12:30 〜 14:00
[R1-P-02] EPMAによるゼノタイムの定量分析
キーワード:電子プローブマイクロアラライザー、ゼノタイム、化学組成、竹原鉱山
Ⅰ.はじめに
ゼノタイムは花崗岩中に普通に産するYと重希土類元素に富むリン酸塩鉱物である。しかしながらEPMAを用いて希土類元素の定量分析を行なうには互いに干渉し合う希土類元素の特性X線強度を補正しなければならないという困難さがあるため本邦花崗岩産ゼノタイムのEPMA定量分析の報告は非常に少ない。今回,三重県竹原鉱山産ゼノタイムを用いて主成分元素用定量分析条件の検討を行なったのでその概要を報告する。
Ⅱ.定量分析条件
1.検討手順
使用したEPMAはJEOL JXA-iHP200Fである。最初に定性分析を実施し主要構成元素を同定し,測定する特性X線位置とバックグラウンド位置を決定した。定性分析で得られた半定量値を基にピークの重なりの程度を確認し,重なりの程度が大きい測定元素には高次X線が干渉する場合は波高分析器を使用する設定とし,1次線が干渉する場合は干渉補正係数を求めて補正する設定とした。
2.検討結果
加速電圧は15 kV,照射電流は50 nA,ビーム径は3 μmである。Pyle et al. (2002) により推奨された特性X線を選択して各元素の測定を行った。希土類元素の標準試料は,Y3Al5O12 (YLα),NdB6 (NdLα),含Sm, Yb合成ガラス(SmLα, YbLα),Gd3Ga5O12 (GdLα),含Tb合成ガラス(TbLα),含Dy, Er合成ガラス(DyLα, ErLα),含Tm, Ho合成ガラス(TmLα, HoLβ)を用いた。その他の元素の標準試料にはSmP5O14 (PKα),CaSiO3 (SiKα),鈴木ら(1999)の合成ガラス (CaKα),ThO2 (ThMα),U metal (UMβ)を使用した。3チャンネルで測定を行ない,用いた分光結晶と測定元素の順は以下の通りである:1CH PETH (CaKα→PKα→YLα→SiKα),4CH LIFH (HoLβ→YbLα→TmLα→ErLα→DyLα→TbLα→GdLα→SmLα→NdLα),5CH PETL (ThMα→UMβ)。X線計測時間はTh・Uが100秒,Ca・Hoが40秒,他の元素が20秒である。バックグラウンドはピークの両側の2点で測定した。ピーク及びバックグラウンドは2回計測し,その平均を真のX線強度とした。補正方法はZAF法を用いた。
高次X線との重なりを除去するためCa, Si, P, Dy, Ho, Yb, Th, Uに対して各特性X線のエネルギー幅に波高分析器を設定した。
1次線が干渉するケースは以下のものが認められた:TmLα1線対するSmLγ1線及びDyLβ4線の干渉,UMβ線に対するThMγ線及びThM3-N4線の干渉,PKα線に対するYLβ線の干渉。これらについてはそれぞれSmP5O14, DyP5O14, ThO2, Y3Al5O12を用いてÅmli and Griffin (1975)の方法で各妨害元線に対応する干渉補正係数を求めて補正を行なった。
バックグラウンド測定位置(BG-, BG+)は以下の通りである:CaKα (3.60, 5.80), PKα (5.00,4.50), YLα (4.00, 3.50), SiKα (4.30, 5.50), HoLβ (2.56, 3.44), YbLα (4.26, 1.74), TmLα (2.07, 2.43), ErLα(1.57, 2.93), DyLα (5.73, 2.77), TbLα (1.94, 8.56), GdLα (6.83, 3.67), SmLα (6.96, 3.00), NdLα (2.83, 3.77) , ThMα (3.00, 3.00), UMβ (3.04, 4.24)。
文献
Åmli, R. and Griffin, W.L. (1975) Amer. Mineral., 60, 599-606.
Pyle, J.M., Spear, F.S. and Wark, D.A. (2002) Rev. Mineral. Geochem., 48, Mineral. Soc. Amer., Washington, D.C., 337-362.
