[OD303-01] 救急車トリアージ導入後の現状と課題
Keywords:救急車トリアージ
<はじめに> A病院救急外来(以下A病院)は1次から3次の全救急患者を受け入れている。救急車搬入台数は年々増加傾向にあり、2020年度の救急車搬送患者数は11,532名である。超高齢社会を迎え、今後も救急車搬入の増加が予測される。このため増え続ける救急搬送患者を応需するための対策が必要である。解決すべき問題として入院病棟との調整による救急外来滞在時間短縮などもあるが、救急外来における対策として2019年より救急車トリアージの導入を開始した。
<目的> A病院における救急車トリアージの実践を振り返り、課題を明らかにする。
<倫理的配慮> 得られたデータは本調査の目的以外では使用せず、個人が特定されないように匿名加工をおこない、データの漏洩がないように管理した。また、A病院看護研究倫理委員会の承認(承認番号:202110)を得た。
<方法> 調査対象は2019年4月から2021年4月において、A病院に救急搬送され、救急車トリアージを実施した77名。患者の救急車トリアージシート、院内トリアージシートから、トリアージ内容、トリアージ後の診療経過・転帰・診断名を調査した。救急車トリアージは2段階に分けたトリアージ後に院内トリアージを実施し、低緊急以下を診察待機としている。図参照。
<結果> 2段階目トリアージでABCDの異常があった症例は12例あり、全て救急治療室に入室してモニタリングと診察が開始されていた。診察までの待ち時間は平均27分。最短0分、最長1時間39分。待ち時間5分以内は15件、1時間以上は8件。転機は帰宅72件、入院5件でうち1件は救急病棟への入院であった。この症例は、救急車トリアージの2段階目トリアージで意識障害があり、院内トリアージへ進まずに直ちに診察開始としていた。院内トリアージの結果は準緊急であったのに、診察待ちとした症例が1事例あった。救急車トリアージの手順に沿っていれば直ぐに診察開始とする必要があった。また、救急車トリアージシートの必要事項が全て記載されていない、院内トリアージの記載がない症例もあった。救急車トリアージ記録が電子カルテ内に残っていないため、カルテ上からは救急車トリアージが実施されたことが分からない症例が多かった。
<考察> 2段階に分けて救急車トリアージを行うことで、繰り返しABCDの評価が可能であった。それにより緊急度が高い患者がロビーで待機することなく、安全に救急車トリアージを実施できていた。また、本来の手順であれば直ちに診察するべき患者をロビー待機していた症例は、手順を分かりやすくスタッフへ提示することで解決可能であると考える。来院から診察までの待ち時間が1時間以上の症例も多かった。可能であれば救急隊から電話の時点で診察待ち時間があることを伝えてもらい、承諾を得たうえ応需できると良い。A病院において、救急車トリアージの対象症例は毎月約150件であると予測されるため実施件数は少ないと言える。救急車トリアージは救急外来診療ベッドが満床時に実施されることが多い。また救急車トリアージを実施しているリーダー看護師にも偏りがある。満床時でなくてもリーダー看護師が救急車トリアージを実施できる取り組みが必要である。
<おわりに> 77件の救急搬送患者トリアージをおこなった。トリアージを2段階で実施することで、繰り返し評価することができ、アンダートリアージは1件のみだった。今後はより安全に救急車トリアージを実施するために、手順の再周知と統一された記録が課題である。さらに救急車トリアージ件数を増やすことで救急外来の空床ベッドを確保し、救急患者不応需に繋げていきたい。
<目的> A病院における救急車トリアージの実践を振り返り、課題を明らかにする。
<倫理的配慮> 得られたデータは本調査の目的以外では使用せず、個人が特定されないように匿名加工をおこない、データの漏洩がないように管理した。また、A病院看護研究倫理委員会の承認(承認番号:202110)を得た。
<方法> 調査対象は2019年4月から2021年4月において、A病院に救急搬送され、救急車トリアージを実施した77名。患者の救急車トリアージシート、院内トリアージシートから、トリアージ内容、トリアージ後の診療経過・転帰・診断名を調査した。救急車トリアージは2段階に分けたトリアージ後に院内トリアージを実施し、低緊急以下を診察待機としている。図参照。
<結果> 2段階目トリアージでABCDの異常があった症例は12例あり、全て救急治療室に入室してモニタリングと診察が開始されていた。診察までの待ち時間は平均27分。最短0分、最長1時間39分。待ち時間5分以内は15件、1時間以上は8件。転機は帰宅72件、入院5件でうち1件は救急病棟への入院であった。この症例は、救急車トリアージの2段階目トリアージで意識障害があり、院内トリアージへ進まずに直ちに診察開始としていた。院内トリアージの結果は準緊急であったのに、診察待ちとした症例が1事例あった。救急車トリアージの手順に沿っていれば直ぐに診察開始とする必要があった。また、救急車トリアージシートの必要事項が全て記載されていない、院内トリアージの記載がない症例もあった。救急車トリアージ記録が電子カルテ内に残っていないため、カルテ上からは救急車トリアージが実施されたことが分からない症例が多かった。
<考察> 2段階に分けて救急車トリアージを行うことで、繰り返しABCDの評価が可能であった。それにより緊急度が高い患者がロビーで待機することなく、安全に救急車トリアージを実施できていた。また、本来の手順であれば直ちに診察するべき患者をロビー待機していた症例は、手順を分かりやすくスタッフへ提示することで解決可能であると考える。来院から診察までの待ち時間が1時間以上の症例も多かった。可能であれば救急隊から電話の時点で診察待ち時間があることを伝えてもらい、承諾を得たうえ応需できると良い。A病院において、救急車トリアージの対象症例は毎月約150件であると予測されるため実施件数は少ないと言える。救急車トリアージは救急外来診療ベッドが満床時に実施されることが多い。また救急車トリアージを実施しているリーダー看護師にも偏りがある。満床時でなくてもリーダー看護師が救急車トリアージを実施できる取り組みが必要である。
<おわりに> 77件の救急搬送患者トリアージをおこなった。トリアージを2段階で実施することで、繰り返し評価することができ、アンダートリアージは1件のみだった。今後はより安全に救急車トリアージを実施するために、手順の再周知と統一された記録が課題である。さらに救急車トリアージ件数を増やすことで救急外来の空床ベッドを確保し、救急患者不応需に繋げていきたい。