第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 8.感染管理

[OD801] 8.感染管理

[OD801-03] COVID-19患者エアロゾル回避のための頭位被覆BOXの改良

○生田 正美1、濱田 幸一1 (1. 神奈川県立足柄上病院)

Keywords:COVID-19   、頭位被覆BOX、口鼻腔吸引

Ⅰ 目的
A病院は中等症のCOVID-19患者の入院加療を行うよう求められており、救急外来では発熱を伴った患者が数多く受診する。医療者は患者の口鼻腔吸引によってエアロゾルに曝露しやすい状況にある。感染リスク軽減のため、患者の頭位を被覆するBOXを、身近にある段ボール箱やラミネートパウチ、ビニール袋を使用し作成した。エアロゾルの飛散飛沫による感染リスクの軽減が図れたが、いくつかの問題点が明らかとなった。そこで今回、問題点を踏まえ改良版を作成した。
Ⅱ 倫理的配慮
A病院倫理審査会の承認を得て実施した。
Ⅲ 研究方法
頭位被覆BOXの改良は、大きさを縦33cm、横52cm、高さ45cmと変更した。BOXを頭位被覆した場合、患者の観察をBOXどの方向からも可能とするため、段ボールは支柱のみを残して各辺をカットし90ℓの透明ビニールで覆った。更に吸引操作を容易にするためビニール袋の辺にスリットを入れた。使用後は90ℓ透明ビニール袋を交換することで再利用を可能とした。支柱のみを残したことでBOXの軽量化も実現した。
Ⅳ 研究期間
2021年3月~5月
Ⅴ 結果・考察
2020年度作成した頭位被覆BOXでは、頭部の被覆が可能な程度の段ボール箱1つを用い、患者体側を開窓し、ビニール袋で二重カーテンとした 。また被覆した時、患者の顔前面に当たる部分を透明ラミネートパウチで覆い、患者を観察可能にした。使用した結果、エアロゾルによる飛沫の飛散を防止する効果があった。しかし患者の観察がBOX上部のみしかできない、手を挿入する場所が患者体側のビニールカーテン部のみであり吸引操作が難しい、患者の頭部を保持しにくい、などの意見が挙がった。そこで本研究では、更なる改善を目指し改良版を作成した。2021年4月から口鼻腔吸引が必要なCOVID-19感染疑いの患者10例に対し、改良した頭位被覆BOXを装着し口鼻腔吸引を実施した。BOXを使用し口鼻腔の吸引操作を実施することは、エアロゾルへの曝露を物理的に防ぐことが可能である。改良型BOXは、全面を透明ビニール袋で覆うことによって、患者の顔色、口唇色、表情の観察、吸引物の性状を容易かつ速やかに観察可能となった。従来型のBOXでは、吸引操作を行うためには、看護師二名が患者体側のビニールの二重カーテンから手を挿入し一人が患者の頭位を保持し、もう一人が吸引操作を実施する必要があった。しかし改良型BOXでは、ビニールにスリットを入れることによって、吸引を実施する看護師の手がどの方向からも容易に挿入可能になり、看護師一人で患者の観察を行いながら、片手で患者の頭部を保持し吸引操作も可能となった。さらに段ボールの支柱をビニール製のテープで覆うことによって、消毒・清拭を行うことが可能となり90ℓの透明ビニール袋を患者ごとに交換することによって、簡便に再利用することを可能とした。BOXを再利用することで新たに作成する業務の削減にもつながり利便性も向上した。BOXは、段ボールとビニール袋の身近な材料で作成できることも重要であり、大災害時などの時、物資の配給を待たずに作成し使用できる点では、Business Continuity Plan(BCP)の観点から観ても有効的であると考える。更に口鼻腔吸引操作にとどまらず、心肺蘇生などのエアロゾルが多く発生する場面での活用の可能性も示唆される。
Ⅵ 結語
COVID-19患者のエアロゾル回避のための頭位被覆BOXを改良することによって、口鼻腔吸引による生じたエアロゾルへの曝露を物理的に防ぐことができると同時に、操作性の向上、患者の観察を確実に行うことが可能となった。