第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-13] 心肺停止患者の初療における家族看護実践の実態と課題

○角屋 香苗1、藤田 大樹1 (1. 湘南鎌倉総合病院)

Keywords:初療室、家族看護実践、家族ニード、心肺停止患者

【目的】当院救急外来における家族看護実践の現状と課題を明らかにし導入すべき取り組みについて検討する。

【方法】当院救急外来に心肺停止状態で搬送された患者家族の対応を行なった救急看護師を対象に、看護師個人特性、家族看護実践、家族ニード、家族看護における課題等について自由記載及び選択肢式質問紙により調査した。

【倫理的配慮】依頼書で研究について説明し研究参加の同意を得た。所属部署の管理者の許可を得て実施した。
【結果】対象の当院救急看護師38名中31名(81.6%)より回答が得られ、有効回答は100%。実際の家族看護実践は、環境調整12件(37.5%)、信頼関係構築10件(31.3%)、情緒支援10件(31.3%)。看護師自身が考える家族ニードは、情緒支援15件(48.4%)、信頼関係構築6件(19.4%)、環境調整5件(16.1%)、情報提供4件(12.9%)、意思決定支援1件(3.2%)。看護師自身が考える家族ニードを満たす看護実践ができているかについて、できている17名(54.8%)、できていない14名(45.2%)。できていると回答した17名の看護師個人特性として、看護師経験年数1〜3年目4名(28.5%)、4〜5年目0名(0%)、6〜10年目9名(52.9%)、11〜15年目3名(17.6%)、16〜20年目1名(5.9%)。できていると回答した17名の看護師が実践している看護は、情緒支援17件(53.1%)、環境調整8件(25.0%)、信頼関係構築4件(12.5%)、情報提供3件(9.4%)。家族看護に課題があるが31名(100%)で、理由として、多忙17件(42.5%)が最も多く、導入すべき取り組みは、専属看護師の配置10件(43.5%)、学習会の開催8件(34.8%)であった。看護実践における看護師経験年数の違いに有意差はなかった。

【考察】当院救急看護師の家族看護実践は環境調整が最も多かったが、看護師自身が考える家族ニードは情緒支援が多く、実際の看護実践と認識に差があった。救急外来は救急処置を優先するため、家族に接する時間が限られ、人的・物理的環境に左右される。そのような環境で、突然の死を迎えた患者と家族が可能な限り最期の時間を共有できるよう配慮することは、家族の安全や安寧を整えようとしていると解釈できる。また、場を整え家族に直接関わるという過程から、信頼関係を促進させようとしていると考えられ、環境調整の看護実践が高くなったのではないかと考える。看護師は家族の悲嘆反応に対し、情緒支援が必要であると認識しているが、具体的な実践方法や自身が行う援助の効果が分からず、情緒支援に戸惑いや困難を抱いているのではないかと考える。そのため実践と認識に差があったと考える。家族看護実践において多忙が課題とされ、時間的制限が家族看護実践へ影響している可能性はあるが、同様の環境下でも、家族ニードを満たす看護実践ができている看護師は約半数で、全員が情緒支援を実践しており、忙しさが家族との関わりに必ずしも影響するとはいえない。また、看護師経験年数が高い方が、複数の家族ニードを満たす看護実践をしている。これまでの自己の看護経験から、家族の様々なニードを察知し、初療時に家族を意識した看護実践をしているのではないかと考える。ニードを理解した家族看護実践が必要であり、必ずしも専属看護師の配置がニードを満たす看護実践に繋がるとは言い切れない。家族看護を学ぶ環境を提供し、実践の中で指導・教育する機会を設け、知識と経験の共有ができる体制を構築していく必要があると考える。