第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他①(地域連携)

[OD1101] 11.その他①(地域連携)

[OD1101-01] CAM-ICU・ICDSCのせん妄ツール導入による身体抑制時間の変化について

○高村 未那子1 (1. 東京都立多摩総合医療センター HCU病棟)

キーワード:CAM-ICU,ICDSC,せん妄,身体抑制

Ⅰ.研究目的
A病院におけるCAM-ICU・ICDSC導入前後で、身体抑制時間が減少するか明らかにする。

Ⅱ.研究方法
1.研究デザイン:前後比較研究                        
2.研究期間:非介入群2018年6月~11月   介入群2019年6月~11月
3.研究対象:救命救急科の患者               
非介入群:CAM-ICU・ICDSC導入前入院患者(以下A群とする)
介入群:CAM-ICU・ICDSC導入後入院患者(以下B群とする)  
4.調査方法:カルテよりA群・B群の以下データを収集した。
1)対象者の背景:年齢、性別、RASS、入室時間、人工呼吸器使用の有無、鎮静・麻薬使用の有無、脳器質性疾患の有無、呼吸不全の有無、循環不全の有無、感染症の有無
2)A群・B群の身体抑制時間
5.分析方法:A群・B群の患者背景の均等性を明かにするためにχ検定を実施した。
A群・B群の身体抑制時間を算出し、Mann-Whitney 検定を実施した。さらに、CAM-ICU・ICDSC導入後、それぞれのスケールで陽性あるいは、陰性と判断された二者間で入室時間に占める抑制時間割合の差をWilcoxonの符号付き順位検定で分析した。なお、検定における有意水準はP<0.05とした。

Ⅲ.倫理的配慮
 本研究は、院内の倫理審査会にて審議したのち、規定に従い研究を施行した。研究対象者は連結可能匿名化し、個人が特定できないようにした。

Ⅳ.結果
1.患者の背景
本研究で対象となった患者は、A群24名、B群38名の計62名であった。平均年齢はA群61.67歳、B群63.68歳と患者の年齢に有意差はなかった。抑制合計時間に関して、A群118.7時間、B群52.6時間と有意差がみられた。そこで入室時間に占める身体抑制時間の割合を算出し、A群・B群の比較を行った。
2.CAM-ICU・ICDSC導入前後の身体抑制時間の割合の差異
CAM-ICU・ICDSC導入前後で、身体抑制時間の割合を比較した。その結果、時間割合の平均はA群52.13%、B群38.61%とCAM-ICU・ICDSCの導入後、抑制時間の割合は減少した。しかし、有意差は認められなかった。
3. CAM-ICU・ICDSC導入後の身体抑制時間の割合の差異
CAM-ICU・ICDSC導入後、測定対象となった患者38名中、陽性19名、陰性13名である。6名は評価の記載がないため除外した。CAM-ICU・ICDSCで陽性と判断された患者の身体抑制実施平均値は47.70%、陰性と評価された患者の身体抑制実施平均値は23.47%であった。陰性と評価された患者の平均抑制時間は減少しており、有意差が認められた。

Ⅴ.考察
今回、身体抑制時間が減少した理由として、CAM-ICU・ICDSCを導入したことにより客観的にせん妄の評価ができたため、身体抑制解除の判断へと繋がったと考えられる。その一方で、陰性と評価された患者に、身体抑制が実施されていた事例もあった。桑原らは「マンパワーが不足することで、複数の重症患者の管理から予防的に身体抑制を行っている」1)と述べている。本研究でも看護師の人数が減少する夜間帯に、身体抑制が実施される傾向にあった。
坂木らは、「チームでの情報共有を行い、チームの責任として協力し合える環境が重要である」2)と述べている。A病院においても身体抑制以外の安全管理が実施できるような環境づくりが必要である。

引用文献・参考文献
1) 桑原美香:ICU患者の身体抑制に影響する看護師の判断要因,日本クリティカルケア看護学会誌,Vol.11, P57~65,2015
2)坂木孝輔:クリティカルケア領域における身体抑制と看護の実際,看護技術,P63~70,2017