2:15 PM - 2:30 PM
[R1-09] Reexamination of the symmetry of itoigawaite
Keywords:Itoigawaite, symmetry
糸魚川石は、SrAl2Si2O7(OH)2・H2Oで表される、ローソン石(CaAl2Si2O7(OH)2・H2O)のストロンチウム(Sr)置換体である。糸魚川石は、世界でも新潟県糸魚川-青海地域と鳥取県若桜地域の2カ所からしか産出の報告がない稀産鉱物である(Miyajima et al., 1999、下林・山田, 2003)。
糸魚川石の空間群については、模式標本の分析と併せて提示されたものと合成実験結果を基に提唱されたものがある。Miyajima et al.(1999)は、糸魚川-青海産の糸魚川石 について、粉末X線回折パターンの解析から、ローソン石の構造を参考に空間群をCmcm(a = 6.031Å, b = 8.945Å, c = 13.219Å)と報告している。一方、Liebscher et al. (2010)は、 (Ca, Sr)Cl2水溶液中で4 GPa/600 ℃, 800 ℃での合成実験を行い、粉末X線回折測定とリートベルト解析によって糸魚川石が空間群P21/m(a = 5.4231Å, b = 13.2761Å, c = 5.8583Å, β= 124.42°)で生成されたという報告をしている。またローソン石については、高圧でCmcmから P21/mへ可逆的な相転移が起こることが知られている(Scott and Williams 1999; Daniel et al. 2000)。一見すると2つの空間群に対応した単位格子には大きな差異があって両者の識別は容易に思えるが、実際には両相の構造の違いは僅かであって、糸魚川石の空間群がP21/mかCmcmかを判別するのは非常に困難であり、どちらの空間群が正しいのかについてはまだ詳しくは検討されていないと思われる。本研究では、糸魚川石の結晶構造に着目し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察・電子回折法を利用して、糸魚川石の詳細な観察をおこなった。試料は、鳥取県若桜産および糸魚川産の糸魚川石を用いた。
鳥取県若桜産および糸魚川産の糸魚川石をSEMおよびTEMで観察した結果、TEM明視野像では、SEMスケールでは見られなかった細かい筋状の組織(図)が、どちらの産地のものからも見られた。この領域から得られた電子回折図形(図)では、糸魚川石の結晶格子の軸角が90°からわずかにずれ、回折点が2つに分裂している様子が観察できた。そのため、糸魚川石は直方晶系よりも低対称な構造で双晶を形成していると考えられ、双晶の各個体についてはLiebscher et al. (2010)が報告しているP21/mで矛盾なく説明できることがわかった。すなわち、細かい筋状の組織はP21/m構造の双晶であることが判明し、通常のX線回折法ではこのような微細な双晶を判別できずに両者を平均したCmcm構造と誤認する可能性があることがわかった。本研究の結果からは糸魚川石の空間群がP21/mであることが強く示唆される。
糸魚川石の空間群については、模式標本の分析と併せて提示されたものと合成実験結果を基に提唱されたものがある。Miyajima et al.(1999)は、糸魚川-青海産の糸魚川石 について、粉末X線回折パターンの解析から、ローソン石の構造を参考に空間群をCmcm(a = 6.031Å, b = 8.945Å, c = 13.219Å)と報告している。一方、Liebscher et al. (2010)は、 (Ca, Sr)Cl2水溶液中で4 GPa/600 ℃, 800 ℃での合成実験を行い、粉末X線回折測定とリートベルト解析によって糸魚川石が空間群P21/m(a = 5.4231Å, b = 13.2761Å, c = 5.8583Å, β= 124.42°)で生成されたという報告をしている。またローソン石については、高圧でCmcmから P21/mへ可逆的な相転移が起こることが知られている(Scott and Williams 1999; Daniel et al. 2000)。一見すると2つの空間群に対応した単位格子には大きな差異があって両者の識別は容易に思えるが、実際には両相の構造の違いは僅かであって、糸魚川石の空間群がP21/mかCmcmかを判別するのは非常に困難であり、どちらの空間群が正しいのかについてはまだ詳しくは検討されていないと思われる。本研究では、糸魚川石の結晶構造に着目し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察・電子回折法を利用して、糸魚川石の詳細な観察をおこなった。試料は、鳥取県若桜産および糸魚川産の糸魚川石を用いた。
鳥取県若桜産および糸魚川産の糸魚川石をSEMおよびTEMで観察した結果、TEM明視野像では、SEMスケールでは見られなかった細かい筋状の組織(図)が、どちらの産地のものからも見られた。この領域から得られた電子回折図形(図)では、糸魚川石の結晶格子の軸角が90°からわずかにずれ、回折点が2つに分裂している様子が観察できた。そのため、糸魚川石は直方晶系よりも低対称な構造で双晶を形成していると考えられ、双晶の各個体についてはLiebscher et al. (2010)が報告しているP21/mで矛盾なく説明できることがわかった。すなわち、細かい筋状の組織はP21/m構造の双晶であることが判明し、通常のX線回折法ではこのような微細な双晶を判別できずに両者を平均したCmcm構造と誤認する可能性があることがわかった。本研究の結果からは糸魚川石の空間群がP21/mであることが強く示唆される。