11:40 AM - 12:00 PM
[Awardees] 受賞者講演
受賞研究対象:「銀河系における物質循環に関する研究」
授賞理由:
瀧川 晶会員は「晩期型巨星から,星間空間を経て,星惑星形成領域へと至る物質循環を通じ,化学的に進化してきた銀河の歴史の中に太陽系の起源を位置づける」という時空間スケールの大きな物質循環の解明に取り組んできた。
瀧川会員の大きな業績の一つは,進化末期の晩期型巨星周囲での鉱物ダストの形成について,鉱物の凝縮や蒸発という低圧での物質形成の主要化学過程に注目し,非平衡条件で凝縮や蒸発をするフォルステライトやコランダムダストが異方的形状を取ることを実験で明らかにしたことである。さらに,異方的形状が赤外線天文観測で吸収・発光ピークの変化として検出できることを理論的に示し,その結果,晩期型巨星周に観測されてきたものの未同定であった13 μm にピークをもつ輝線が,晩期型巨星起源の質量放出風中の非平衡条件下で,ガスから凝縮したコランダムダストであることを突き止めた。また,始原隕石中のプレソーラーコランダム粒子のうち{011}面で囲まれたものは,晩期型巨星周でガスから凝縮したコランダムが,太陽系まで生き残った証拠であることを発見した。
また,ALMA 望遠鏡を用いて,アルミナダストが生成する場の物理化学環境を,世界で初めて撮像することにも成功し,ダスト形成が恒星からの質量流出の引き金になるという仮説を実証した。さらに,アルミナに富む非晶質ダストと考えられてきた輝線がケイ素を10%ほど含む遷移アルミナであることを実験で明らかにした。最近では,太陽系始原物質の探査にも貢献し,NASA 彗星核サンプルリターン計画CAESARや,「はやぶさ2」によるリターンサンプルの初期分析への参画など国際的に活躍している。
以上ように瀧川会員は,晩期型巨星から星間空間を経て太陽系に至るまでの銀河物質循環を,実証的に明らかにすることをめざし,多様の手法を複合した研究手法により,惑星物質科学・鉱物学・天文学など関連する地球惑星科学分野への新たな道を切り拓く成果を挙げている。以上の理由から,日本鉱物科学会研究奨励賞受賞者として相応しいと考え,ここに推薦する。
瀧川 晶会員の主要論文
1. Aki Takigawa, Shogo Tachibana, Hiroko Nagahara, and Kazuhito Ozawa, Evaporation and Condensation Kinetics of Corundum: The Origin of the 13 μm Feature of Oxygen-rich AGB Stars. Astrophysical Journal Supplement Series, 218, 2 (16pp), 2015.
3. Aki Takigawa, Takafumi Kamizuka, Shogo Tachibana and Issei Yamamura, “Dust formation and wind acceleration around the aluminum oxide–rich AGB star W Hydrae”, Science Advances 3, eaao2149 (5pp), 2017.
3. Aki Takigawa, Rhonda M. Stroud, Larry R. Nittler, Conel M. O’D.Alexander C. M. O’D. and Akira Miyake, “High-temperature Dust Condensation around an AGB Star: Evidence from a Highly Pristine Presolar Corundum”, The Astrophysical Journal, 862, L13 (6pp), 2018.
瀧川 晶会員は「晩期型巨星から,星間空間を経て,星惑星形成領域へと至る物質循環を通じ,化学的に進化してきた銀河の歴史の中に太陽系の起源を位置づける」という時空間スケールの大きな物質循環の解明に取り組んできた。
瀧川会員の大きな業績の一つは,進化末期の晩期型巨星周囲での鉱物ダストの形成について,鉱物の凝縮や蒸発という低圧での物質形成の主要化学過程に注目し,非平衡条件で凝縮や蒸発をするフォルステライトやコランダムダストが異方的形状を取ることを実験で明らかにしたことである。さらに,異方的形状が赤外線天文観測で吸収・発光ピークの変化として検出できることを理論的に示し,その結果,晩期型巨星周に観測されてきたものの未同定であった13 μm にピークをもつ輝線が,晩期型巨星起源の質量放出風中の非平衡条件下で,ガスから凝縮したコランダムダストであることを突き止めた。また,始原隕石中のプレソーラーコランダム粒子のうち{011}面で囲まれたものは,晩期型巨星周でガスから凝縮したコランダムが,太陽系まで生き残った証拠であることを発見した。
また,ALMA 望遠鏡を用いて,アルミナダストが生成する場の物理化学環境を,世界で初めて撮像することにも成功し,ダスト形成が恒星からの質量流出の引き金になるという仮説を実証した。さらに,アルミナに富む非晶質ダストと考えられてきた輝線がケイ素を10%ほど含む遷移アルミナであることを実験で明らかにした。最近では,太陽系始原物質の探査にも貢献し,NASA 彗星核サンプルリターン計画CAESARや,「はやぶさ2」によるリターンサンプルの初期分析への参画など国際的に活躍している。
以上ように瀧川会員は,晩期型巨星から星間空間を経て太陽系に至るまでの銀河物質循環を,実証的に明らかにすることをめざし,多様の手法を複合した研究手法により,惑星物質科学・鉱物学・天文学など関連する地球惑星科学分野への新たな道を切り拓く成果を挙げている。以上の理由から,日本鉱物科学会研究奨励賞受賞者として相応しいと考え,ここに推薦する。
瀧川 晶会員の主要論文
1. Aki Takigawa, Shogo Tachibana, Hiroko Nagahara, and Kazuhito Ozawa, Evaporation and Condensation Kinetics of Corundum: The Origin of the 13 μm Feature of Oxygen-rich AGB Stars. Astrophysical Journal Supplement Series, 218, 2 (16pp), 2015.
3. Aki Takigawa, Takafumi Kamizuka, Shogo Tachibana and Issei Yamamura, “Dust formation and wind acceleration around the aluminum oxide–rich AGB star W Hydrae”, Science Advances 3, eaao2149 (5pp), 2017.
3. Aki Takigawa, Rhonda M. Stroud, Larry R. Nittler, Conel M. O’D.Alexander C. M. O’D. and Akira Miyake, “High-temperature Dust Condensation around an AGB Star: Evidence from a Highly Pristine Presolar Corundum”, The Astrophysical Journal, 862, L13 (6pp), 2018.