第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

シンポジウム

09-2:異分野・異業種連携

シンポジウム10:異業種の視座から “喪失” を分かちあい多様性を包摂するコミュニティを考える

2024年7月20日(土) 10:10 〜 11:40 第9会場 (会議室104)

座長:大川 薫(亀田総合病院)、上村 久美子(居宅介護支援事業所万年青)

10:50 〜 11:10

[S10-3] ペットロス現場から獣医療におけるACP普及に向けて

*下司 睦子1,2,3 (1. 専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー(獣医師)、2. 獣医保険ソーシャルワーク協会、3. ヒトと動物の関係学会)

2004年 北里大学 獣医畜産学部 獣医学科 卒業
神奈川、千葉、静岡、愛知の動物病院にて小動物臨床(主に犬猫の診察)に従事
同時に動物看護師を育成する専門学校にて非常勤講師
2022年より専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー(動物看護科)の常勤として動物看護師の育成に従事(現在に至る)
家族同様共に暮らすコンパニオンアニマル(伴侶動物)が亡くなった時の喪失感「ペットロス」に関して、獣医療におけるACPの必要性をふまえながら、今回は獣医師の立場よりお話させていただく。
法律上犬猫は物として扱われるが、家庭で飼育される動物は家族の一員であると考える飼育者は多い。獣医療の発展、ペットフードの質向上、飼育環境の変化等により、近年犬猫も長寿化したことで心不全、腎不全、悪性腫瘍等の罹患率は上昇し、飼育者が動物病院を訪れその治療方針を決める機会も多くなった。ヒトでは患者本人の意思により終末期医療を決定していくと思うが、そもそも獣医療では動物自らの意思を確認することができない。最終的には飼育者の意思や死生観による決定がなされる。しかし飼育者が治療方針を選択・決定する際に必要な病気や治療に対する知識は決して十分とは言えず、また飼育者がいざという状況に陥った時じっくりと方針を考えている時間的余裕もないことが多い。さらに動物では最終的に安楽死という選択肢もある。動物との絆が強ければ強いほどその絆が失われるときの悲しみやストレスは大きく、近年このことを十分理解した獣医療が必要となっている。獣医療においても、やはり健常時には飼育動物の終末期の治療に関する話は敬遠されがちである。動物が健康なうちから死生観・終末期医療方針について、飼育者自身が自分の考えと対峙する、また家族内で考えを共有しておく、さらには獣医療スタッフとも共有し万が一の時にはすぐに治療方針の話し合いができる土台を作っていく、ACPの考えを普及していくことが求められる。
動物に対する価値観が各個人で異なることは十分承知である。が、今回の話からペットロスということを一考し、獣医療におけるACP普及の重要性、ペットロスで苦しむ方への理解を少しでも深めていただければと思う。