第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護

[OD501] 5.重症患者看護①

[OD501-02] 重症患者のリハビリテーションに対する看護師の意識調査
〜日常生活援助をリハビリとして意識しているか~

○小畑 優作1、博多屋 静香1、北里 勇起1、石山 亜耶1 (1. 独立行政法人国立病院機構九州医療センター)

Keywords:重症患者、リハビリテーション、日常生活援助、PICS、ICU-AW

【目的】
近年、PICS(集中治療後症候群)・ICU-AW(ICU在室中に生じる急性のびまん性筋力低下)といった概念が提唱され、それらを予防する介入方法として、重症患者のリハビリテーション(以下リハビリ)が重要視されている。A病棟は救命救急センター・ICUであり、早期リハビリテーションチームにより、リハビリ介入を行っている。日本集中治療医学会は、早期リハビリテーション実施に際する看護師は、患者のニードに応じた日常生活動作も早期リハビリテーションの一部として支援する役割があると述べている。しかし、日常生活動作向上に向けたリハビリに関する看護師の意識調査を行った研究は少なく、看護師が日常生活援助とリハビリをどのように関連づけて考えているかは不明瞭である。そこで、日常生活動作向上に向けたリハビリに関する看護師の意識調査を行うことで実態を明らかにする。
【方法】
A病棟看護師43名に質問紙調査を実施した。ICU-AW の診断で用いられるMRC筋力スコアを参考に、日常生活動作を15項目抽出し、動作毎にリハビリに対する意識について質問紙調査を行った。
「リハビリと認識しているか」と「リハビリとしてセルフケアを促しているか」の設問に対して、4段階評価尺度で評価し、両群を比較するため、ウィルコクソンの順位和検定を行った。
さらに、リハビリに対する弊害を自由に回答してもらい、その結果を同一内容ごとに単純集計した。
【倫理的配慮】
調査の目的、方法、自由意思による参加、プライバシー保護に関して文書にて説明を行った。質問紙調査の提出をもって同意が得られたものとした。A病院倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
各日常生活動作において、「リハビリと認識しているか」の設問に対し、15項目中12項目で90%以上の看護師が「とても思う、少し思う」と回答した。しかし、「リハビリとしてセルフケアを促しているか」の設問では、15項目中6項目で90%以上の看護師が「いつも行う、時々行う」と回答した。また、項目別でウィルコクソンの順位和検定を用いて検定した結果、「浴衣の紐を結ぶ」(p<0.0001)と「スプーン・茶碗・箸を保持する」(p<0.0001)で有意に差がみられた。一方で、「ヒップアップする」(p=0.0134)は他の項目よりも有意差が低かった。
A病棟看護師が考えるリハビリを行う事に対しての弊害は、「患者の病状」が全回答中55.8%と最も多く、次いで「リハビリに対しての知識不足」が41.5%だった。
【考察】
 質問紙調査の結果、各日常生活動作において、「リハビリと認識しているか」の設問に対し15項目中12項目で90%以上の看護師が「とても思う、少し思う」と回答しており、日常生活動作をリハビリと認識できていたと考える。その背景には、リハビリチームの介入や多職種とのリハビリカンファレンスの実施等が影響していると考える。しかし、リハビリとして認識しているが、患者にセルフケアを促せていなかった弊害として、患者の病状を挙げている看護師が55.8%であった。患者の全身状態が不良であることや安静度の制限などがリハビリを促せなかった理由として考えられる。その中でも有意に差がみられた日常生活動作は主に手関節屈曲を使用する項目であった。ヒップアップ等の動作は、下肢・体幹を使うことでリハビリとしてイメージがつきやすいが、手先などの細かい動作はリハビリとしての重要性が低く捉えられてしまう傾向にあるのではないかと考える。
今後はリハビリチームと協働し、リハビリに関する知識や技術、手先を動かすような作業療法にも視点を向け、教育を行っていくことが課題である。
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