第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他③

[OD1103] 11.その他③

[OD1103-03] 脳死下臓器提供における看護師の役割ガイドラインの難易度からみた実行可能性

○山本 小奈実1、山勢 博彰1、田戸 朝美1、須田 果穂1、立野 淳子2 (1. 山口大学、2. 小倉記念病院)

Keywords:脳死下臓器提供、看護実践の難易度、ガイドライン

<目的>
我々は、これまでに脳死下臓器提供における看護師の実践を調査し、脳死下臓器提供における看護師の役割に関するガイドライン(以下ガイドライン)を策定した。本研究の目的は、ガイドラインに示した看護師の役割が、難易度の視点から実行可能であるかを検証することである。
<研究方法>
研究デザイン:場面想定法による意識調査研究。調査期間:2021年2月~3月。
対象:日本臓器移植ネットワークに脳死下臓器提供施設として登録している393施設で脳死下臓器提供に関わる看護師。
調査方法:模擬事例を用いた場面想定法として、ガイドラインに示す役割の看護場面の動画を作成した。WEB上でその動画を対象者が視聴した後、WEBアンケートに回答してもらった。
調査内容:臨床経験年数、脳死下臓器提供の看護経験などの基本情報と、ガイドラインに示す看護師の役割に関する難易度とした。役割の難易度は、ガイドラインに示す9カテゴリーである【脳死の告知】、【選択肢提示】、【代理意思決定】、【法的脳死判定】、【臓器保護】、【看取り】、【基本的対応】、【悲嘆ケア】、【尊厳の遵守】毎に設定した。回答は、「困難である:5点」~「容易である:1点」までの5段階で、困難と評価されるのは3点以上である。
分析方法:データは、項目毎に単純集計し、各カテゴリーの平均得点を比較した(Friedman検定)。
<倫理的配慮>
研究者が所属する施設の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。無記名調査、動画及びWEBアンケートサイトはアクセス制限のあるサーバとし、個人の特定と情報漏洩が無いようにした。
<結果>
241名から回答を得た。対象者の臨床経験年数は、20年以上が106名(44%)で最も多かった。脳死下臓器提供に関わったことがある者は164名(68%)であった。看護師の役割における難易度は、平均得点の高い順に【臓器保護】2.91±0.92点(平均±SD)、【脳死の告知】2.77±0.76点、【悲嘆ケア】2.76±0.76点、【選択肢提示】2.71±0.77点、【基本的対応】2.70±0.72点、【代理意思決定】2.63±0.72点、【尊厳の遵守】2.50±0.67点、【法的脳死判定】2.43±0.72点、【看取り】2.40±0.79点であった。【臓器保護】は、難易度が最も高かった(p<0.05)。【法的脳死判定】と【看取り】は、難易度が低かった(p<0.05)。
<考察>
【臓器保護】の難易度が高かったのは、日頃実践している重症患者管理に加え、主治医や移植医と連携しドナー管理をすること、摘出チームの診察の介助を行うことなど、日常的な看護実践では無い脳死下臓器提供に特有な役割であったためと思われる。【法的脳死判定】の難易度が低かったのは、看護師が直接実践するというよりは、医師の介助者としての役割であるためと考える。【看取り】の難易度が低かったのは、臓器提供に関係なく看護師が日頃から実践しているケアであるためと考える。今回の調査から、全ての項目の平均得点は3点以下であり、困難と評価されないレベルであることから、ガイドラインに示した役割は臨床で実践可能なものと考えられた。