第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-02] 救命救急センターに入院する患者の家族ニードの変化-転帰による相違-

○佐藤 正雄1 (1. 東京都立墨東病院 高度救命救急センター)

Keywords:家族看護、転帰、CNS-FACEⅡ、救命救急センター、クリティカルケア

Ⅰ はじめに

 近年、クリティカルケア領域で最期を迎える患者の家族への支援のあり方についての課題が指摘されている。重症・救急患者の家族支援においては、家族のアセスメントツールとしてCNS-FASEⅡが用いられているが、先行研究では患者の転帰による違いについては報告されていない。そこで本研究では救命救急センターに入室した患者の転帰により、家族のニード及びコーピングの変化に違いがあるのかを明らかにすることを目的とした。



Ⅱ 研究方法

1.研究デザイン:量的研究(群間比較)

2.研究対象

2019年7~12月にA病院救命救急センターに入室した患者のキーパーソンに実施したCNS-FACEⅡの評価データ

3.データ収集方法及び内容

 カルテより患者・家族の情報を得た。看護師が実施したCNS-FACEⅡの評価結果を回収し、一定の計算式によって下位尺度の得点を算出した。

4.データ分析方法

 得られたデータを救命救急センター退室時の転帰によって4群(Ⅰ群:入院当初から回復が見込まれ実際に軽快、Ⅱ群:当初「回復の見込みがない」と説明されたが生命が存続、Ⅲ群:当初回復が見込まれたが死亡退院、Ⅳ群:当初「回復の見込みがない」と説明され死亡退院)に分け、入室時・検査時・4:1加算移動時・退室時の4時点での下位尺度の得点の平均値を比較した。また転帰について軽快(Ⅰ・Ⅱ群)死亡(Ⅲ・Ⅳ群)の2群に分け、各時点での下位尺度の平均値を比較した。検定にはSPSS Ver.25 を使用し、有意水準は5%未満とした。

Ⅲ 倫理的配慮

本研究はA病院倫理・個人情報保護委員会看護部会の承認を得て実施した。

Ⅳ 結果

1.転帰4群による下位尺度の得点の比較

 入室時・検査時・4:1加算移動時は群により差は見られなかった。退室時の評価件数42件の「情緒的サポート」の平均値は、Ⅰ群1.42、Ⅳ群2.05で有意差が認められた。「情報」の平均値は、Ⅰ群2.83、Ⅳ群2.10で有意差が認められた。「接近」の平均値はⅠ群2.87、Ⅱ群2.87、Ⅳ群1.90で、Ⅰ群とⅣ群およびⅡ群とⅣ群で有意差が認められた(一元配置分散分析、多重比較)。

 退室時に有意差が認められた下位尺度の推移をみると、「情緒的サポート」ではⅠ群はほぼ変化がなくⅣ群は高い状態が持続。「情報」は、Ⅰ群は徐々に上昇しⅣ群は一時上昇するが退室時には低下。「接近」は、Ⅰ群とⅡ群が徐々に上昇しⅣ群は一時的上昇するが退室時には低下していた。

2.軽快・死亡の転帰による下位尺度の得点比較

 入室時・検査時・4:1加算移動時の得点に差は見られなかった。退室時のニードのうち「情緒的サポート」の平均値は、軽快群1.41、死亡群1.90、「情報」の平均値は、軽快群2.83、死亡群2.20、「接近」の平均値は、軽快群2.87、死亡群2.10、「保証」の平均値は軽快群2.99、死亡群2.27で、有意差が認められた(t検定)。

コーピングは「問題志向型」の平均値は軽快群2.36、死亡群2.04で有意差が認められた(t検定)。

Ⅴ 考察

 退室時はⅣ群が情緒的サポート、Ⅰ群が情報提供を必要とし、Ⅰ群・Ⅱ群が接近のニードをもっていた。これは患者が軽快し退室していく時点において、家族は情報を得たり、接近したいと思うようになるからではないかと考える。死を迎える患者の家族は、患者の死に対する苦悩、治療断念の決断に対する自責の念、患者と過ごすことが許されるような環境や雰囲気ではないという様々な要因により、患者に接近できなかったのではないかと考える。入室後の患者の状態変化に伴う家族のニードを把握して援助を実施することの必要性が示された。