[O9-20] 一般病棟におけるI C U予定外入室患者に対する急変前予兆察知の現状と課題
Keywords:一般病棟、ICU予定外入室、急変前予兆、急変察知、MEWS
【背景と目的】院内で心肺停止に至った患者の70%は心肺停止前の8時間以内に呼吸器症状の悪化を呈するなど、事前に何らかの予兆を示す。急変予兆を察知し、早期の専門チームによる介入を可能とするRapid Response System (以下RRS)は、急変や重篤化を防ぐ可能性が示唆されている。そこで、RRS非導入施設の一般病棟で行われている急変前予兆の察知の現状を把握し、課題抽出を目的として本調査を実施した。
【方法】2018年4月1日から2019年3月31日の期間に、ICUに予定外入室した成人患者を対象とし、心停止患者、一般病棟以外から入室した患者は除外した。患者の基本情報、急変察知前・察知時に看護師が捉えたバイタルサインを診療録から後方視的に抽出した。RRSの起動基準の一つである、修正早期警戒スコア(Modified early warning score:MEWS)の全項目のバイタルサインの記載があった患者を対象に、察知前・察知時のMEWSを算出した。さらに、察知時のMEWSの合計点をWarning Zone(以下、WZ)である7点を基準にWZ群と非WZ群に分類し、2群間で察知前に測定されたバイタルサインごとにMEWSとの関連を統計分析した。統計分析はSPSS Statics ver.21を用い、Mann-Whitney-U検定(有意確率p<0.05)を行った。尚、連続変数は、中央値(IQR)の形式で表記した。
【倫理的配慮】当院の倫理審査の承認を得た。
【結果】ICU予定外入室患者のうち、除外基準に該当した患者を除いた62名を対象とした。対象者の概要は、年齢70(63-78)歳、男性が48.5%、APACHEⅡは20(15-42)点であった。診療録へのバイタルサインの記載率(察知前、察知時)は、心拍数(100%、93.1%)、収縮期血圧(98.3%、98.3%)、意識レベル(98.3%、98.3%)、体温(96.5%、74.1%)、呼吸数(18.9%、36.2%)であった。察知時にMEWS全項目の記載があった患者は、17名(WZ群7名、非WZ群10名)で、MEWS合計は5(4-9)点であった。察知前の心拍数のMEWSにおいてWZ群;1(1-2)vs非WZ群;0(0-0.75)、p=0.043、r=0.54で有意差を認めた。しかし、WZ群の患者は、察知前から心拍数に異常を来していたが、診療録を後方視的に観察した限り、異常な数値への対応は行われていなかった。
【考察】診療録の記載率について、心拍数、収縮期血圧、体温は、持続モニタリングや医療機器により測定が可能である。しかし呼吸数は、一定時間患者を観察し、看護師が自らの目や耳で測定する必要があり、測定に手間がかかることから定量的な観察が行われず、記載率の低下につながったと考える。しかし、本調査は診療録を後方視的に観察したものであり、呼吸数の異常として捉えられていないものの、患者の様子の変化を定性的に捉えていることや、記録の記載漏れであった可能性も否定できない。計測されたバイタルサインと急変対応については、急変察知前から心拍数に有意な異常を来していたが、具体的な対応に至っていない。観察が対応に結びつかなかった原因として、慢性的に異常を来していたことやアセスメントが不足していたことが考えられた。
【結論】呼吸数の記載率が極めて低く、観察したバイタルサインのアセスメントも十分とは言えない現状があった。呼吸数の観察を含めたバイタルサインの測定、アセスメント力の向上により、急変前予兆を早期に察知し、迅速な対応に繋げることが課題である。
【方法】2018年4月1日から2019年3月31日の期間に、ICUに予定外入室した成人患者を対象とし、心停止患者、一般病棟以外から入室した患者は除外した。患者の基本情報、急変察知前・察知時に看護師が捉えたバイタルサインを診療録から後方視的に抽出した。RRSの起動基準の一つである、修正早期警戒スコア(Modified early warning score:MEWS)の全項目のバイタルサインの記載があった患者を対象に、察知前・察知時のMEWSを算出した。さらに、察知時のMEWSの合計点をWarning Zone(以下、WZ)である7点を基準にWZ群と非WZ群に分類し、2群間で察知前に測定されたバイタルサインごとにMEWSとの関連を統計分析した。統計分析はSPSS Statics ver.21を用い、Mann-Whitney-U検定(有意確率p<0.05)を行った。尚、連続変数は、中央値(IQR)の形式で表記した。
【倫理的配慮】当院の倫理審査の承認を得た。
【結果】ICU予定外入室患者のうち、除外基準に該当した患者を除いた62名を対象とした。対象者の概要は、年齢70(63-78)歳、男性が48.5%、APACHEⅡは20(15-42)点であった。診療録へのバイタルサインの記載率(察知前、察知時)は、心拍数(100%、93.1%)、収縮期血圧(98.3%、98.3%)、意識レベル(98.3%、98.3%)、体温(96.5%、74.1%)、呼吸数(18.9%、36.2%)であった。察知時にMEWS全項目の記載があった患者は、17名(WZ群7名、非WZ群10名)で、MEWS合計は5(4-9)点であった。察知前の心拍数のMEWSにおいてWZ群;1(1-2)vs非WZ群;0(0-0.75)、p=0.043、r=0.54で有意差を認めた。しかし、WZ群の患者は、察知前から心拍数に異常を来していたが、診療録を後方視的に観察した限り、異常な数値への対応は行われていなかった。
【考察】診療録の記載率について、心拍数、収縮期血圧、体温は、持続モニタリングや医療機器により測定が可能である。しかし呼吸数は、一定時間患者を観察し、看護師が自らの目や耳で測定する必要があり、測定に手間がかかることから定量的な観察が行われず、記載率の低下につながったと考える。しかし、本調査は診療録を後方視的に観察したものであり、呼吸数の異常として捉えられていないものの、患者の様子の変化を定性的に捉えていることや、記録の記載漏れであった可能性も否定できない。計測されたバイタルサインと急変対応については、急変察知前から心拍数に有意な異常を来していたが、具体的な対応に至っていない。観察が対応に結びつかなかった原因として、慢性的に異常を来していたことやアセスメントが不足していたことが考えられた。
【結論】呼吸数の記載率が極めて低く、観察したバイタルサインのアセスメントも十分とは言えない現状があった。呼吸数の観察を含めたバイタルサインの測定、アセスメント力の向上により、急変前予兆を早期に察知し、迅速な対応に繋げることが課題である。