第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-21] A病院における救急センターでの新人看護師院内留学制度の実態 ~指導の標準化を目指して~

○堀井 愛美1、豊田 麻衣1、山端 泰代1 (1. 富山市立富山市民病院)

Keywords:指導要綱、院内留学、臨床研修

目的
A病院は新人看護師に対し“自分の部署では経験できない臨床看護能力の向上を図る”を目的に、救急センターでの院内留学研修を設けている。指導内容はスタッフ個々の考えや技量に委ねられる現状があり、また明らかな指導指針は設けていない。そこで院内留学研修における指導の標準化を図るため、今後の指導教育内容の示唆を得ることを目的に実態を調査した。

方法
厚生労働省発行の“新人看護職員研修ガイドライン表4 技術的側面ː看護技術についての到達目標”より一部抜粋した独自の質問紙を作成し、令和1年7月~8月に10年以内に救急センターに所属した看護師に調査用紙を配布し、同意・回収を得た19名のデータを元に単純集計を行った。

倫理的配慮
自施設の看護研究倫理審査委員会の承認を得た。研究対象者には個人情報の保護、研究参加への自由意思、不利益は発生しないことを明記し、回収BOXに投函された時点で同意を得たこととした。この研究によるCOIはない。

結果
看護師の経験年数は5年以上が94.74%で、救急センター所属年数は4年以上が84.21%であった。≪救命救急処置技術≫、≪症状・生体機能管理技術≫の<パルスオキシメーターによる測定><バイタルサインの観察・解釈><心電図モニター・12誘導心電図の装着・管理>で指導実施数が高値であった。また自由記載より“一次救命処置や挿管介助の方法”、“救急カート内に準備されている器具の使い方”、“除細動器の使い方”の指導は、実際にトレーニング人形を用いたり、器材を作動し体験させる方法を取り入れているとの意見があった。指導前の<事前に1日の指導計画を立案>を行っていない看護師が78.95%、<学びたい内容の確認>を行っている看護師が94.73%であった。自由記載から “本人の病棟の特徴や経験、興味を聞きながら決めている”“知識量や把握状況によって指導方法を変えている”との回答があった。また“1日を振り返り、学べた内容を確認する”“その都度、理解度を確認”“率直に感想を聞いている”との意見があった。

考察
≪救命救急処置技術≫、≪症状・生体機能管理技術≫の項目は、救急患者の異常徴候を早期発見するために重要であり、重症度を見極めるために必ず実施していることから高値になったと考える。またシミュレーション研修を取り入れており、救命処置技術を要する実症例が少ない中で、新人看護師が急変対応の技術を習得できるよう工夫されている。これらは指導看護師の多くが臨床指導者レベルであり、目的の臨床看護能力の向上を理解し指導していると考える。指導者は個々に合わせた計画を立て、学習スタイルを工夫し、新人看護師が主体性をもって参加できるように学びを支援していると考える。また、指導後は内容の理解や捉え方を確認し、フィードバックしている。A病院では看護師経験年数6年以上の者を臨床指導者としているが、実際には看護師経験年数、救急センター所属経験年数が浅い看護師も指導を担当する現状がある。研修受け入れ部署として、経験年数や各々の主観に左右されない一貫した指導を提供できるよう構築していく必要がある。

結論
1救急センターにおいて実施すべき技術内容は満たされており、院内留学研修の目的は達成されていた。
2急変時の対応力や病態をアセスメントする力を高める技術に重点をおいている。
3指導の標準化を図るため、指導要綱を作成する必要がある。