第22回日本救急看護学会学術集会

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シンポジウム

[SY1] シンポジウム1

『救急看護と二次的トラウマ』

座長 森田 孝子
(元横浜創英大学 看護学部 看護学学科 元学部長・教授/日本救急看護学会 監事)

   阿久津 功
(医療法人辰星会 枡記念病院 看護管理室 看護部長・災害救急医療部 副部長)

[SY1-01] 救急及び災害現場における救急看護実践に伴う二次的トラウマの現状

○川谷 陽子1 (1. 愛知医科大学病院 高度救命救急センター )

Keywords:二次的トラウマ

【はじめに】現代救急看護の危機の1つに災害や犯罪被害者の二次的トラウマ予防の必要性が広く認識されている。悲惨な災害や事件・事故が発生した場合、患者のみならず救援者である救急看護師も「心のケア」を必要とする。国際災害派遣医療チーム(以下A医療チーム)では、派遣時の隊員健康管理に健康管理フォーム(以下健康F)を用いている。今回COVID-19蔓延を受けて、B救命センターでは、A医療チームの健康Fを導入した。健康Fは、労働能力障害(Work Functioning Impariment Scale)を測定する項目にヒヤリハット、心の健康(以下K6)を追加し独自に作成したものであり、健康状態と職務遂行パフォーマンス(以下パフォーマンス)を見ることができる。健康Fの結果から、救急及び災害現場における救急看護実践に伴う二次的トラウマの現状と課題について考察したので報告する。

【倫理的配慮】A医療チーム事務局へ匿名性の保持、学会発表に使用する事の承認を得た。B救命センターで実施したCOVID-19に関する健康Fによる回答は、業務上実施し知りえた内容である。個人への直接介入の必要性が生じる場合があり、個人が特定される形で回答を得た。データは匿名化して扱うが、直接介入が必要とされた場合には個人に直接介入すること、健康Fの目的に同意した場合は回答に協力してほしいことを依頼した。健康Fは研究として実施したものではなかったため、B救命センター回答者へ、業務上実施し知りえた内容を学会発表に使用すること、匿名化したデータとして扱い、個人が特定されないよう配慮する事、回答した後も撤回書をもってデータ使用を中止できる事を説明し承認を得た。撤回書に該当するデータは、連結可能な対応表を用いて削除することを保証した。愛知医科大学病院看護部研究倫理審査会(簡2020-8)の承認を得た。

【方法】

1. 健康Fの調査

①A医療チームにおける3つの派遣において1日1回回答を得た。

②B救命センター看護職員に対して、2020年3月~6月の対応日・1ヶ月毎回答を得た。

2. 健康Fによる回答は、個人が特定される形で提出および送信される。データは連結可能な対応表を用いて匿名化した。

3. 分析方法

①A医療チームの健康Fにおける健康状態とパフォーマンスについて2週間の派遣ごとに比較した。(The14th APCDM報告)

②B救命センター健康Fにおける健康状態とパフォーマンス、ヒヤリハット、K6について1ヶ月毎に比較した。

【結果】A医療チーム及びB救命センター共に、健康Fを活用することにより個々の健康状態の変化を把握でき、また隊や部署全体のパフォーマンスの傾向を把握することができた。A医療チームでは、健康状態の症状数が多いほどパフォーマンス障害が発生していた。又、日々の健康状態の変化は、隊のイベントとの関連性が認められた。B救命センターでは、半数以上が倦怠感や疲労感を自覚していた。COVID-19に対応しているスタッフは対応していないスタッフに比べ、パフォーマンス評価で低下が見られた。又、K6と医療安全(ヒヤリハットを含む)との関連では、K6の得点が高いほど医療安全上の問題を自覚している傾向が明らかとなった。

【考察】

今回活用した健康Fは、日々の変化を把握でき、1ヶ月ごとに心の健康チェック(K6)と合わせて活用することで、心の健康障害を早期に発見し、専門家へ繋ぐ指標となる。また、健康Fは、救急や災害現場に従事する看護師の傾向を把握し、看護実践の質と安全を客観的に評価することができる。今後も救急及び災害現場の看護実践において、健康Fを活用し、収集データを可視化することおよび継続的な開発に取り組むことは、救急看護師の活動の質保証と健康管理に寄与するものと考える。