12:30 PM - 2:00 PM
[R2-P-09] Crystallographic site preference of impurity elements in olivine by ALCHEMI method
Keywords:olivine, cation site distribution, analytical electron microscopy, ALCHEMI
オリビン[Mg,Fe]2SiO4は結晶構造中に二種類の酸素八面体サイト(M1, M2)を持つ。MgとFeはおおざっぱにはM1, M2サイトに同程度に分布するが、実際にはFeは僅かにM1サイトへの配置を好む性質があり加熱によりその傾向は顕著になることが知られる(e.g., Heinemann et al. 2006)。こうしたオリビンにおける各陽イオンのM1-M2サイト間分配挙動は、一般に高温下で生じる配列の無秩序化と一見して反する挙動に見えることもあり興味が持たれてきた (e.g., Aikawa et al., 1985)。地質学的応用の観点では、オリビンのM1-M2 サイト間の元素交換速度が輝石などと比べてもとても速いため、上記の温度依存性から高温時の情報を抽出することはそれほど期待できない。しかしその反面、高温時のM1-M2サイト間分配の残存(凍結)程度が冷却速度をよく反映する可能性がある(e.g., Redfern et al.,1996)。さらに天然のオリビンには微量元素として特にCa、Mn、Niなどが普遍的に存在する。Mg, Feに加えてこれら各元素のサイト間分配を全て計測することで、一つのオリビン粒子に対してより詳細な冷却過程の情報を得られる可能性がある。複数元素あるいは微量元素のサイト占有率の決定は一般的なX線回折法などでは困難なため、Spence & Taftø (1983)やMotoyama et al. (1995)らは電子チャネリングを活用した結晶内のサイト選択的EDS分析であるALCHEMI (Atom-location by channeling-enhanced microanalysis) を用いることでオリビン中複数微量元素のサイト分布計測を試みた。しかし、これらは数点のビーム傾斜に対するX線スペクトル変化を用いた計測であることなどの理由で、得られた値は必ずしも十分な精度があったとは言えない。ALCHEMIは近年、電子顕微鏡のデジタル制御を活用して多くのビーム傾斜に対するX線スペクトル変化を取得する実験方法や理論計算との比較による解析方法によりHARECXS (High angular-resolution electron-channeling X-ray spectroscopy)として拡張がなされ、複合的な構造を持つ鉱物においても結晶内元素分布を精度よく決定することが可能となった(e.g., Soeda et al., 2000; Muto & Ohtsuka, 2017; Igami et al., 2018)。本研究ではこの手法を用いて改めて様々なオリビン中の複数微量元素のサイト間分配を計測し、それらの産状との関係について検討した。
サンプルには冷却速度が異なると期待される天然のオリビン試料を複数用意した。また、San Carlos産オリビンを高温アニールした後急冷回収した試料も作成した。これらの化学組成についてSEM-EDSやEPMAで測定した後に集束イオンビーム装置(FIB, FEI Quanta 200 3DS or Helios NanoLab G3 CX)で薄膜を作成し、TEM-EDS (JEOL JEM-2100F, JED-2300T)を用いてALCHEMI分析を行った。分析ではM1, M2席が明確に分離する(004)面に着目し、001系統列反射条件下で電子線傾斜に対する各元素の特性X線強度変化プロファイルを収集した。得られたX線強度プロファイルを、ICSC (Oxley & Allen, 2003)を用いて算出した各サイトからの理論プロファイルに対して線形回帰することで、各元素の結晶内分布の評価を試みた。以上の分析により、0.1 wt%レベルまでの微量元素についてM1, M2サイトへの分配率を計測できた。各元素のサイト選択性は、定性的には全て先行研究同様であることが分かった。すなわち、FeはわずかにM1サイトへ、Niは強くM1サイトへ、MnやCaは強くM2サイトへ集中する傾向を示した。その上で、試料により分配率に有意な差がみられ、それらが産状と相関することを確認した。また、San Carlos産オリビンは高温アニール後に急冷することでより火成オリビンが示す分配率に近づくことが分かった。
サンプルには冷却速度が異なると期待される天然のオリビン試料を複数用意した。また、San Carlos産オリビンを高温アニールした後急冷回収した試料も作成した。これらの化学組成についてSEM-EDSやEPMAで測定した後に集束イオンビーム装置(FIB, FEI Quanta 200 3DS or Helios NanoLab G3 CX)で薄膜を作成し、TEM-EDS (JEOL JEM-2100F, JED-2300T)を用いてALCHEMI分析を行った。分析ではM1, M2席が明確に分離する(004)面に着目し、001系統列反射条件下で電子線傾斜に対する各元素の特性X線強度変化プロファイルを収集した。得られたX線強度プロファイルを、ICSC (Oxley & Allen, 2003)を用いて算出した各サイトからの理論プロファイルに対して線形回帰することで、各元素の結晶内分布の評価を試みた。以上の分析により、0.1 wt%レベルまでの微量元素についてM1, M2サイトへの分配率を計測できた。各元素のサイト選択性は、定性的には全て先行研究同様であることが分かった。すなわち、FeはわずかにM1サイトへ、Niは強くM1サイトへ、MnやCaは強くM2サイトへ集中する傾向を示した。その上で、試料により分配率に有意な差がみられ、それらが産状と相関することを確認した。また、San Carlos産オリビンは高温アニール後に急冷することでより火成オリビンが示す分配率に近づくことが分かった。