第6回日本在宅医療連合学会大会

大会長挨拶

第6回日本在宅医療連合学会大会開催にあたって



 

第6回日本在宅医療連合学会大会

大会長 荻野 美恵子

国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター 
副センター長・教授

国際医療福祉大学市川病院神経難病センター


 この度第6回日本在宅医療連合学会大会を、令和6年(2024年)7月20日(土)・21日(日)に幕張メッセにて開催することになりました。
 本学会は令和元年(2019年)に日本在宅医学会と日本在宅医療学会が合併し、今では会員数4,500名を超え、在宅分野で日本最大の学術団体になりました。本大会は節目の5年から新たな時代に入った時期での開催となります。おりしも日本は2040年問題を控え高齢化多死時代に向けて、在宅医療はますます重要な位置付けとなっております。しかし、人的資源にしても、経済的裏付けにしても明らかに需要に対して供給が少ない中で、この難関を乗り切らなければなりません。そのためには創意工夫とその共有、助け合いのネットワーク等、より密な交流が必要です。本大会はそのような状況において、役に立つものにしたいと思っております。
 大会のテーマは「在宅医療を紡ぐ」としました。ポスターでもイメージとしてお示ししましたが、組み紐は単にいろいろな糸を寄せ集めただけではなく、一本一本の糸の個性も生かしつつ意図をもって織りなすことで、美しく強靭な組み紐ができあがっていきます。医療においても、単に紹介するだけのコーディネイトではなく、様々な要素が統合(integration)されて初めて良い成果がえられると思います。特に生活を支える在宅医療では医療介護の多職種の関わりというだけでなく、様々な制度の利用や医療以外の分野との関わり等、その要素となるものは多岐にわたります。本大会はそれを体感するようなものにしたいと思っております。
 サブテーマとして以下の点を取り上げ、これらを意識した企画の構成にしようとしています。
“幸” Well being(生活の質・人生の質(QOL)の向上)、“働” Collaborative decision making (協働意思決定)、“含” Inclusion of diverse values (多様な価値観の包含)、“継” sustainability (持続可能性)、“繋” interdisciplinary team collaboration (多職種連携)、“楽” enjoy your life(快)
*これらのコンセプトに関しては文末をご覧ください。
 女性の大会長も初めてのことです。日本における女性・母親の立場の大変さは身をもって経験してきましたので、本大会では各企画に女性の起用をお願いすることにしました。女性だけでなくいろいろな意味で大変な思いをされている方々にも活躍いただきます。
 単なる座学だけでなく、参加型の企画も多数計画していますので、「見て、聞いて、体験して、学びを深め、リアルな出会いと思いを紡ぐ大会」としてネットワークも広げていただければと思っております。また、繰り返し確認したくなるような内容はオンデマンドで配信いたしますし、遠方からWEBでご参加の方にもハイブリッドで参加いただけるように進めております。
是非、幕張メッセでお会いしましょう!
 

2023年8月吉日


第6回大会の7つのコンセプト!

今大会は7つのコンセプトを中心に企画しました。どれも在宅医療になくてはならない要素です。
皆さんと作り上げていく大会にいたします。是非幕張メッセでお会いしましょう!
 
“紡” integration : 紡ぐ:統合
 在宅医療は、医療だけでなく生活を支えるあらゆる分野が関わって成り立っています。織りなすことで、美しく強靭になっていく組みひものように、単に多職種が集まっただけでなく、制度を寄せ集めただけでもなく、それらが統合して初めて患者さんやご家族の幸せにつながりますね。
 
“幸” Well being :QOL: 生活の質・人生の質
 在宅医療に限らず、私たちが目指すのは患者さんやご家族のQOLが少しでも向上することですね。それは少しでも幸せにいていただけるようにすること。何が幸せかはその方にしかわかりません。だから患者さんやご家族の想いをききます。意思が意志になるように。
 
