第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

家族看護

[O7] 一般演題7

[O7-15] 救急外来で積極的家族介入を行うための取り組み〜症例検討会がもたらした行動変容〜

○向井 和樹1、田畑 剛2、畑 良典2、植田 美幸2 (1. 介護医療院 細谷、2. 松戸市立総合医療センター)

キーワード:救急外来、家族看護、症例検討会

【目的】A病院の救急外来では1次から3次までの患者受け入れをしているが、救急外来看護師が介入すべき家族看護が積極的に行われていない現状があった。救急外来のカンファレンスでは、家族看護の必要性は理解しているが、実践できない背景には救命処置が優先される、家族に十分に関われる時間が取れない、介入方法がわからないといった問題があることがわかった。最良の家族看護のために症例検討に取り組み、積極的家族介入が行えることを目指した。その取り組み前後の行動変容から症例検討会の有用性を明らかにする。また、今後の課題も明らかとなったため報告する。
【方法】対象は救急外来看護師10名。救急外来やドクターカー出動時に介入した症例を基に、救急看護認定看護師を中心に症例検討会を実施。月1回の開催を目標とした。実際の症例を提示し、看護問題とその対応方法をディスカッションし、その後に実際の介入を提示。1年間の取り組み後に、記述式アンケートを行い、取り組み前後の行動変容について比較した。
【倫理的配慮】所属部署の管理者の許可を得て実施した。アンケートは自由意志であることを伝え、また、個人が特定できないよう無記名とした。
【結果】アンケート回収率は100%である。取り組み前に家族看護を実践していた看護師は2名(20%)で、どちらとも言えない・していないと答えた看護師は8名(80%)であった。「声かけの方法がわからない」「どう接して良いかわからない」など具体的介入方法の把握不足や不安から実践に至らないことが理由に挙げられた。取り組み前のカンファレンスでも同様の意見があり、症例検討会を実施した。症例は救急外来看護師が実際に経験した中から「妊婦の心肺停止」「成人の心肺停止」「小児の心肺停止」「ターミナル期のショック状態」「心肺停止患者の家族が小学生」が挙げられた。症例検討後に毎回、救急看護認定看護師による家族の心理状態、タッチングなどの技法、危機理論など家族看護に関する講義を実施した。取り組み後では、家族看護を実践している看護師は8名(80%)、どちらでもない・いいえと答えた看護師は2名(20%)であった。家族看護を実践するようになった理由として「他の看護師から学ぶことが多くあり、対応を意識するようになった。」「必ず声をかけるように心がけ、言葉が見つからない時にはタッチングを行っている。」「声掛け方法やタッチングなどの技法を学んだ。」「家族介入の必要性や介入方法を教えてもらったから。」と回答があった。また取り組み後に家族への対応に変化はあるかの質問では、10人の救急外来看護師が「はい」と回答を得られ、行動変容もみられた。
【考察】症例検討会を行う取り組み前後では、救急外来において家族看護を実践する看護師は取り組み前に比べ、60%増加していることが明らかとなった。実際に経験した症例について他の看護師とディスカッションを行ったことは、多角的に自身の看護実践を捉える機会となった。また、他者が経験したことを情報共有し、自身に置き換えて考えることで経験を得ることが出来た。これらの経験が、必要性を理解しつつも行えていなかった家族介入に対しての意識の変容につながり、引いては行動変容につながったのではないかと考える。今後の課題は症例検討会を継続し、すべての救急外来看護師が最良の家族看護が提供できるよう実践していくことである。