2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Poster presentation

R1: Characterization and description of minerals (Joint Session with The Gemmological Society of Japan)

Thu. Sep 12, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R1-P-07] Fibrous inclusions in rose quartz

*Yohei SHIROSE1, Hayato Fudamoto1, Sayako Inoue2 (1. Ehime Univ. Sci., 2. Ehime Univ. GRC)

Keywords:rose quartz, dumortierite, dumortierite-like mineral, pegmatite, Fukuyoshi

【はじめに】
 ローズクォーツ(rose quartz; ばら石英)は淡い桃色を呈した石英であり,ペグマタイト等から塊状で産する。ローズクォーツの呈色の原因は,石英内部の幅1 μm以下の繊維状インクルージョンによるものとされている(e.g, Goreva and Rossman, 2001)。この繊維状インクルージョンについてはローズクォーツをフッ酸で溶解させ抽出したものを分析に用いており,TEM観察からデュモルチ石の2倍の長さのa軸,b軸の超構造を持つ鉱物であることが報告されている(Ma et al., 2002)。これらの先行研究では石英を溶解させ抽出することでインクルージョンの鉱物学的な性質を明らかにしてきたが,本研究では石英内でインクルージョンがどのような組織を有するか明らかにすることで,その成因や呈色への影響を解明することを目的とする。
 本研究では,福岡県福吉ペグマタイト産のローズクォーツについて薄片を作成し,SEM-EDSを用いて石英内の繊維状インクルージョンの特徴と分布について検討を行った。またSEM観察で見出された繊維状インクルージョンについてFIBを用いて直接薄膜試料を作成し,TEM/STEM-EDSを用いて詳細な分析を行った。
【試料・実験手法】
 福岡県糸島市福吉地域には糸島花崗閃緑岩が広く分布しており,ペグマタイトが多く分布する。福吉ペグマタイトは電気石や紅柱石の産出が特徴的な花崗岩質ペグマタイトで,周囲には泥質片岩が分布している。現在露頭は確認できないが塊状のローズクォーツの転石が多く存在する。ローズクォーツ及び同産地の暗桃色,黒色,無色の石英についても観察を行った。観察,分析にはJEOL製走査型電子顕微鏡JSM-6510LV及びJEOL製走査透過型電子顕微鏡JEM-2100Fを使用した。
【結果・考察】
 SEM-EDS観察の結果,桃色のローズクォーツ中には幅0.1-0.5 μm,長さ3-30 μm程度の繊維状インクルージョンが確認できた。微細なため定性的ではあるがアルミニウムと微量の鉄,チタンの含有が確認でき,先行研究で報告されているデュモルチ石様鉱物と考えられる。このデュモルチ石様繊維状インクルージョンは,伸長方向が確認できたものではほとんどが同一方向に伸長している。また,桃色のローズクォーツ及び暗桃色の石英においてはデュモルチ石様繊維状インクルージョンがいずれも200 × 500 μmの領域中に30個程度含まれていることが確認できた。一方で同産地の黒色や無色の石英中にはこのようなデュモルチ石様繊維状インクルージョンはほとんど確認できなかった。
 桃色のローズクォーツ中の繊維状インクルージョンについて,STEM-EDSを用いて求めた化学組成は (Al0.87Ti0.09Fe0.03)Al6(Si2.99Al0.01)O12(BO3)となり,デュモルチ石と同様の組成となり微量のチタン及び鉄を含むことが特徴的である。長軸方向(c軸方向)から観察した形態は直径200 nm程度の多角柱状で,(010)面や(120)面などの結晶面が確認できた。[001]方向からの電子回折パターンについては,デュモルチ石で指数を付けることができよく一致する。この場合の格子定数はa = 11.80 Å, b = 20.57 Å程度となる。しかし,[001]方向からの電子回折像では超構造の有無を判別できず(Ma et al., 2002),[001]方向から15-20°程度傾斜させて得られた電子回折パターンでは,デュモルチ石の110反射の2倍の周期を持つ20.45 Åのスポットが確認できたため,本産地の繊維状インクルージョンについても先行研究と同様の超構造を持つデュモルチ石様鉱物である可能性が高い。
 TEM観察では石英との明瞭な方位の関係性は確認できなかったが,繊維状インクルージョンは石英の[01-1]方向に近い方向に伸長している。また,本研究で繊維状インクルージョンの色は確認できていないが,Fe/(Fe + Ti)の値が高いと青色,低いと桃色を呈することが報告されており(Alexanders et al., 1986),本研究のデュモルチ石様鉱物も鉄よりもチタンを多く含むため桃色に近い呈色を示すと思われる。
R1-P-07