一般社団法人日本鉱物科学会2021年年会・総会

講演情報

口頭講演

R5:地球外物質

2021年9月18日(土) 09:00 〜 12:15 Zoom Session 2

座長:中村 智樹(東北大学)、瀬戸 雄介(神戸大学)、 橘 省吾(東京大学)

10:15 〜 10:30

[R5-06] 放射光マイクロXANESを用いた衝撃による斜長石中の鉄の価数変化の評価

*佐竹 渉1、三河内 岳2、黒澤 耕介1、大野 遼1、新原 隆史2、松井 孝典1 (1. 千葉工大、2. 東大)

キーワード:衝撃変成、斜長石、エックス線吸収端近傍構造

発表者らは斜長石とマスケリナイト中の鉄価数に注目し、放射光Fe マイクロXANESを用いて分析することで、火星隕石最大のグループであるシャーゴッタイトの酸素分圧を相対的に評価している。斜長石中の鉄価数が衝撃の前後で変化しないか、衝撃による温度も含めて詳細な考察を行うため、申請者らが近年行っている3次元での衝撃回収実験試料で得られた試料に対してFe マイクロ XANES 分析を実施した。

分析試料として、シャーゴッタイト中のマスケリナイトと似た組成の斜長石が含まれている玄武岩を用意し、二段式軽ガス銃を用いた3次元での衝撃回収実験を行った。回収試料は、衝突点で10 GPa、500 Kの圧力と温度を経験したと見積もられている。

顕微鏡の観察の結果、衝突点付近の斜長石は特に強い波動消光を示した。XANES分析の結果は、衝突前の斜長石のFe3+/ΣFe比の値は11-20%、衝突後の試料の値は11-20%であり、衝突前後でFe3+/ΣFe比の値は変わらなかった。この結果から、少なくとも10 GPa、500Kの環境下では、鉄の2価3価比は変化しないと考えられる。