第22回日本救急看護学会学術集会

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一般演題

看護教育

[O9] 一般演題9

[O9-26] 救急看護における研究と教育に関する検討-テキストの目次内容と研究論文の内容の比較から-

○新井 直子1、新井 龍2、作田 裕美3 (1. 帝京大学、2. 湘南鎌倉医療大学、3. 大阪市立大学)

Keywords:看護基礎教育、文献検討、テキスト

【目的】救急看護は、様々な要因によって突発的に救急処置が必要となる対象に実施される看護活動であり、救命救急センターなどの救急医療に特化した場で提供されるだけではなく、様々な場で突如必要となる。そのため、救急看護に関する知識・技術は看護基礎教育から現任教育まで一連の過程での教育が必要になる。教育をするためには根拠に基づいた知識の提供が重要となる。仮に教育と研究の乖離がある場合、その溝を埋めていくことが実践の科学である看護学には必要となる。以上のことから、教育ツールの主流であるテキストで取り上げられている項目と救急看護分野での研究内容を比較し、両者の乖離の有無・内容について検討する。

【方法】医学中央雑誌Web版を用い、キーワードを「救急看護」とし、2000年から2019年に絞り込み、原著論文に限定して検索を行った。該当した文献のうち抄録があった1078件を分析対象とした。抄録内容を読み込み、研究の概要及び目的を整理し、2000年から2019年までに発行された救急看護に関するテキストのうち、救急看護全般を取り扱っていると判断した15冊の目次から抽出した内容に沿って、量的内容分析を行った。テキストからの内容にない項目に該当する文献は、その内容を質的にカテゴリー化したうえで、文献数を確認した。なお、分析の際に、症例検討・ケアの実態調査・それ以外に分けて、整理した。

【倫理的配慮】本研究は公開されている情報を対象にしており個人情報は取り扱っていないが、研究の進行は研究職に従事している研究者と相談しながらヘルシンキ宣言に則り進めた。

【結果・考察】症例検討(88件)・ケアの実態調査(174件)以外の研究(816件)では、テキストの目次分類に相当する研究で最も多いものは「現任教育・教育評価」であり「家族看護」「看護管理」と続いた。これらは、年次推移としてもコンスタントに研究が蓄積されており、救急看護の場では常に重要視されている内容であると考える。そのうち、「現任教育・教育評価」は過去5年間の研究数が多くなっており、最近の臨床での関心の高さがうかがえる。
テキストの目次分類に相当しない研究内容は、研究数が多い順から「看護師のメンタルヘルス」「基礎教育」「施設/地域特性」「文献検討」「フライトナースの役割・実践」「海外の看護」「ドクターカー」「退院調整・退院支援」「多職種への教育」「放射線看護」の10項目であった。このうち、「基礎教育」「文献検討」「施設/地域特性」は、救急看護の知識・技術の習得に直接関連しない内容であるが、他の7項目については、実践の場での関心事となっている可能性があり、特に「フライトナースの役割・実践」「ドクターカー」「退院調整・退院支援」については、過去10年以内の研究数が中心であるため、新しく注目されてきた内容であると考える。症例検討・ケアの実態調査の研究では、「産科」「DV」「抑制」「健康教育」「高齢者虐待」「がん看護」「透析」が、テキストの目次分類に相当しない研究内容であった。いずれも研究数は少ないため、関心が高い内容であるとは結論付けることはできないが、「健康教育」「抑制」以外は過去5年以内の研究がほとんどであり、救急看護にとって今後新たな視点となる可能性が考えられる。テキスト内容と研究内容の検討から、救急看護における教育と研究に大きな乖離はないが、新たに着目する視点が出てきていると考える。
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