“働” Collaborative decision making : 協働意思決定
 私たちは医療や介護の専門家、患者さんは患者さんの人生の専門家。難題に対峙したときその専門家同士が、お互いの考えを理解し、認めあいながら、ご本人の想いができるだけ叶うように、何が最善なのかを考えていくプロセス。すべての基礎は協働意思決定にあるのではないでしょうか。
 
“含” Inclusion of diverse values : 多様な価値観の包含
 協働意思決定の際に大事にすることはその方の価値観です。その方にとっての“価値”や、幸せは究極の個別性。様々な考え方を受け入れたうえで、何を目指すのかを考えましょう。多様性を認め合うこと、マイノリティーを受け入れること、弱い立場の人を守ること、どれも包含できる社会でなければなりません。在宅医療における女性の在り方も変化してほしい。
 
“継” sustainability : 持続可能性
 そして良い事は持続可能にしなければなりません。いくら良い事でもすぐに駄目になってしまうのではもったいないです。患者さんのケアも、事業所の経営も、いいことを続けるためには持続可能性が必要です。そして良い事を次の世代に繋げていかなければなりません。
 
“繋” interdisciplinary team collaboration : 多職種連携
 これらのことを成し遂げるためには、より多くの専門性、価値観をもった 人が、ただ繋がるだけでは なく、患者さんにとって何が良いのかという、同じ目標を共有することが大切ですよね。
 
“楽” enjoy your life : 快
 まあ、大変なこともいろいろあるけれど、苦労することが不幸ではない。 在宅医療に関わった人生を楽しみましょう。
 
切り拓け! 開拓者たれ! 社会をかえろ!
 


大会運営の新規取り組み


 第6回大会では、いくつか新しい取り組みを致しました。日本在宅医療連合学会は多職種により組織された学術団体として、在宅医療の標準化を図り、良質な在宅医療を提供するために様々な課題解決を図っていく必要があります。課題の一つには学術大会の質も含まれています。学術大会の質を向上させていくために、本大会では以下の通り試験的な取り組みを行いました。大会終了後には、全体を評価し、次の大会長に引き継いで参ります。 ご協力頂きました各学会委員会の先生方、大会プログラム委員、理事、評議員、会員の皆様に心より御礼申し上げます。

1.プログラム委員の導入・企画調整担当者の選出
 従来、学会の企画は各種委員会、WGから提案された企画および公募企画があったが、それらに加えて、偏りなく在宅医療全般の分野をカバーする大会となるよう、在宅医療の内容を過去の大会企画及び一般演題を参考にカテゴリー化し、それぞれのカテゴリーにプログラム委員(原則各2名)をおき、企画を練る方式とした。企画枠組みはシンポジウム90分、ワークショップ90分、教育講演60分とし、各カテゴリーからそれぞれ1企画ずつ提案してもらった。 委員会・WG企画とプログラム委員会企画の内容が重ならないように、委員会・WGから企画の調整を担当する委員を選出し、担当大会実行委員とともにプログラム委員と話し合いをする形で進めた。

2.演者座長の多様性とジェンダーバランスの工夫
 企画者が偏ると、特定の領域の企画が多くなったり、演者・座長が特定の人に集中する可能性もあるため、座長演者の登壇回数に上限を設けるとともに、プログラム委員等の企画者には、ダイバーシティに配慮した構成する目的で、座長や演者が男性のみ、特定の職種のみに偏らないように企画することを依頼した。

3.参加型への工夫
 参加者の学びを最大限にできるよう、参加型、体験型の企画を準備した。参加者目線の“テーマ”の導入と介護職向け企画の開催などである。以下の7つのサブテーマを設け、参加者が在宅医療の価値を意識しながら参加できるようにした。“紡” integration(紡ぐ:統合)、“幸” Well being(生活の質・人生の質(QOL)の向上)、“働” Collaborative decision making(協働意思決定)、“含” Inclusion of diverse values(多様な価値観の包含)、“継” sustainability(持続可能性)、“繋” interdisciplinary team collaboration(多職種連携)、“楽” enjoy your life :(快)。また、これまで参加の少なかった介護職が参加しやすいように、介護職向けのシンポジウムやワークショップを企画しプログラムに「介護職向け」と明示した。