第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 7.看護教育

[OD701] 7.看護教育

[OD701-05] A病院に従事する看護師が行う呼吸の観察と記録の実態

○惣田 隆之亮1、川村 竜2、中武 弾2、佐土根 岳1、金浜 英介3 (1. 医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 看護部 集中治療室、2. 医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 看護部 救命救急センター、3. 医療法人渓仁会手稲渓仁会病院 看護部 心臓血管センター)

Keywords:呼吸の観察、看護記録、急変察知

【背景と目的】
 院内心停止を事前に察知し予防するためには,呼吸数の観察を日常的に行うことが重要である.しかし,ICUへの予定外入室患者の急変前予兆察知の現状と課題に関する先行研究において,呼吸数の記載率は異常察知前18.9%,異常察知後32.6%であり,呼吸数の観察および記録に課題があることが示唆された.そこで,A病院に所属する看護師の呼吸数の観察と記録に関する実態を明らかにすることを目的とし本研究を行った.
【方法】
 対象は,A病院において2021年3月に成人患者を対象とした病棟に配属されている正看護師とした.調査期間は2021年5月として,呼吸数の観察に関する質問紙調査を行なった.調査内容は,定時および急変時における呼吸数の測定の有無,呼吸数の観察方法,呼吸数の電子カルテへの記載,呼吸様式の観察の有無,観察した呼吸数や呼吸様式の情報共有の有無とした.また,呼吸数の測定の有無についての回答を呼吸数測定群と呼吸数非測定群の2群に分類し,呼吸様式の観察の有無を比較した.分析方法はカイ二乗検定を行った.本研究はA病院倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
 質問紙の回収率は60.7%であり,310の対象者から回答が得られた.看護師経験年数は、5(3−10)年,所属部署の割合は,内科系一般病棟56名(18%),外科系一般病棟176名(57%),ユニット系病棟78名(25%)であった.呼吸数の測定は,定時の観察では「毎回している・たいていしている」142名(46%)対「あまりしていない・していない」167名(54%)であったが,急変時の観察では,272名(88%)対35名(11%)であった(p<0.01).呼吸数を観察した際に電子カルテへ記載するかでは,定時では「毎回している・たいていしている」282名(91%)対「あまりしていない・していない」27名(9%)であったが,急変時では293名(95%)対14名(4%)であった(p<0.01).呼吸様式の観察は,定時では「観察して記録に残している・観察しているが異常がある時のみ記録している」300名(97%)対「観察しているが記録に残していない・観察していない」9名(3%)であったが,急変時は,302名(98%)対4名(1%)であった(p<0.01).また,対象者を呼吸数測定群と非測定群に分類し、呼吸様式の観察の回答の分布を見たところ、定時の観察では,「観察している」と回答した者が,呼吸数測定群141名(100%)対呼吸数非測定群165名(98.8%)であった(p=0.502).急変時では,呼吸数測定群269名(100%)対呼吸数非測定群34名(97.1%)であった(p=0.115).観察結果の共有を「毎回している・たいていしている」と回答した人数は,呼吸数の測定156名(50%),呼吸様式190名(61%)であった.
【考察】
 呼吸数の測定および電子カルテへの記載は,定時と比較し急変時に上昇する傾向にある.また,呼吸数の測定を行っていない場合でも,呼吸様式の観察は行っていることから,状況に合わせて独自の判断で呼吸状態の観察方法を選択していることが示唆された.昨今,急変予兆の察知には早期警戒スコアなどの定量的なツールが使用されるようになっており,早期対応チーム(RRS)の導入と合わせて急変の予兆を察知することに一定の効果を得ていることが報告されている.今後は,呼吸状態の共有を徹底することで定量的な評価を可能にし,急変予兆の早期察知を強化していくことが重要である.さらに,臨床で活用されている定性的な呼吸の観察が急変察知に与える影響についても検討を進める必要がある.