第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

終末期医療

[O6] 一般演題6

[O6-04] 臓器・組織提供の意思確認に対する看護師の役割

○熊沢 真弓1、藤後 秀輔1,2、椿 美智博2 (1. 昭和大学藤が丘病院 救急外来、2. 昭和大学大学院保健医療学研究科)

Keywords:臓器提供、意思確認、終末期

【背景】臓器提供の対象となりうる原疾患の多くは突然の脳血管障害や重症頭部外傷、また外因性の低酸素脳症によるものであり全体の90%以上を占めている。つまり急性期医療の中で終末期医療へと移行することから、クリティカル領域に従事する医療者が臓器提供に対応する場合が多い。先行文献において、臓器提供に対する医療者の負担が大きいことは明らかになっており、特に医師においては、それまで全力で治療にあたっていたにもかかわらず、脳死とされうる状態と判断されると、治療方針が真逆へ方向転換することや臓器提供の説明が家族に不信感を与えることを懸念するストレスも少なくない。そのため、終末期であることを家族へ説明しても、臓器提供の意思確認がされないまま最期を迎えることも多いと言われている。
【目的】“臓器・組織提供の意思に対するアンケート”への回答から「提供に関する話を聞きたい」という家族の意向を尊重し、看護師と患者家族とのコミュニケーションにおいて、臓器・組織提供に対する思いを聴取し、実際に提供となった症例報告を振り返り、臓器・組織提供の意思確認のあり方を検討する。
【倫理的配慮】個人が特定できる情報が一切ない記述形式による症例報告を参照し、発表においても個人の特定ができないよう配慮した。また“臓器・組織提供の意思に対するアンケート”の配布についてはA大学倫理委員会により承認された。
【方法】医師によって終末期と判断されたが臓器・組織提供の意思確認がされなかった対象、かつ“臓器・組織提供の意思に対するアンケート”で提供に関する話を希望した対象3症例の報告書を後方視的に調査した。検討されたすべての症例において、患者の状態が終末期に値するというIC後、医師とカンファレンスをおこない、看護師より提供に対する家族の希望を改めて聴取することを共有した。家族に対し患者へのケアに対する希望を聞かせてほしいことを伝達し、意思確認の場をセッティングした。話を聞きたくないときはいつでも拒否や退室の自由があることを看護師より説明したうえでコミュニケーションをはかった。
【結果】患者状態から臓器の提供が困難であり、組織の提供に対する家族の思いについて看護師より聴取したところ、提供の希望がきかれた。家族の希望を医師へ報告。その後、移植コーディネーターへ連絡し、組織提供の実施となった。
【考察】臓器・組織提供の対象となりうる患者は、急激な発症によって急性期の状態となることから、家族が突然の出来事に対して戸惑い、さらに終末期という診断によってさらなるダメージを受けることは必然である。しかし、医療者側の確認不足によって、患者家族がおこなえる最期の選択の幅を狭めることがあってはならない。ICは医師の役割であるが、チーム医療において、医師がすべてを負担するのではなく、カンファレンスを通じて役割分担をおこなうことは有用であると考える。ケアを提供する看護師が家族の思いを知る機会は多く、ICという場に限局せず、家族の言葉をきくことができるのは、家族に寄り添う立場にある看護師だからこそできる業と考えられた。
【結語】臓器・組織提供の意思確認は、多くの場合、医師によっておこなわれている。しかし、医師の心理的負担も大きいことから、看護師が家族ケアとして患者家族の思いを聴取し、それを医療チームへつなぐことが、ひいては最期の希望の実現に寄与すると検討された。