第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

一般演題(口演)

11-1:保険制度・診療報酬

一般演題(口演)7 保険制度・医療制度

2024年7月20日(土) 14:50 〜 15:30 第8会場 (会議室103)

座長:田城 孝雄(放送大学大学院)

14:50 〜 15:00

[O-1-27] 当院訪問診療における無料低額診療事業の取り組み

*細尾 真奈美1、上林 孝豊1、那須 徹也1、中川 裕美子1 (1. 京都民医連あすかい病院)

【目的】経済的に困窮した患者に対し医療費を減免する制度の一つに無料低額診療事業がある。当院訪問診療における当事業の実態を明らかにする。【方法】当院訪問診療で2022年4月1日から2023年3月31日までの1年間に当事業を利用した症例を対象に、電子カルテ記載内容を後方視的に調査した。なお本研究は患者のプライバシーと個人情報の保護に十分配慮し実施した。【結果】同期間に当事業を利用した症例は30例であった。平均年齢は83.9歳(68〜96歳)、女性が60%、男性が40%であった。主病名は癌20%、認知症17%、心疾患13%、精神疾患13%、神経疾患10%、その他27%であった。介護認定区分は要支援Ⅰが0%、Ⅱが10%、要介護Ⅰが20%、Ⅱが30%、Ⅲが17%、Ⅳが13%、Ⅴが10%であった。世帯人数は独居が半数以上であった。利用開始時点で就労していた患者は殆どおらず、職業歴は自営業が36%と最多であった。当事業を申請した時期は、当院訪問診療利用中が47%、当院入院中が20%、当院内科外来通院中が13%、当院関連診療所通院中が10%であった。減免割合は10割が殆どであった。当事業の利用期間は6ヶ月以上が83%、6ヶ月未満が10%で、生活保護へ移行した患者は7%であった。【考察】当事業を利用できる期間は医療機関ごとに定められ、健康保険加入または生活保護利用までの最大6ヶ月間としている施設が多い。当院では利用期間の上限を定めておらず、今回の対象例においては6ヶ月間を超えて継続した患者が大半を占めた。その理由としては高齢で要介護度が高く就労が難しいこと、生活保護の認定基準を満たせないこと、継続的な医療介入を要する症例が多かったことが考えられる。当事業を利用できる医療機関の増加、生活保護への円滑な移行や生活困窮者に対する国民健康保険料の引き下げ・自己負担額の減免などの対応が必要である。