2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Poster presentation

R1: Characterization and description of minerals (Joint Session with The Gemmological Society of Japan)

Thu. Sep 12, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R1-P-14] “Common Hornblende” from Mt. Tawarayama (Goou-toge), the outer-rim of Mt. Aso, Kumamoto Prefecture

*Haruki Inoue1, Seiichiro Uehara2 (1. Enecom Co., Ltd., 2. Kyushu Univ. Museum)

Keywords:Mt. Tawarayama, Goou-toge, magnesio-hastingsite, common hornblende

1.はじめに
 熊本県阿蘇外輪山を構成する山の一つである俵山は日本トップクラスの角閃石標本の産地として知られる.この角閃石は褐色種で,オパサイト化が著しく,その部分は細かい磁鉄鉱と普通輝石の集まりからなり,分離・精製した角閃石の化学分析値から当時の分類で“普通角閃石”と記載された(松本, 1954).なお,Hawthorne et al. (2012)の分類法では苦土ヘスティングス閃石に分類される.また,浜根 (2019)は本産地の角閃石について,角閃石は苦土ヘスティングス閃石に分類され,表面から内部へ向かうほんの数百ミクロン程度の薄皮であり,その内側は微細な透輝石+オリビン+磁鉄鉱の集合体となっていたとしている.今回,この角閃石について鉱物学的な再検討を行い,角閃石結晶中の組織,共存鉱物,化学組成を明らかにした.
2.試料・分析手法
 俵山の護王峠の安山岩の母岩から分離した角閃石を分析対象とした.角閃石結晶の研磨薄片は,断面がc軸と平行および垂直となる方向で作製し,偏光顕微鏡観察・走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った.
 X線回折分析にはRigaku Ultima ⅣおよびRigaku RINT RAPID IIを用いた.組織観察,化学分析および面分析には,SEM (JEOL JSM-7001F)を用いた.
3.結果
 X線回折分析では,10個程の角閃石結晶で粉末試料を作製し測定を行った.PDXL2を用いて定性分析を行い苦土普通角閃石,透輝石,苦土橄欖石,斜長石,磁苦土鉄鉱と同定された.定量分析(WPPF法)も続けて行い,上記の鉱物の含有量はそれぞれ33,26,19,16,6 wt%という結果を得た.これは薄片観察の結果ともおおむね一致する.
 偏光顕微鏡およびSEM観察の結果,角閃石結晶中の角閃石はほぼ全体が変化して仮像を呈するものから,1~3割残存するものが認められた.角閃石残晶は赤褐~淡黄茶の強い多色性を示す.この残晶は同一の結晶内で消光位が同じであったため,単結晶であったと示唆される.角閃石残晶の組成式の計算はLocock (2014)に従い行った.OH = 2 - 2Ti (apfu)と仮定すると苦土ヘスティングス閃石,OH = 2と仮定すると苦土ヘスティングス閃石およびフェリ定永閃石と分類された.松本 (1954)および浜根 (2019) の記載とおおよそ一致するが,松本 (1954)の分析値と比較すると,Fe3+,Mg,Alに富み,Fe2+に乏しい組成であった.
 角閃石結晶はいずれも外側(厚さ数十から数百μm)および角閃石の劈開に沿ってオパサイト化しており,「角閃石は表面から内部へ向かいほんの数百ミクロン程度の薄皮でしかなかった」という浜根 (2019)の記載とは異なっていた.オパサイト化部分は偏光顕微鏡では不透明にしか見えず,同定は困難であった.SEMでは粒径1 μm以下から数μmの微細な結晶の集合であることが分かったが,鉱物種は推定する程度に留まった.正確な同定には透過型電子顕微鏡(TEM)による分析が必要である.
 角閃石結晶内部に数μmから30 μm程度の結晶の集合体が虫食い状に散在していた.この部分では苦土橄欖石(Mg# ≈ 0.95),透輝石,普通輝石,磁苦土鉄鉱,磁鉄鉱,カリ長石,スピネルを認めた.これらは角閃石の熱分解により生じたと考えられる.分解の例として,pargasite = diopside + forsterite + spinel + anorthite + nepheline + H2Oの反応式が挙げられる(Deer et al., 1997).なお,pargasiteはmagnesio-hastingsiteと類縁鉱物で,理想組成式ではC席を占めるAlとFe3+の数に差があるだけである。また,殆どの結晶中に包有物として0.1~1.6 mmの灰長石(An90)および0.1~0.3 mmの苦土橄欖石(Mg# ≈ 0.85)が認められたほか,風化により生じたと思われるアロフェンがオパサイト化部分,熱分解物からなる虫食い状部分および包有物の灰長石の周囲,割れ目に認められた.
参考文献
Deer et al. (1997) Rock-Forming Minerals, 2B, The Geological Society, London.
Hawthorne et al. (2012) Am. Min., 97, 2031-2048.
Locock (2014) Comput. Geosci., 62, 1-11.
浜根大輔 (2019) https://mdcl.issp.u-tokyo.ac.jp/denken/?page_id=12#a164,2022年8月閲覧.
松本幡郎 (1954) 地学研究,7,104-107.
R1-P-14