、その役割を果たせていないのが実情であると考えられた。救急救命士は、傷病者のDNARと救急隊の責務との間でジレンマを抱いていた。これを解決するためには対応方法の検討と、市民・医療者による救急車の適正利用が必要と考えられた。また、医療者、患者・家族ともDNARと終末期医療とを混同している状況もうかがえ、DNARの正しい運用に向け、医療者が知識を獲得するとともに、他職種の役割や苦悩について理解を示すことが必要である。
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