2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R2: Crystal structure, crystal chemistry, physical properties of minerals, crystal growth and applied mineralogy

Sat. Sep 14, 2024 2:00 PM - 3:30 PM ES024 (Higashiyama Campus)

Chairperson:Kazuki 小松 Komatsu

2:30 PM - 2:45 PM

[R2-13] Formation of Fundamental Building Blocks Composed of Calcium Borate Minerals

「発表賞エントリー」

*Kosuke Yamaguchi1, Atsushi Kyono2, Satoru Okada1, Hiroki Hasegawa1 (1. Univ of Tsukuba. Grad. Sch. of Life and Env., Sci, 2. Univ of Tsukuba. Life and Environmental Science)

Keywords:hydrothermal method, dissolution-reprecipitation, gowerite, priceite, nobleite

ホウ酸塩鉱物は,結晶構造内で3配位と4配位のホウ酸[BOx(OH)y; += 3 or 4]が結合して基本構造単位(Fundamental building blocks; FBBs)を構成している.このホウ酸の組み合わせからなるFBBがきわめて多様である.例えば,主要ホウ酸塩鉱物には,colemanite CaB3O4(OH)3・5H2O,ulexite NaCaB5O6(OH)6・5H2O,kernite Na2B4O6(OH)2・3H2O,borax Na2B4O5(OH)4・8H2Oがある.Burns et al. (1995)の表記法に従うと,colemaniteのFBBは<△2□>と表記され,これは一つの3配位のホウ酸(△)と二つの4配位のホウ酸(2□)の環状構造(<△2□>)から構成されていることを表す.UlexiteのFBBは<△2□>-<△2□>と表記され,これは二つの<△2□>環が一つのホウ酸を共有した二量体(<△2□>-<△2□>)から構成されている.KerniteのFBBは<△2□>-<△2□>-<△2□>と表記され,<△2□>環が一つのホウ酸を共有して一方向に伸びた鎖状構造(<△2□>-<△2□>-<△2□>)を構成している.さらにboraxのFBBは<△2□>=<△2□>と表記され,二つの<△2□>環が二つのホウ酸を共有したクラスターを構成している.このように多様なFBBを持つホウ酸塩鉱物であるが,ホウ酸塩鉱物のFBBがどのような条件で形成され,どのように重合し,結果としてどのようなホウ酸塩鉱物が晶出するのかその詳細は明らかになっていない.そこで,本研究では,出発物質としてH3BO3,NaOH,CaCl2を用いた水熱合成実験を実施し,生成物の分析・解析,およびそのフィードバックサイクルを通して,ホウ酸塩鉱物の生成環境を実験室で明らかにし,ホウ酸塩鉱物のFBBの形成条件を検討した.本研究の水熱合成実験の結果,gowerite CaB6O8 (OH)4・3H2O; FBB = <△2□>-<2△□>,△,priceite Ca2B5O7(OH)5・H2O; FBB = <△2□>-<3□>,nobleite CaB6O9(OH)2・3H2O; FBB = [Φ]<△2□>|<△2□>|<△2□>|の三相が生成された.Goweriteは加熱温度120℃および150℃で,反応時間12hで得られた.Priceiteは,加熱温度150℃で反応時間を12hから48hに増加されることで得られた.したがって,長時間の加熱ではgoweriteは溶解再沈殿してpriceiteが生成される可能性が高い.また,priceiteは,加熱温度を150℃から180~240℃に上昇させ,反応時間12hに短縮させることでも得られ,pHを上昇(≃pH14)させることによっても得られた.一方,加熱温度210℃で反応時間48h加熱後,その後自然放冷し室温で15日間保持すると,nobleiteが得られた.したがってpriceiteが溶解再沈殿するとnobleiteが生成される.Gowerite,priceite,nobleiteの三相のFBBは<△2□>環が共通している.Goweriteは短時間の反応で生成されたことから,<△2□>環は反応初期に形成されている.Goweriteは長時間の加熱で溶解するが,溶液中で<△2□>環は維持され,priceiteが沈殿するときに<△2□>環がpriceiteのFBBとして取り込まれていると考えられる.さらに,priceiteは長時間室温で溶液中に静置すると溶解するが,このとき溶液中で<△2□>環は維持され,nobleiteとして沈殿するときに<△2□>環がnobleiteのFBBとして取り込まれていると考えられる.ホウ酸塩鉱物は,温度,反応時間,pH,陽イオン濃度に応じて最適な結晶構造を構築するが,そのFBBは,前後の安定な相の間でFBBの一部(特に<△2□>環)を継承することが明らかになった.本研究によって,生成環境の変化に応じて晶出するホウ酸塩鉱物が変化しても,FBBの一部が継承されることが確認できたことは,自然界に存在するホウ酸塩鉱物から過去の晶出環境を明らかにできる可能性が示唆され,古環境推定にホウ酸塩鉱物が利用可能であることが示唆される.