2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R2: Crystal structure, crystal chemistry, physical properties of minerals, crystal growth and applied mineralogy

Sat. Sep 14, 2024 9:00 AM - 12:00 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Fumiya Noritake, Mariko Nagashima, Makoto Tokuda

9:00 AM - 9:20 AM

[R2-01] Changes of physical and structural properties of hydrous minerals
induced by dehydration of coordinated water molecules

「招待講演」

*Ryo YAMANE1 (1. Tohoku University)

Keywords:hydrous mineral, dehydration, vivianite, coordinated water molecule

最近、含水鉄(II)リン酸塩鉱物であるビビアナイト(Fe3(PO4)2・8H2O)に120℃程の低温加熱を施すことで、ビビアナイトがカチオンの電気化学的な挿入脱離に適した化学状態・構造に変化することが報告された[1]。この報告は、ビビアナイトの蓄電池正極材への応用を期待させる。
この低温加熱においてビビアナイトの2価の鉄は、鉄に配位する水分子の脱プロトンを伴って3価に酸化されるが、母構造はある程度(単位胞の相関程度)保持される。この低温加熱試料は常温常圧で放置しても復水が生じることはない。私は、[1]の研究から、含水鉱物の脱水を意図的に途中で中断し、それを常温常圧で取り出すことにより得られる、母物質とも、完全に脱水した(もしくは分解)生成物ともまた違った物性・構造、そしてそれに起因する機能性を持った物質群に着目している。中でも私は、配位水を含む物質に関心を持っている。配位水は、構造中の水としてよく注目されるゼオライト的な水よりも、骨格構造とより強く相互作用している。そのため配位水は、低温加熱において、ビビアナイトで見られたような骨格構造の化学状態を変えてしまうような反応にも関与しうるからである。
ここでは、母構造に対して脱水途中であり、次の条件を満たす状態を部分脱水生成物と呼ぶ:①構造中に配位水を含むこと②加熱、真空引きなどの操作を経て脱水させ、常温・常圧条件で放置したとき、例えば復水などで、母構造の含水量に戻らない状態。例えば、胆礬(CuSO4・5H2O)は高校化学でも登場するような含水鉱物であるが、次の脱水過程を経る[2]:CuSO4・5H2O → CuSO4・3H2O →CuSO4・H2O → CuSO4。3, 1水和物は部分的に脱水された状態であるが放置しておくと、5水和物への復水が生じるため[2]、ここで想定する部分脱水生成物ではない。一方で例えばビビアナイトは低温加熱によりサンタバーバライトに変化し、120℃ではFe3(PO4)2(OH)3・1.4H2Oという化学組成で表される[1]。復水しないので、部分脱水生成物である。私の知る限り、部分脱水生成物の多くは加熱による脱水だと200℃程度までの低温加熱で得られ、X線回折パターンにおいて母構造と比べ、顕著にブロードなブラッグピークを示すか、明瞭なブラッグピークを示さない、構造にランダムネスを抱えた状態である。そしてさらに脱水が進む、もしくは完全に脱水し終えると、再び結晶性の高い構造を有する相が出現する。
これらのことから、低温加熱では母物質の構造からの大規模な再編成が起きず、部分脱水生成物は脱水による欠陥を内包したポーラスな構造的特徴を有するのではないかと考えている。
発表では、部分脱水生成物を考えるに至ったビビアナイトの電気化学・構造研究に関して概説し、部分脱水によってビビアナイトが獲得する物性(機能性)や構造的特徴について議論し、他の含水鉱物の部分脱水生成物についても現状わかっていることやビビアナイトの部分脱水生成物との類似点・相違点などを議論したい。
[1] Yamane, R. et al., PCCP. 25, 31346-31351 (2023)[2] Ferhcaud, C. et al., IMPRES. 073 (2013)