第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 9.医療安全②

[OD902] 9.医療安全②

[OD902-01] 転倒・転落看護計画の評価内容と実践した対策の実態調査

○鈴木 規予子1、久保島 明枝1、稲田 希美1 (1. 埼玉医科大学総合医療センター)

Keywords:転倒・転落、看護計画、HCU

【目的】
A病院HCU病棟(以下HCU)は、A病院独自の転倒・転落アセスメントスコアシート(以下スコアシート)を用い、転倒・転落の危険度を判断している。運用方法は診療基本マニュアルで示され、評価時期・方法など手順に従い実践している。転倒・転落の危険度が高い患者に対し、看護計画書(以下計画書)で立案し実践・共有をしているが、2020年度までの5年間でHCUの転倒・転落の発生件数は年々増加した。計画書を立案しただけで実践が伴わず、転倒・転落が増加したのではないかと予測された。そのため本研究では、計画書で立案した対策が実践されているか、実態を明らかにすることを目的に調査した。

【方法】
期間:2018年1月1日~2020年7月31日
対象:調査期間中、HCUに入院・転入し、転倒・転落を発生した52症例
方法:スコアシート、計画書、転倒・転落発生時の要因分析シート(以下要因分析)の項目を症例ごとに集計し、計画書で立案した対策が実践されているか、診療録への記載の有無で調査した。
倫理的配慮:本研究はA病院、倫理委員会の承認を得た。

【結果】
「履物」「離床センサー」「メンタル受診」の対策は100%、「離床援助」の対策は75%で診療録への記載がなかった。「マーク装着」の対策は73%が診療録へ記載されていた。スコアシートでチェックがあった項目は、「記憶・記銘力障害や認知力の低下がある」26件、「今までに転倒・転落を起こしたことがある」20件であった。要因分析でチェックがあった項目は「時間帯」で日勤27件(52%)、準夜18件(35%)、深夜7件(13%)であった。「履物」で素足11件、靴下1件、スリッパ19件、靴14件、サンダル1件、記載なし6件であった。「場所」でベッドサイド29件、廊下3件、トイレ6件、浴室2件、車椅子11件、洗面所1件であった。診療録で記載が多かったのは「不明言動がある」24件、「危険行動がある」19件、「無断離床がある」10件であった。

【考察】
「危険行動あり」の評価が計画書では14件だったが診療録では19件と、正しく評価できていないとことが分かった。計画書で立案したが診療録には記載がなく実践されていない項目が82%で、計画立案したほとんどの項目で実践されていなかった。逆に計画書では立案せず診療録に記載し実践されていた症例があり、計画と実践が伴っていないことが明らかとなった。診療録に記載された「観察強化」とした対策の48%は、看護師の人数が少ない夜間帯で転倒・転落したことから、対策が不十分だったことが考えられる。「マーク装着」の対策は73%が診療録へ記載されていたが、これは日常業務の中に「マーク装着」の確認を毎日行っていることが、実践率を高めている要因だと考えられる。計画書の立案や評価は個人で行い、意識的に計画書を見ない限りそれを共有する機会がない。今後はせん妄や危険行動がある患者に、計画書で立案された対策を実践できるよう看護師の業務内容の環境を整え共有することで転倒・転落発生の予防につなげていけるのではないかと示唆された。
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