第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他②

[OD1102] 11.その他②

[OD1102-03] 新型コロナウイルス患者に対応する看護師が抱えるストレス~第一波と第二波の心理的変化~

○菅井 悠1、石川 茉弓1、夜部 かおり1、山田 侑弥1、中村 裕子1、立松 美和1 (1. 公益社団法人日本海員掖済会 名古屋掖済会病院)

Keywords:新型コロナウイルス、ストレス

【目的】
新型コロナウイルス感染症流行(第一波〜第二波)に伴い、看護師がどのようなことにストレスを感じたのか、またその変化と要因を明らかにする。
定義:第一波2020年2月~4月 第二波2020年7月~9月

【方法】
対象者:新型コロナウイルス感染症患者に対応する病棟看護師12名
調査期間:2020年11月〜2021年3月
データ収集方法:インタビューガイドを基に半構成的面接法を実施し、対象者の許可を得て録音した。
分析方法:面接内容を逐語録にし、コード化・カテゴリ化した。コード化した内容を類似性・関連性・相違点に基づいて検討し、サブカテゴリ、カテゴリに分類し分析した。

【倫理的配慮】
匿名性を確保すること、諾否によって不利益を被らないことを紙面で説明し同意を得た。A病院倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号:2020−041)

【結果】
研究対象者12名、看護師経験年数平均7.6年、病棟経験年数平均4.0年であった。面接時間は7分〜37分(平均19分)であった。半構成的面接の内容から逐語録を作成し、分析した結果、267コード、17サブカテゴリから、以下の3カテゴリが抽出された。《自分を取り巻く環境》のカテゴリは、〈マンパワー不足〉〈補償が明示されていない〉〈マニュアルの有無〉〈病棟稼働率の増減〉〈物品不足〉〈物品配置の度重なる変更〉〈風評被害〉〈PPE着脱の煩わしさ〉〈レッドゾーンでの動きづらさ〉〈院内での抗原PCR検査導入の遅れ〉の10サブカテゴリから、生成された。
《未知の感染症》のカテゴリは、〈知識不足〉〈情報不足〉〈治療方針が確立されていない〉の3サブカテゴリから、《看護師の思い》は、〈ケアが充分に行えないことへのジレンマ〉〈自分や周りの感染に対する不安〉〈理想と現実の乖離〉〈レッドゾーンで働く疎外感〉の4サブカテゴリから生成された。第一波と第二波で比較すると、《自分を取り巻く環境》では〈マンパワー不足〉は減少した。《未知の感染症》では、〈知識不足〉が減少した。《看護師の思い》では、〈ケアが充分に行えないことへのジレンマ〉が減少し、〈理想と現実の乖離〉が第二波で新たに抽出された。

【考察】
 第一波では、一般患者の受け入れも並行し、かつ未知の感染症であるため対応する看護師を最小限としていた。そのため一人の受け持ち看護師が抱える負担が大きく、ストレスの要因となっていた。第二波では一般患者の受け入れを停止し看護師を増員したことで、一人で受け持つことでのストレスは軽減したが、重症度の高い患者や病床数の増加により、相対的なマンパワー不足が発生しストレスは持続した。
 また、未知のウイルスに対する有効な治療法が確立されておらず、感染経路が明らかになっていない状況で、患者に関わることへのストレスが大きかった。しかし感染対策室による勉強会やPPE着脱訓練が実施され、第二波到来時にはウイルスに対して明らかになったことも多かった。さらに看護師も確実な感染予防策の実施により感染しないという自信がつきストレスが軽減したと考える。
 新たに、第二波では経験を重ね環境も整ってきた中で、治療・看護に取り組むが、期待する結果が得られないことや、新型コロナウイルスへの周囲の関心の低さから〈理想と現実の乖離〉が抽出されたと考える。
 今後もさらなる流行が予測されており、感染者数や重症度に合わせてフレキシブルな人員配置の検討や、変異し続けるウイルスに対し必要な知識を継続的に更新していくことが必要である。また、理想と現実の乖離を感じた看護師に対し思いを共有する場を設けストレスの軽減に繋げていきたい。