一般社団法人日本鉱物科学会2019年年会・総会

講演情報

口頭講演

R5: 地球外物質

2019年9月20日(金) 09:15 〜 12:00 大講義室 Ib (大講義室)

座長:中村 智樹、瀬戸 雄介

10:45 〜 11:00

[R5-07] 宇宙風化を模擬した水素イオン照射コランダムのナノオーダー化学状態分析

*伊神 洋平1、武藤 俊介1、大塚 真弘2、山本 悠太1、瀧川 晶3、三宅 亮3 (1. 名大・未来研、2. 名大・院工、3. 京大・院理)

キーワード:コランダム、宇宙風化、水素分析、電子顕微分光

本研究では、鉱物の水素イオン照射による宇宙風化過程の理解を目指し、コランダム (α-Al2O3) へのH2+照射実験と、回収物に対するSTEM-EELS詳細分析を行った。コランダムは星間塵の生き残り(プレソーラー粒子)として見出されるうえに、最も基本的な酸化物構造の一つであるため鉱物と水素イオンとの相互作用を考える上での基礎として重要な鉱物である。H2+照射実験回収物を、加速電圧200 kVおよび1 MVのTEMで観察・分析を行ったところ、無数の格子欠陥と約1 nm径のボイドが観察された。また、STEM-EELSスペクトラムイメージを取得し、多変量スペクトル分解の手法を用いて少数の素成分へ分解したところ、Alの還元とOのOH基化を示すコアロススペクトル成分の存在を見出した。さらにローロス領域のデータの分解結果からは、H2ガスと考えられるピークを伴うスペクトルが分解された。この成分はTEM像で観察された約1 nm径のボイドの密度分布と一致した。鉱物の構造や結合の違いにより、宇宙風化で内部に形成される分子種とその存在度には多様性が生じている可能性がある。