第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-19] 看護師向け臨床推論基礎コース(BPVS)の開発と変遷〜学習効率化を図る取り組み〜

○嘉陽 宗司1 (1. 医療法人おもと会 大浜第一病院)

Keywords:臨床推論

【背景】
 看護師による適切な病態把握は、患者急変の回避及び急性病態への迅速な対処につながるため、必要な能力である。しかし、看護師が臨床推論を実施するためには疾患・病態に対する多くの知識を必要とするため、苦手意識を持っている看護師が多い。
 臨床推論に対する苦手意識解消のために、バイタルサインからの臨床推論基礎コース(以下BPVS)を開発・開催してきた。BPVSを効率的・効果的な学習を得られる教材として、コースのフィードバックを繰り返し、受講者からのアンケートを参考にプログラムの修正・変更を行なってきた結果、高い学習効果の維持とコース運営の効率化を実現できたので報告する。
【コースの概要】
 バイタルサインと身体所見を中心に患者の病態を鑑別する臨床推論の思考を学び、シミュレーションで体験するコース。カテコラミンリリース・SHOCK・頻呼吸の3つの病態を学ぶ構成で、レクチャー→シミュレーション→振り返りを1クールとし5症例の臨床推論をチームで体験する。
【方法】
 ・対象者:コースを受講した242名
 ・データ収集方法:コース終了後にアンケートを実施
  コースの満足度について「全く満足できない」〜「とても満足」まで6段階の評価と自由記載を求めた。
【倫理的配慮】
 院内倫理委員会の審査を受け承認を得た。
【結果】
 1期ではコース評価において、受講者全員が満足〜とても満足と答えた。「とても勉強になったが、自分の理解が追いつかず大変だった」との意見があった。
 2期では受講者全員が満足〜とても満足と答えた。ポストテスト平均9.7/10点であった。
 3期では受講者全員が満足〜とても満足と答えた。ポストテスト平均9.3/10点であった。「頻呼吸が難しかった」「敗血症に対するqSOFAの考え方が十分に理解できていない」といった意見が聞かれた。病態別の評価では頻呼吸にて「どちらかと言えば不満」の評価があった。
 4期:受講者全員が満足〜とても満足と答えた。プレテスト平均10/10点。ポストテスト9.7/10点であった。
【考察】
 BPVSコースを運用開始した1期では、学習内容を詰め込んでしまっていた。受講者の満足度は高かったが、コース終盤では受講生の疲労が見られた、アンケートの自由記載でも、知識の定着が不十分であることが推察された。
 2期では、研修の内容を見直し、受講者へ知識の獲得を目的に基礎クールだけを実施し、コースのスリム化を図り、また3期では1シミュレーションあたりの症例数を4つに変更し、更なる効率化を測った、受講後の満足度は高く、ポストテストでも高い平均点を獲得していた。しかし、自由記載にて敗血症におけるqSOFAや頻呼吸の病態への理解が十分でなかった。臨床における呼吸回数・パターンを観察することの重要性が定着していないことが背景にあると推測され、頻呼吸やパターン異常の病態に対する学習を強化した。
 4期ではSHOCKの病態を廃止し、頻呼吸の病態レクチャーを充実させ、プレテストを導入したことで、頻呼吸における満足度も高く、自由記載でのネガティブな意見は聞かれなかった。ポストテストでの平均点も高く、SHOCK病態を省略したことによる学習への影響はなかったと推察される。プレテスト導入による事前学習の強化と難易度の高い頻呼吸の病態に重点をおいたプログラムの修正は良い結果を導けた。
 受講者のニーズを細かく分析し、効率性も重要視することで、学習効果の維持と効率的なコース運営が実現できた。今後はコースを広め、多くの看護職者が受講・運営が行えるようにコース内容の標準化を目指し取り組んでいく。