10:30 AM - 10:45 AM
[R3-03] Possible presence of poirierite, a high-pressure phase of (Mg,Fe)2SiO4, in the deep Earth's mantle
Keywords:olivine, poirierite, high-pressure phase transformation, transmission electron microscope
オリビンは圧力の増加に伴い、準スピネル構造のワズレアイト、スピネル構造のリングウッダイトに相転移する。これらの多形間のトポロジー的解析により、第3の高圧相であるイプシロン相が予測された[1]。イプシロン相は準スピネル構造で最も小さな単位格子を持ち、この構造モジュールの配向の違いにより、ワズレアイト、リングウッダイトの構造が表現できる。一方、オリビンとイプシロン相は、酸素のパッキングは異なるが陽イオンの配列は同じ、という共通点を持つ。このように、イプシロン相は全てのオリビン多形と結晶構造的な類似性を持つため、各安定相間の相転移を中継する準安定構造としての役割を担っている可能性がある。
最近、筆者らは強い衝撃を受けた隕石中に同相を発見し、新鉱物ポワリエライトと命名した [2, 3]。ポワリエライトはリングウッダイト、ワズレアイト中にナノスケールのコヒーレントラメラとして形成されており、衝撃圧力の開放過程で両相から準安定的に形成されたと考えられる。しかし、その詳しい形成条件は明らかでない。そこで本研究では、オリビンの静的高圧相転移実験を行い、ポワリエライトの形成条件を探ることを目的とした。
高圧相転移実験では、米国サンカルロス産の(Mg0.91, Fe0.09)2SiO4オリビン単結晶を粉砕し、100μm以下の不均一な粒径を持つ粉末とした。この粉末をMgOカプセルに封入し、川井型マルチアンビル装置により12, 14, 16 GPa、900 ℃の圧力温度条件で120分間保持した。急冷減圧して回収した試料について、微小部X線による相同定(Rigaku SmartLab)、走査電子顕微鏡による全体組織の観察を行った後、オリビンの相転移境界部分をFIB((Hitachi SMI-4050)で超薄切片に加工してTEM(JEOL JEM-ARM200F)による極微細組織観察を行った。
相転移実験において、オリビン粒子は粒界にて部分的に高圧相転移していた。12、14、16 GPaにおける生成相はそれぞれ、ワズレアイト、ワズレアイト+リングウッダイト、リングウッダイトであった。ワズレアイト、リングウッダイトの粒径は0.5-1.5 µmである。大半のリングウッダイト結晶粒子は、{110}上に積層欠陥を持つ。それらの電子回折パターンは、リングウッダイトの回折スポットに加えて、ポワリエライトに対応する微弱な回折スポットを示し、両相の結晶方位関係は、隕石で観察されたものと同じであった。いくつかのワズレアイト粒子は(010)面に積層欠陥を持つが、これまでの観察では、ポワリエライトの電子線回折スポットは見つかっていない。未反応のオリビン粒子内に高圧相は一切みられず、塑性変形を示す転位のみが観察される。転位密度は1.4–2.1×109/cm2で、オリビン差応力計 [4] によると、0.5–0.6 GPaの差応力に相当する。
以上の隕石試料と実験試料の微細構造および結晶学的観察結果から、14 GPa以上の圧力にてオリビンに高差応力が加えられると、ナノスケールのポワリエライトを含むリングウッダイトに相転移することが明らかになった。ワズレアイト中のポワリエライト形成条件については、引き続き実験的検討を行う予定である。
文献 [1] Madon, M. and Poirier, J. P. (1983) Physics of the Earth and Planetary Interiors, 33, 31–44. [2] Tomioka, N. and Okuchi, T. (2017) Sci. Rep. 7, 17351. [3] Tomioka, N., Bindi, L., Okuchi, T., Miyahara, M., Iitaka, T., Li, Z., Kawatsu, T., Xie, X., Purevjav, N., Tani, R., and Kodama, Y. (2021) Commun. Earth & Environ. 2, 16. [4] Kohlstedt, D. L., Goetze, C., and Durham, W. B. (1976) in Physics and Chemistry of Minerals and Rocks, 35–49.
最近、筆者らは強い衝撃を受けた隕石中に同相を発見し、新鉱物ポワリエライトと命名した [2, 3]。ポワリエライトはリングウッダイト、ワズレアイト中にナノスケールのコヒーレントラメラとして形成されており、衝撃圧力の開放過程で両相から準安定的に形成されたと考えられる。しかし、その詳しい形成条件は明らかでない。そこで本研究では、オリビンの静的高圧相転移実験を行い、ポワリエライトの形成条件を探ることを目的とした。
高圧相転移実験では、米国サンカルロス産の(Mg0.91, Fe0.09)2SiO4オリビン単結晶を粉砕し、100μm以下の不均一な粒径を持つ粉末とした。この粉末をMgOカプセルに封入し、川井型マルチアンビル装置により12, 14, 16 GPa、900 ℃の圧力温度条件で120分間保持した。急冷減圧して回収した試料について、微小部X線による相同定(Rigaku SmartLab)、走査電子顕微鏡による全体組織の観察を行った後、オリビンの相転移境界部分をFIB((Hitachi SMI-4050)で超薄切片に加工してTEM(JEOL JEM-ARM200F)による極微細組織観察を行った。
相転移実験において、オリビン粒子は粒界にて部分的に高圧相転移していた。12、14、16 GPaにおける生成相はそれぞれ、ワズレアイト、ワズレアイト+リングウッダイト、リングウッダイトであった。ワズレアイト、リングウッダイトの粒径は0.5-1.5 µmである。大半のリングウッダイト結晶粒子は、{110}上に積層欠陥を持つ。それらの電子回折パターンは、リングウッダイトの回折スポットに加えて、ポワリエライトに対応する微弱な回折スポットを示し、両相の結晶方位関係は、隕石で観察されたものと同じであった。いくつかのワズレアイト粒子は(010)面に積層欠陥を持つが、これまでの観察では、ポワリエライトの電子線回折スポットは見つかっていない。未反応のオリビン粒子内に高圧相は一切みられず、塑性変形を示す転位のみが観察される。転位密度は1.4–2.1×109/cm2で、オリビン差応力計 [4] によると、0.5–0.6 GPaの差応力に相当する。
以上の隕石試料と実験試料の微細構造および結晶学的観察結果から、14 GPa以上の圧力にてオリビンに高差応力が加えられると、ナノスケールのポワリエライトを含むリングウッダイトに相転移することが明らかになった。ワズレアイト中のポワリエライト形成条件については、引き続き実験的検討を行う予定である。
文献 [1] Madon, M. and Poirier, J. P. (1983) Physics of the Earth and Planetary Interiors, 33, 31–44. [2] Tomioka, N. and Okuchi, T. (2017) Sci. Rep. 7, 17351. [3] Tomioka, N., Bindi, L., Okuchi, T., Miyahara, M., Iitaka, T., Li, Z., Kawatsu, T., Xie, X., Purevjav, N., Tani, R., and Kodama, Y. (2021) Commun. Earth & Environ. 2, 16. [4] Kohlstedt, D. L., Goetze, C., and Durham, W. B. (1976) in Physics and Chemistry of Minerals and Rocks, 35–49.