2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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Poster presentation

R1: Characterization and description of minerals (Joint Session with The Gemmological Society of Japan)

Thu. Sep 12, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R1-P-05] The origin of abundant graphite in quartz veins in Ishidera area, Wazuka Town, Kyoto Prefecture, Japan

*Masaki Nishio1, Itaru Mitsukawa1, Yohei Igami1, Akira Miyake1, Norimasa Shimobayashi1 (1. Kyoto Univ. Sci.)

Keywords:Graphite, Fluid inclusion, C-O-H fluid, Quartz vein

【はじめに】京都府和束町石寺地域に見られる石英脈からは多くの稀産鉱物が報告されている(鶴田ほか2008; Morimitsu et al., 2021等)。この石英脈は微細な石墨などを多量に含むことで灰色を呈しているのが特徴である(森光2021)。一般に石墨の起源は2つに大別でき、炭質物が変成作用を受け石墨化した場合と、C-O-H流体から晶出した場合があることが提唱されている(Luque et al., 1998)。本地域には新期領家花崗岩類である木屋花崗岩と、石墨を含みその接触変成作用を受けた変成泥岩(菫青石帯)が分布している。よって地質環境を考慮すると石寺の灰色石英脈中の石墨の起源としては、母岩である変成泥岩中の石墨を石英脈が貫入した際に取り込んだ可能性と、石英熱水中にC-O-H流体が含まれておりそこから石墨が晶出した可能性が考えられる。
【目的】そこで本研究では、灰色石英脈中の石墨の起源はどちらであるのか、そして具体的にどのようなプロセスを経て石英中にもたらされたのかを明らかにすることを目的とし、母岩との構成鉱物の比較、石墨の産状の詳細な記載、流体包有物の分析を行った。
【手法・結果】木屋花崗岩と接する変成泥岩の構成鉱物を調べた結果、黒雲母、白雲母、石英、菫青石、チタン鉄鉱、電気石が含まれることが分かった。一方、灰色石英中には先行研究(森光 2021)において報告されている肉眼的なサイズの白雲母、黄鉄鉱、燐灰石、電気石などや微細な石墨に加えて、白雲母が微細な固相包有物としても存在することが分かった。しかし、変成泥岩に普遍的かつ大量に含まれる黒雲母は一切見いだせず、また先行研究(森光 2021)と同様に、石英脈中に変成泥岩の岩片は一切確認できなかった。
 石英中の石墨は石英粒界、粒内の両方に存在した。粒界に位置する石墨は他形あるいは球状粒子集合体であった。粒内に位置する石墨は流体包有物と分布が共通しており、共存する固相は顕微鏡下では確認できなかった。また形態は球状と不規則状であった。特に不規則状の石墨のほとんどが周縁部に空隙を伴っていた。球状石墨粒子に関して、石英粒界、粒内からそれぞれ1つずつFIBで切り出し、TEMでの観察を行った。その結果、一見球状であった石墨は空隙内に樹枝状の結晶として成長していることが分かった(図)。また大型放射光施設SPring-8でのX線CTによる撮影でもTEMでの観察と同様に空隙に樹枝状に存在する石墨が多数確認された。石英中の石墨について、レーザーラマン分光光度計による結晶化度の測定を実施したところ、先行研究において報告されている流体起源の石墨と同様に、高い結晶化度を有することが分かった。また、一部の石英粒内の石墨からは二酸化炭素とメタンのラマンスペクトルを検出した。周囲に流体のdecrepitation haloを有する石墨粒子も存在した。流体のみからなる包有物も存在し、その形状は大きく不規則化している事が光学顕微鏡やX線CTにより確認され、ラマンスペクトルの結果、H2O、H2O+CO2+CH4、CO2+CH4で構成される事が判明した。
【考察】石英脈の微細な石墨の起源として、まず母岩から固相のまま石墨が物理的に取り込まれた場合と比較・検討を行った。この場合、石英脈中に母岩の岩片が存在し、石墨は岩片との粒界に脈状に分布し、石墨はフレーク状で、流体包有物はほぼH2O(>93%)であるとされており(Crespo et al., 2005)、本研究での観察・分析結果とは一致しない。そして石墨が樹枝状をなすこと、流体包有物と分布の共通性があること、石墨が一部は流体で充填されるような空隙を伴うことは周囲の変成泥岩からの取り込みでは説明がつかない。一方、C-O-H流体から石墨が晶出した場合、母岩の岩片がなく、共生鉱物に乏しい(Luque et al., 2014)。また石墨はフレーク状に限らず様々な形態をなし(Barrenechea et al., 2009)、本研究での石墨と形態が類似する報告例もある(Satish-Kumar, 2005)。さらに世界中の流体起源の石墨鉱床では炭素に富む流体が石英中の包有物として存在することが報告されている(Luque et al., 2011)。そのため、石寺の石英脈中の石墨はC-O-H流体から晶出することでもたらされたと考えられる。ただし、C-O-H流体からの石墨晶出時に発生すると思われるH2Oは石墨と直接共存する形では存在しておらず、具体的な晶出反応の特定は今後の課題である。
R1-P-05