第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護①

[OD101] 1.救急外来看護①

[OD101-05] 救急外来におけるせん妄予測スケールの効果

○枡谷 晴香1、竹之内 絵美1、幸坂 まなみ1、峯 ひとみ1、村上 奈美1、桜井 政純1 (1. 札幌徳洲会病院 救急センター)

Keywords:せん妄、せん妄予測スケール、E-PRE-DELIR、救急

【はじめに】近年、高齢化を背景として救急需要が増大し、救急出動件数は年々増加している。A病院でも平成30年度高齢者救急搬送件数は全体の49.4%を占めていた。A病院では多岐にわたる科が混在し、患者の対応に追われ、せん妄症状が出現した高齢者への対応に悩む場面がある。救急の場でせん妄を予測することが出来れば、迅速な治療や看護介入を行い、入院後の継続看護にも繋げられるのではないかと考えた。先行研究より救急外来におけるせん妄を予測するスケールはないが、ICU入床時に評価を行うE-PRE-DELIRICというせん妄予測スケールはある。これを救急外来で使用し効果が明確になるとせん妄の予測が可能になるのではないかと考え研究を行った。
【目的】E-PRE-DELIRICを使用しせん妄の予測の効果を検証した。
【方法】研究期間:2020年4月~2020年11月末日まで 
救急搬送された65歳以上の患者を無作為に抽出し、E-PRE-DELIRICを使用しせん妄発症リスクを予測した。救急看護師が各病棟へ訪室し、CAM-ICUの評価、1日2回を3日間実施しせん妄発症の有無を明らかにした。 
【倫理的配慮】倫理審査委員会の承認を得て、個人が特定されないよう実施した。
【結果】症例数300症例のうち、有効症例数165症例 せん妄発症64症例で発症率38.7%であった。年齢正規分布図は平均値83.0歳、標準偏差値8.98で左右対称の山グラフとなった。SPSSを用いてROC曲線を算出しAUC面積0.665であった。カットオフ値10%では感度100、特異度98、20%では感度84、特異度75.2、35%では感度60.9、特異度37であり、感度とカットオフ値10%、20%の特異度は先行研究を上回った。
【考察】救急搬送され病棟へ入院した3人に1人はせん妄を発症している現状が明らかとなった。カナダのICUで行われた先行研究ではSPSSを用いてROC曲線を描きE-PRE-DELIRICの鑑別能力を評価し、AUC面積は0.76であった。今回の研究では0.665であり先行研究よりは能力が劣るが、類似した研究結果になったと言える。E-PRE-DELIRICのリスク分類に合わせカットオフ値を算出しても、感度・特異度ともに高く、病態識別値は高いと判断することが出来る。結果としてE-PRE-DELIRICは救急外来で使用でき、せん妄の予測ができる可能性がある。これらをもとに、救急外来でせん妄のリスク度を算出することでせん妄への予防的介入と早期介入ができ、病棟での継続看護につながると考える。
【結論】今回の研究結果より、救急外来における限られた情報でもE-PRE-DELIRICを使用しせん妄発症リスク度を評価することができる可能性がある。病棟に情報提供することでせん妄が発症する可能性があることの意識づけとなり、せん妄の早期介入や病棟の継続看護へ繋げることができる。また、患者にとって安全な医療を提供することにもなる。今回、無効症例が多くあり、研究結果の見直しと研究方法を改良し、統一した評価で研究を進めていくことが課題である。
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