第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

教育講演

10-1:地域包括システム

教育講演11:在宅医が知らない地域包括ケア:遺体管理人が伝える死後に必要な処置について

2024年7月20日(土) 18:00 〜 19:00 教育講演 (オンデマンド配信)

座長:新屋 洋平(OHS沖縄往診サポート)

18:00 〜 19:00

[EL11-1] 最期の地域包括ケア:エンゼルケアとグリーフケア

*嘉陽 果林1 (1. 株式会社おもかげ 代表取締役)

2011年、納棺会社に就職。納棺師として遺体に向き合う。その後、沖縄県民の死生観を軸に遺体管理について知識を深めたいと退職。2017年12月に遺体管理専門会社・株式会社おもかげを設立、代表取締役。経営方針は「故人を火葬日まで適切に管理すること。遺族への体験・経験させるグリーフケアを行う」、「死後の家族のケアはターミナルケアの延長である」。沖縄県警察署交通課からの事故遺体紹介あり。遺体の顔面による遺族のトラウマ防止。資格;遺体保全終了認定/京都グリーフケア協会認定上級グリーフサポーター/上級終活カウンセラー/海洋散骨アドバイザー業績;遺体処置数4700体、死因・状態に応じて処置内容を決定し、火葬日当日まで遺体を管理する。主な処置内容;腹水胸水抜き/るい痩対応/顔がん皮膚移植/医療機関での死・事故死・自死・社会死・自宅死亡・警察搬送・解剖遺体/
メディア;沖縄タイムス、琉球新報
セミナー;琉球大学病院•豊見城中央病院・友愛病院・アドベンチストメディカルセンター・オリブ山病院•中部徳洲会・南部徳洲会•中部協同病院•他介護施設・訪問看護事業所にてエンゼルケア、グリーフケアセミナー実施中
【目的】グリーフケアとは、大切な人と死別した人に対して、喪失感や悲嘆、その回復過程で不安定となった心や体を癒す寄り添うケアである。そのなかにエンゼルケアや葬送の儀礼における配慮が含まれていると考えられるが、実際は表面上のメイクや葬儀における演出に重きを置いただけのただの作業となっているケースが散見される。本発表では、7年間の遺体管理人として得た経験から、エンゼルケアとグリーフケアについて考えを述べる。【本文】遺体は、生体とは全く異なり恒常性が消失している事ため、外部環境や外力に対して非常に脆弱で影響を受けやすく不可逆的な変化を生じる。その方を取り巻く環境や死亡前の健康状態、医療内容等により遺体変化の内容や進行形態が全く異なる。例えば、在宅看取りとなったご遺体は一般的に痩せている。また、遺体の状態に限らず、社会環境や家族関係、死生観により遺族の死の受容は同じではない。在宅看取りという経過に満足していても、目が落ち窪み、頬がこけたまま葬儀に入った場合、家族はどう受け止めているのか?また、エンゼルケアに代表される「死後処置」は, 遺体の個別性に合わせた処置ではなく、画一的な処置が行われていることがある。処置内容は先輩から後輩へ伝承されている場合が多く、科学的な根拠がない場合に医療機関の管理から離れた後に想像しないような変化を示す場合がある。【結論】遺体従事者の立場から考えるエンゼルケアとグリーフケアとは、「遺体管理、細やかなお世話を通して死者の尊厳を保ち、遺族の悲嘆と喪失感に対応するケア」である。この認識のもとで、遺体となった患者や家族に対して、その個別性や場面に応じた適切な対応が行なわれるべきである。 患者が遺体となったとき、死を境に関わる職種が異なる。生前と死後の関係者が意見交換することで、それぞれが互いの役割を理解し、尊重しあい連携できるようになるものと思われる。遺体(患者)のため、遺族のためでもあり、ひいては社会のためにもなると考えている。
(写真等に関しては遺族に使用の許可を得たうえで、個人を特定できないように加工している。)

(COI:なし 発表者名:◎嘉陽 果林)