鈴木和博,足立 守,加藤丈典,與語節生 (1999)地球化学, 33, 1-22.
ゼノタイムは花崗岩中に普通に産するYと重希土類元素に富むリン酸塩鉱物である。しかしながらEPMAを用いて希土類元素の定量分析を行なうには互いに干渉し合う希土類元素の特性X線強度を補正しなければならないという困難さがあるため本邦花崗岩産ゼノタイムのEPMA定量分析の報告は非常に少ない。今回,三重県竹原鉱山産ゼノタイムを用いて主成分元素用定量分析条件の検討を行なったのでその概要を報告する。
Ⅱ.定量分析条件
1.検討手順
使用したEPMAはJEOL JXA-iHP200Fである。最初に定性分析を実施し主要構成元素を同定し,測定する特性X線位置とバックグラウンド位置を決定した。定性分析で得られた半定量値を基にピークの重なりの程度を確認し,重なりの程度が大きい測定元素には高次X線が干渉する場合は波高分析器を使用する設定とし,1次線が干渉する場合は干渉補正係数を求めて補正する設定とした。
2.検討結果
加速電圧は15 kV,照射電流は50 nA,ビーム径は3 μmである。Pyle et al. (2002) により推奨された特性X線を選択して各元素の測定を行った。希土類元素の標準試料は,Y3Al5O12 (YLα),NdB6 (NdLα),含Sm, Yb合成ガラス(SmLα, YbLα),Gd3Ga5O12 (GdLα),含Tb合成ガラス(TbLα),含Dy, Er合成ガラス(DyLα, ErLα),含Tm, Ho合成ガラス(TmLα, HoLβ)を用いた。その他の元素の標準試料にはSmP5O14 (PKα),CaSiO3 (SiKα),鈴木ら(1999)の合成ガラス (CaKα),ThO2 (ThMα),U metal (UMβ)を使用した。3チャンネルで測定を行ない,用いた分光結晶と測定元素の順は以下の通りである:1CH PETH (CaKα→PKα→YLα→SiKα),4CH LIFH (HoLβ→YbLα→TmLα→ErLα→DyLα→TbLα→GdLα→SmLα→NdLα),5CH PETL (ThMα→UMβ)。X線計測時間はTh・Uが100秒,Ca・Hoが40秒,他の元素が20秒である。バックグラウンドはピークの両側の2点で測定した。ピーク及びバックグラウンドは2回計測し,その平均を真のX線強度とした。補正方法はZAF法を用いた。
高次X線との重なりを除去するためCa, Si, P, Dy, Ho, Yb, Th, Uに対して各特性X線のエネルギー幅に波高分析器を設定した。
1次線が干渉するケースは以下のものが認められた:TmLα1線対するSmLγ1線及びDyLβ4線の干渉,UMβ線に対するThMγ線及びThM3-N4線の干渉,PKα線に対するYLβ線の干渉。これらについてはそれぞれSmP5O14, DyP5O14, ThO2, Y3Al5O12を用いてÅmli and Griffin (1975)の方法で各妨害元線に対応する干渉補正係数を求めて補正を行なった。
バックグラウンド測定位置(BG-, BG+)は以下の通りである:CaKα (3.60, 5.80), PKα (5.00,4.50), YLα (4.00, 3.50), SiKα (4.30, 5.50), HoLβ (2.56, 3.44), YbLα (4.26, 1.74), TmLα (2.07, 2.43), ErLα(1.57, 2.93), DyLα (5.73, 2.77), TbLα (1.94, 8.56), GdLα (6.83, 3.67), SmLα (6.96, 3.00), NdLα (2.83, 3.77) , ThMα (3.00, 3.00), UMβ (3.04, 4.24)。
文献
Åmli, R. and Griffin, W.L. (1975) Amer. Mineral., 60, 599-606.
Pyle, J.M., Spear, F.S. and Wark, D.A. (2002) Rev. Mineral. Geochem., 48, Mineral. Soc. Amer., Washington, D.C., 337-362.
鈴木和博,足立 守,加藤丈典,與語節生 (1999)地球化学, 33, 1-22.