一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

R2:結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物

2024年9月14日(土) 09:00 〜 12:00 ES024 (東山キャンパス)

座長:則竹 史哉、永嶌 真理子、徳田 誠(熊本大学)

11:15 〜 11:30

[R2-09] ペロブスカイト型SrTiO3へのNa+とK+の固溶について

北井 亮吾2、*永井 隆哉1、川野 潤1、篠崎 彩子1 (1. 北大・院理、2. 北大・理)

キーワード:ペロブスカイト構造、SrTiO3、ナトリウム、カリウム、酸素欠陥

ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する酸化物結晶は、多様なイオンの固溶に寛容であることが知られている。そのチタン酸塩A2+Ti4+O3の場合の固溶メカニズムとしては、A2+やTi4+を他の2価や4価の陽イオンでそれぞれ置換するものだけでなく、結晶全体の電荷を中性に保つように、2個のA2+を1価と3価の陽イオンでカップル置換したり(例:2Sr2+→Na++La3+)、A2+とTi4+をそれぞれ3価の陽イオンで置換したり(例:Ca2++Ti4+→La3++Al3+、1価と5価の陽イオンでカップル置換する(例:Ca2++Ti4+→Na++Nb5+)ものなど多くが知られている。その他にも、Ti4+を3価の陽イオンで置換すると同時に電荷補償のために酸素欠陥を導入するメカニズムもあり、私たちの研究室ではTi4+→Al3+の置換に伴う構造変化やAl3+の局所構造を調べてきた。ところで、酸素欠陥を導入するメカニズムは、A2+を1価の陽イオンだけで置換した場合にも成立しそうであるがそのような研究例を見つけられていない。そこで本研究では、立方晶系のペロブスカイト構造を持つSrTiO3への、Na+とK+の固溶について調べた合成実験の結果を報告する。なお、Shannon(1976)によるとNa+とK+の6配位におけるイオン半径はTi4+よりはるかに大きく、12配位のイオン半径はSr2+と近いことから、Na+とK+はSr2+のみを置換すると仮定した。
 合成実験の出発物質はSrCO3、アナターゼ型TiO2、Na2CO3またはK2CO3の粉末試薬を用い、焼成後のバルク組成がSr1-xNaxTiO3-0.5xまたはSr1-xKxTiO3-0.5x (x=0.00, 0.05, 0.10, 0.20, 0.50)として各試薬を秤量し、アルミナ乳鉢と乳棒を用いて十分に混合した。なお、Na2CO3については3 wt%過剰に秤量、混合した。その後、WC製のペレタイザーでペレット化し、高温炉で、室温から45 ℃/hで1050 ℃まで昇温し、48時間焼成した後、炉外に迅速に取り出して急冷、回収した。回収試料は粉末X線回折装置を用いX線回折パターンを測定し、生成相の同定、ペロブスカイト構造相の格子定数の精密化などを行った。
 バルク組成がSr1-xNaxTiO3-0.5xのX線回折パターンについては、xが0~0.1においては立方晶系のペロブスカイト構造相として説明可能なピーク以外は出現していないが、x=0.2と0.5については、Na2Ti6O13、Na2Ti3O7などと同定可能なピークが共存した。バルク組成がSr1-xxTiO3-0.5xのX線回折パターンについては、xが0~0.1においては立方晶系のペロブスカイト構造相として説明可能なピーク以外は出現していないが、x=0.2と0.5については、K2Ti6O13と同定可能なピークが共存した。立方晶系のペロブスカイト構造相として説明可能な相の格子定数の変化は、バルク組成がSr1-xNaxTiO3-0.5xについては、xが0~0.1においては約0.001Å減少し、Sr1-xxTiO3-0.5xについては、xが0~0.1においては約0.001Å増加した。しかしいずれもx=0.2と0.5において生成した立方晶系のペロブスカイト構造相として説明可能な相の格子定数はx=0.1のときの値とほぼ変化がない。格子定数の減少と増加の傾向は、Na+とK+のSr2+に対するイオン半径の大小関係から説明可能で、Na+とK+いずれもSrTiO3へSr2+を置換し、酸素欠陥を生成する形で10 mol%程度まで固溶することがわかった。