[OD303-02] A病院におけるJTASへの移行と課題
Keywords:トリアージ、JTAS、オーバートリアージ、アンダートリアージ
【はじめに】
A病院では救急医療センターの全患者にトリアージを行っているが、2020年7月までA病院独自の4段階トリアージを行っていた。しかし4段階トリアージ判定には詳細な判定基準がない為評価が困難な状況が生じていた。そこでJTASを基に5段階評価を採用した事で緊急度判定における内容の変化と課題が明らかとなったため報告する。
【目的】
A病院のトリアージを4段階から5段階評価へ移行した事による判定結果の変化を分析し課題を見出す
【方法】
期間:2020年4月~2021年4月
対象:2020年4月~7月と2020年8月~11月のトリアージ判定
方法:
1. 4月~7月と8月~11月のオーバートリアージ(以下、OT)、アンダートリアージ(以下、UT)率、原因を抽出
2. 結果を比較し課題を考察
【倫理的配慮】
A病院看護部において倫理審査の承認を得て研究の趣旨を文章で提示し同意を得た
【結果】
4月~7月の4段階トリアージにおいて、対象2072件、OT=7%、UT=7%であった。OTの原因としてCOVID-19関連(22%)、疼痛過大評価(16%)、病名によるもの(14%)、慢性症状の過大評価(7%)、創傷過大評価(7%)、その他であり、UTの原因は疼痛評小評価(37%)、創傷過小評価(30%)、バイタルサイン異常値の過小評価(9%)等であった。
8月~11月の5段階トリアージでは、対象2393件、OT=9%、UT=7%であった。OTの原因として疼痛過大評価(17%)、創傷過大評価(17%)、慢性症状の過大評価(14%)、COVID-19関連(11%)、病名によるもの(4%)、その他であり、UTの原因は疼痛過小評価(21%)、バイタルサイン異常値の過小評価(21%)、創傷過小評価(11%)等であった。
【考察】
4月~7月の適正判定は86%であったが8月~11月では84%であり2%の低下を認めた。4段階から5段階評価に変更する事で適正範囲が縮小される事から適正率が低下したと考えられる。
OTの最大変化項目はCOVID-19関連-11%である。A病院ではPCR検査目的の受診は全て予約制であり感染症スクリーニングの為にトリアージレベル引き上げの必要はない。COVID-19についての認識不足からトリアージレベルが引き上げられOTに繋がっていたが、JTAS導入時に5段階評価についての教育を行う事でOTが減少したのではないかと考える。同様に他院からの紹介等により事前に病名が判明している患者に対する項目が-10%であり、病名にとらわれずJTASの基準に則り症状やバイタルサインに重点を置き、病名による重症度より緊急度を判断した結果であると考えられる。
一方で創傷過大評価が10%、慢性症状の過大評価が7%増加している。これらは第1補足因子である疼痛スケールを基に判断されるべきであるが、疼痛とは主観的な感覚であり正確な評価が困難である。「軽度な外傷」項目においても打撲・捻挫・軽度な挫創、捻挫・骨折・挫創の判断は困難な場合がある。数値的評価尺度や身体所見から判断できる教育が必要である。
UTの最大変化項目は創傷過小評価-19%、疼痛過大評価-16%であり、OT増加の原因と比例していると考えられる。バイタルサイン異常値の過小評価は12%増加している。JTASではABCDEの判定には詳細な数値設定があり、それらを正しく認識する事でバイタルサイン異常値の過小評価は減少する事ができるのではないかと考える。
今後はOT、UT減少のためには患者の全体像を把握し、各自がJTASが指標としている各々の基準数値の意味を理解することが課題である。
A病院では救急医療センターの全患者にトリアージを行っているが、2020年7月までA病院独自の4段階トリアージを行っていた。しかし4段階トリアージ判定には詳細な判定基準がない為評価が困難な状況が生じていた。そこでJTASを基に5段階評価を採用した事で緊急度判定における内容の変化と課題が明らかとなったため報告する。
【目的】
A病院のトリアージを4段階から5段階評価へ移行した事による判定結果の変化を分析し課題を見出す
【方法】
期間:2020年4月~2021年4月
対象:2020年4月~7月と2020年8月~11月のトリアージ判定
方法:
1. 4月~7月と8月~11月のオーバートリアージ(以下、OT)、アンダートリアージ(以下、UT)率、原因を抽出
2. 結果を比較し課題を考察
【倫理的配慮】
A病院看護部において倫理審査の承認を得て研究の趣旨を文章で提示し同意を得た
【結果】
4月~7月の4段階トリアージにおいて、対象2072件、OT=7%、UT=7%であった。OTの原因としてCOVID-19関連(22%)、疼痛過大評価(16%)、病名によるもの(14%)、慢性症状の過大評価(7%)、創傷過大評価(7%)、その他であり、UTの原因は疼痛評小評価(37%)、創傷過小評価(30%)、バイタルサイン異常値の過小評価(9%)等であった。
8月~11月の5段階トリアージでは、対象2393件、OT=9%、UT=7%であった。OTの原因として疼痛過大評価(17%)、創傷過大評価(17%)、慢性症状の過大評価(14%)、COVID-19関連(11%)、病名によるもの(4%)、その他であり、UTの原因は疼痛過小評価(21%)、バイタルサイン異常値の過小評価(21%)、創傷過小評価(11%)等であった。
【考察】
4月~7月の適正判定は86%であったが8月~11月では84%であり2%の低下を認めた。4段階から5段階評価に変更する事で適正範囲が縮小される事から適正率が低下したと考えられる。
OTの最大変化項目はCOVID-19関連-11%である。A病院ではPCR検査目的の受診は全て予約制であり感染症スクリーニングの為にトリアージレベル引き上げの必要はない。COVID-19についての認識不足からトリアージレベルが引き上げられOTに繋がっていたが、JTAS導入時に5段階評価についての教育を行う事でOTが減少したのではないかと考える。同様に他院からの紹介等により事前に病名が判明している患者に対する項目が-10%であり、病名にとらわれずJTASの基準に則り症状やバイタルサインに重点を置き、病名による重症度より緊急度を判断した結果であると考えられる。
一方で創傷過大評価が10%、慢性症状の過大評価が7%増加している。これらは第1補足因子である疼痛スケールを基に判断されるべきであるが、疼痛とは主観的な感覚であり正確な評価が困難である。「軽度な外傷」項目においても打撲・捻挫・軽度な挫創、捻挫・骨折・挫創の判断は困難な場合がある。数値的評価尺度や身体所見から判断できる教育が必要である。
UTの最大変化項目は創傷過小評価-19%、疼痛過大評価-16%であり、OT増加の原因と比例していると考えられる。バイタルサイン異常値の過小評価は12%増加している。JTASではABCDEの判定には詳細な数値設定があり、それらを正しく認識する事でバイタルサイン異常値の過小評価は減少する事ができるのではないかと考える。
今後はOT、UT減少のためには患者の全体像を把握し、各自がJTASが指標としている各々の基準数値の意味を理解することが課題である。