第23回日本救急看護学会学術集会

Presentation information

オンデマンド配信講演

第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護①

[OD101] 1.救急外来看護①

[OD101-04] 救急外来受診後に再受診し入院の転帰をとった患者の再受診防止のための介入方法

○佐野 貴実子1、近藤 来未1、赤川 友貴1 (1. 徳島赤十字病院)

Keywords:救急外来、再受診、帰宅前アセスメント

【はじめに】A病院は全次型救急医療体制をとり,救急患者受け入れを行っている.厚生労働省調査で「救急医療機関で診察の結果8割程度が帰宅,2割程度が入院」との結果がある.A病院2019年度の救急外来受診者20,660名の うち,帰宅転帰の患者は14,824名(約71%)存在した.救急外来からの帰宅患者は,帰宅後ADL低下・30日 以内の死亡・救急外来再受診のリスクが高く,3日以内の再受診のうち,37%は予防可能であったとも言われ ている.A病院救急外来では,帰宅判断は医師のみで行われている場合が多く,実際に再受診・入院転帰の患 者に接し,初回受診時の対応について悩む事もある.また,看護師による再受診を減らすための支援方法は開発されていない.そこで再受診防止のための介入方法名を明らかにする必要があると考えた.  

【研究目的】救急外来受診後に再受診・入院転帰の患者に必要であった介入方法を明らかにする.  

【方法】A病院救急外来受診から帰宅後72時間内に再受診・入院転帰の成人患者をランダム抽出し母数を100件とし た.電子カルテより後ろ向きに以下の情報を調査・分析した.対象患者の処遇を3パターン(初診時診断が 『決定』・『推定』・『不明』)に分類,再受診理由と必要であった介入方法をカルテ記載内容より質的に コード化,カテゴリー分析を行った.また,患者特性をアンダーソンのサービス利用行動モデルを基に素因・利用促進因子・ニーズ要因を調査,重症群(ICU及び救命センター入院・死亡)と一般群(一般病棟入 院)に分類,Excelによる集計を行った.

【倫理的配慮】本研究はA病院の倫理審査委員会の承認を得て行った.本研究に必要な患者の電子カルテ情報のみ 使用,情報漏洩の無い様にデータ管理に配慮した.

【結果】患者特性では一般群は70名,重症群は30名であった.一般群の平均年齢65±18歳に対し,重症群は75± 13歳となり,高齢者は重症化しやすい側面がある.また,初回受診時に症状消失がなく帰宅した患者は一般群 で91%,重症群で86%であった.初回受診時と再受診時で症候の関連があったのは一般群88%,重症群82%であり,高比率で同症候での再受診・入院の転帰をとっている.症状残存は将来的に入院の転帰を辿るサインと言える.その中でも両群ともに消化器系・神経系症候の再受診が多かった.質的分類の結果,全患者処遇において介入カテゴリーに《帰宅前アセスメント》,理由コードで<初回受診時より症状改善せず>が抽出された.また,再受診理由コード総数100件中53件は看護師の帰宅前アセスメント実施で再受診防止可能であったと考えられる.前述の患者特性と照らし合わせてみると消化器系・神経系症候で,帰宅前アセスメントが必要である件数が最も多かった.  

【考察】再受診防止のため,来院時・診察時・患者処遇決定後に介入が必要である.主要キーパーソンを見極め,理解度・生活背景・服薬指導・医療アクセス等を含めた帰宅前の症候別アセスメントが必要である.  

【結論】1.全患者処遇で帰宅前アセスメントは必要であり,実施により再受診防止可能と思われる件数は100件中 53件であった.2.高齢で症状が残存している患者には入院希望の確認が必要である.3.来院時から患者処遇決定まで,症候から重篤な疾患を推量し,主要キーパーソンを含めた理解度・生活背景・服薬指導・医療アクセス等を含めた全人的な症候別アセスメントが必要である.今回の研究では消化器系・神経系症候でのアセスメントが必要とされた.