10:20 AM - 10:35 AM
[R1-02] Mössbauer Spectra and Intensity Tensors of Quadrupole Doublets for Fe3+ and Fe2+ of Bridgmanite
Keywords:Bridgmanite, Mössbauer spectroscopy, Intensity tensor
はじめに ブリッジマナイトは地球の下部マントルの主要な構成鉱物と考えられている高圧鉱物である。ブリッジマナイトは、代表的な化学組成がMgSiO3で、ペロブスカイト構造をとり、直方晶系に属する。ブリッジマナイトは無水鉱物であるが、水素をOH-の形で結晶構造中に取り込むと考えられ、下部マントルでの“水”のリザーバーとなりうると考えられている。Purevjav et al. (2024)は高圧合成後のメスバウアースペクトル測定を考慮して、57Fe2O3を出発物質の一部として用いて、化学組成(Mg0.88 Fe2+0.05 Fe3+0.05 Al0.03) (Si0.88 Al0.11 H0.01) O3のブリッジマナイトの高品質な単結晶を高圧合成し、中性子回折・赤外分光測定などを用いて結晶構造中の水素の位置を決定した。Purevjav et al. (2024)では合成ブリッジマナイト単結晶中のFe2+とFe3+の量比をメスバウアースペクトルを用いて解析している。ブリッジマナイトのFe2+とFe3+はそれぞれ四極子分裂幅が異なるダブレットピークを示す。四極子分裂ピークは57Feメスバウアー原子核位置での電場勾配に起因する。電場勾配は3行3列のテンソル量として表される。四極子分裂ダブレットピークの低速度側のピーク強度をIl、高速度側のピーク強度をIhとした時、高速度側の相対強度(ピーク強度:[Ih/(Ih+Il)])は電場勾配と相関を持ち、ピーク強度は3行3列のピーク強度テンソルから計算できる。単結晶試料の場合、一般的にIlとIhは等しくなく入射ガンマ線の方向に対する結晶方位に依存してそのピーク強度は変化する。しかし、Purevjav et al. (2024)におけるブリッジマナイト単結晶のメスバウアースペクトルの解析では、Fe2+とFe3+の四極子ダブレットーピークの分離においてそれぞれのピーク強度が等しいと仮定して分離している。粉末試料の場合にはピーク強度が等しいとして解析できるが、単結晶の場合にはピーク分離の際にピーク強度も解析時のパラメーターとして考慮しなければならない。本研究では、X線回折法で結晶方位を定めたブリッジマナイト単結晶のメスバウアースペクトルを測定し、Fe2+とFe3+の四極子ダブレットの強度テンソルを求めピーク分離を行った。
実験と結果 Purevjav et al. (2024)が合成したブリッジマナイト単結晶2粒を、X線プリセッションカメラを用いて結晶方位を特定し、a, b, c軸に垂直の定方位研磨片とし単結晶メスバウアースペクトル測定試料とした。直方晶系の場合、四極子ダブレットのピーク強度を決める強度テンソルは3行3列の対角行列と設定できる。結晶軸方向に対するガンマ線入射方向を等方的に複数選び、その複数のスペクトルを足し合わせ平均化することにより、ピーク強度は強度テンソルの対角成分の値に関わらず0.5とできる。本研究では等方的にガンマ線入射方向を9方向選び、単結晶メスバウアースペクトルを測定した。9つの単結晶メスバウアースペクトルの透過率を規格化・平均化したスペクトルに対して、ピーク強度0.5と固定して、メスバウアースペクトル解析ソフトウェアMosswinnを用いてFe2+とFe3+の四極子ダブレットピークに分離した。このピーク分離で得たアイソマーシフト、四極子分裂幅、半値幅の値を用いて9つの単結晶メスバウアースペクトルを解析し、結晶軸方向に対するガンマ線の入射方向とピーク強度を求めた。そしてZimmermann (1975)の方法を用いてガンマ線の入射方向とピーク強度の関係から、ブリッジマナイトのFe2+とFe3+の四極子ダブレットの強度テンソルを求めた。
REFERENCES:[1] Purevjav, N. et al. (2024) American Mineralogist. https://doi.org/10.2138/am-2022-8680[2] Zimmermann, R. (1975) Nucl. Instr. and Meth. 128, 537-543
実験と結果 Purevjav et al. (2024)が合成したブリッジマナイト単結晶2粒を、X線プリセッションカメラを用いて結晶方位を特定し、a, b, c軸に垂直の定方位研磨片とし単結晶メスバウアースペクトル測定試料とした。直方晶系の場合、四極子ダブレットのピーク強度を決める強度テンソルは3行3列の対角行列と設定できる。結晶軸方向に対するガンマ線入射方向を等方的に複数選び、その複数のスペクトルを足し合わせ平均化することにより、ピーク強度は強度テンソルの対角成分の値に関わらず0.5とできる。本研究では等方的にガンマ線入射方向を9方向選び、単結晶メスバウアースペクトルを測定した。9つの単結晶メスバウアースペクトルの透過率を規格化・平均化したスペクトルに対して、ピーク強度0.5と固定して、メスバウアースペクトル解析ソフトウェアMosswinnを用いてFe2+とFe3+の四極子ダブレットピークに分離した。このピーク分離で得たアイソマーシフト、四極子分裂幅、半値幅の値を用いて9つの単結晶メスバウアースペクトルを解析し、結晶軸方向に対するガンマ線の入射方向とピーク強度を求めた。そしてZimmermann (1975)の方法を用いてガンマ線の入射方向とピーク強度の関係から、ブリッジマナイトのFe2+とFe3+の四極子ダブレットの強度テンソルを求めた。
REFERENCES:[1] Purevjav, N. et al. (2024) American Mineralogist. https://doi.org/10.2138/am-2022-8680[2] Zimmermann, R. (1975) Nucl. Instr. and Meth. 128, 537-543