第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

一般演題(口演)

11-1:保険制度・診療報酬

一般演題(口演)7 保険制度・医療制度

2024年7月20日(土) 14:50 〜 15:30 第8会場 (会議室103)

座長:田城 孝雄(放送大学大学院)

15:10 〜 15:20

[O-1-29] 病院入院から在宅医療に移る患者に変わらぬ医療の質を提供するために

*富岡 節子1、古屋 秀和2,3、上松 清子4、齋藤 充生4,5 (1. 医療創生大学 看護学部 看護学科、2. 昭和大学リウマチ・膠原病内科 、3. 荏原ホームケアクリニック、4. (財)日本医薬情報センター、5. NPO法人 ヘルスヴィジランス研究会)

【目的】日本はかつてない少子超高齢社会となり、団塊世代が退職後に後期高齢者となる2025年問題、2040年問題等、迫る課題が多く取り沙汰されている。これに対し、政府は地域包括ケアシステムの導入など、在宅医療を推進している中で、今回、医療機関から在宅への移行を阻む要因の一つとして、注射剤に注目し調査した。 【方法】在宅医療で使用可能な医薬品リスト等の関連通知については厚生労働省ホームページから、またWHOの必須医薬品リストはWHOのホームページから取得した。更に、在宅医療で実際に医薬品の変更・中止があった薬剤について薬物動態等から患者への影響を考察する。【結果】在宅医療で保険使用可能な注射剤は「厚生労働大臣の定める注射剤」として列挙された98薬剤(群)のみであった。詳細として、「注射用抗菌薬」「抗悪性腫瘍剤」のように薬効群として示される領域がある一方、ステロイド剤では、ベタメタゾン製剤・デキサメタゾン製剤・ヒドロコルチゾン製剤のみが収載されるなど、かなり限定されている。これらの医薬品は、療担規則・療担基準で外来処方可能な「厚生労働大臣が定める保険医が投与できる注射剤」の範囲内であった。【考察】在宅医療で保険使用できる医薬品は限られており、医療機関での入院治療から在宅へ移行すると、それまで良好に使用できていた医薬品が安定的・継続的に使用できなくなる。「厚生労働大臣が定める保険医が投与できる注射剤」は、新薬承認のタイミングで見直しがあるが、中医協での議論が尽くされているとしてパブリックコメントを経ずに決定されており、医療現場のニーズを汲み取る仕組みがない。在宅医療でも入院治療と同等の医療水準を保ち、安心して医療の受け皿として国民に受け入れられるよう、どうしても入院下でのみ使用すべき医薬品をネガティブリストとして掲示する等、新方式に切り替える必要があると考えられる。