第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護②

[OD502] 5.重症患者看護②

[OD502-03] ICUにおけるせん妄予防の有用性~第2報~

○元川 直哉1、濵田 悦子1、藤田 真侑子1 (1. 独立行政法人 労働者健康安全機構 中国労災病院)

Keywords:せん妄、せん妄予防ケア、ICU

【目的】
 近年、患者の高齢化が進み、A病院ICUでもせん妄発症のリスク因子の多い患者の入室が多い現状がある。その中には非挿管患者の入室も多く、身体抑制やICUの環境、治療上の制限により、せん妄状態を誘発し、ICU入室期間の延長や患者の安全を妨げている可能性がある。せん妄を予防することは重要であるが、ICUにおけるせん妄予防ケア(以下、予防ケアとする)の有用性についての研究は少ない。患者の安全と安楽を確保し、QOLの維持に繋がると考え研究に取り組んだ。しかし、対象患者数が少なく、統計的な結果が不十分であったため、研究期間を延長し予防ケアの有用性を検討したため、ここに報告する。
【方法】
期間:令和元年8月1日~令和2年6月15日
対象:A病院ICUに入室した65歳以上の非挿管および意識障害のない患者43名、比較対象としてせん妄予防ケア非介入群80名
方法: 1)対象者の患者データおよびせん妄の状況について情報収集
2)先行研究を基に「背景・準備因子」「身体・治療因子」「患者因子」「周辺因子」の4領域102項目と薬剤104種類のせん妄因子から、6項目31因子のせん妄発症のスクリーニング用紙及びせん妄予防ケアセットを作成
3)対象者の入室時にリスク因子のスクリーニングを実施
4)実施可能な予防ケアをセット内から選択し実施し、各勤務帯でICDSCを用いてせん妄を評価
【倫理的配慮】
A病院倫理委員会承認後、対象者に研究の旨について同意書を用いて説明を行った。また、収集したデータは本研究以外には使用しないこと、厳重に個人情報の管理を行うこと、一度同意しても撤回が出来ることを説明し同意を得た。
【結果】
 介入群は43名、非介入群は80名であった。介入群では、せん妄発症者は6名、ICUの平均入室期間は3.0日であった。各因子のうち、「肝機能障害の有無」と「腎機能障害の有無」の2項目で有意差を認めたが、各ケアと、せん妄発症の間に有意差はなかった。非介入群では、せん妄発症者は10名であり、各因子のうち、せん妄の既往とせん妄発症の間にχ2検定にて有意差を認め、されらに「年齢」と「入室期間」の2項目においてU検定で有意差を認めた。
【考察】
 ケア介入群において「肝機能障害」「腎機能障害」の項目で、せん妄発症において有意差を認めたことから、患者の重症度がせん妄発症に影響していることが示唆されたが、ICUにおけるせん妄予防ケアの有用性を明らかにすることはできなかった。しかし、ケア非介入群では「入室期間」「年齢」の項目で有意差を認めたことから、せん妄予防ケアが、入室期間の長期化した患者や高齢患者のせん妄予防に効果があった可能性があると考える。また、ICUのような非日常的な環境で、患者の個別性に合わせた環境整備は、その人らしく療養生活を送る上で重要な関りの一つであると考えられるため、継続していく必要がある。
 次にケア非介入群において、「入室期間」「年齢」の項目で有意差を認めており、高齢、入室期間の長期化が、せん妄発症に影響していることが明らかとなった。入室期間と重症度が常に比例しているとは言えないため、入室期間は独立している因子と考えることができる。
せん妄発症のハイリスク因子を明らかにすることができたため、入院時の状況や患者の持つ因子をスクリーニングすることでせん妄発症のハイリスク患者を選定し、せん妄発症の可能性が高い患者として対応することで、せん妄による危険行動の回避につなげることが可能と考えられる。