第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護

[OD501] 5.重症患者看護①

[OD501-03] 疼痛管理に難渋した重症熱傷患者のADL拡大に向けた関わり

○永野 貴子1、岡本 佳枝1、村上 香織1、佐野 実加1 (1. 近畿大学病院 救命救急センター)

Keywords:重症熱傷、疼痛管理、ADL拡大

【はじめに】
重症熱傷は治療や処置が長期にわたり、感染や瘢痕拘縮など様々な障害を残すことが多い。そのため、瘢痕拘縮や廃用による筋力低下やADL低下が問題となり、早期離床や瘢痕拘縮予防、ADL低下予防の関りが重要となる。
【目的】
疼痛管理に難渋した重症熱傷患者のADL拡大に向けた看護ケアを振り返り、検討する。
【研究方法】
事例研究
事例紹介:40歳代男性、廃油が入っている容器からでた火が引火し、両下肢・右上肢のⅢ度熱傷をおった。
分析方法:カルテから経時的な身体・精神的な苦痛の変化、リハビリ状況、看護援助内容を収集し、最終植皮術後から退院までの期間を3期に分け実践した看護を振り返る。
【倫理的配慮】
A病院看護研究委員会の倫理審査の承認を得た後、実施した。
【結果】
植皮術後(病日20~27日)、創部の浸出液多量、包帯交換は2日に1回、鎮痛剤投与下NRS9~10、安静時も身の置き所のない様子であった。拘縮・褥瘡予防のためポジショニングと体位変換を実施していたが、「痛いから何もしないでほしい」と拒否的な発言が多く、医療者間でカンファレンスを行い、患者の訴えや疼痛の程度、リハビリ状況を共有した。疼痛により離床が進まないことを課題とし、患者の訴えに合わせた疼痛管理を行った。病日30~35日、浸出液は多く臭気あり、疼痛増強に伴う恐怖心や不安、頻回な処置への疲弊感がみられた。自動運動はみられず、下肢に軽度拘縮出現。安静時NRS5,動作時NRS9、鎮痛薬の効果がきれると苦悶表情がみられた。「動いたら痛みがひどくなるから動きたくない」と訴え、リハビリも消極的であった。医療者間のカンファレンスは週1回行い、鎮痛薬の効果は一時的で、恐怖心が芽生え、離床が進まないことを課題とし、現行の対策に加え鎮痛剤の予防投与を行い、患者の意向を確認し、病状と必要な治療・ケアについて伝え対応した。また希望時の創部冷却、十分な休息確保も行った。病日36~40日、創部は乾燥し浸出液減少、掻痒感が出現。NRS3、処置に伴う疼痛や疲弊感は軽減し、表情も穏やかで鎮痛剤の追加も行わなくなった。恐怖心は和らぎ、リハビリも10分程度の座位保持を目標に自ら取り組み端坐位まで可能となった。「動くと痛みがでるのは怖いけど、座れるようになったのはうれしい」と離床が進んだことに喜びを感じる言動や笑顔が増えてきた。同時に「仕事に戻れるか心配」と社会復帰に対する発言も聞かれたため、カンファレンスで社会復帰への不安があることを共有し、患者とともにリハビリ目標を設定、目標達成の喜びを自ら感じ離床が進むように関わった。また疼痛は軽減傾向にあり、鎮痛剤の予防投与は中止し、今後の不安が表出できるよう環境を整え、思いを傾聴した。
【考察】
痛みの評価は、患者の自己申告が重要とされている。疼痛を主観・客観的に医療者間で評価・共有し疼痛管理を行ったことは患者の疼痛緩和につながったと考える。また、熱傷患者は疼痛を和らげるために四肢を屈曲内転する傾向にある。訪室毎に行ったポジショニングや下肢の関節可動域訓練は、筋緊張を和らげ可動域・筋力低下を最小限にすることができた。精神的苦痛は「患者の訴えを聞きストレスを最小限に抑えることが重要で、恐怖心や不安による疼痛は看護師が落ち着いた態度でケアにあたる必要がある。本事例では傾聴により患者の恐怖心に早期に気づくことができた。しかし、処置やケアを拒否する患者への対応に困難性を感じ、薬剤管理やポジショニングを優先してしまい精神的な苦痛緩和への関わりが十分でなかったことが今後の課題と考える。