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[R3-07] 下部マントル最上部条件までのCaSiO3-H2O系でのデイブマオアイトのその場格子体積観察
キーワード:水輸送、名目上無水鉱物、デイブマオアイト、マントル遷移層、下部マントル
下部マントルの主要な鉱物であるデイブマオナイト (CaSiO3ペロブスカイト、以下Dm)の水の溶解度は、 下部マントルにおける水の分布や輸送量を正確に理解する上で重要である。 近年、 下部マントル圧力でのダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた実験や理論計算により、 Dmの体積は水の含有により縮小すると提唱された(Chen et al., 2020)(Shim et al., 2022)。 これらの先行研究では、2-3%の格子体積縮小率が、0.5-2wt%の含水量に相当すると報告している。しかし、含水量と格子体積変化の関連は実験例が少なく、Dmの飽和含水量とその安定性はよく分かっていない。 そこで本研究では、技術開発により実現した水飽和系でのマルチアンビル装置を用いたその場X線観察実験により、高温高圧下でのDmの格子体積を調査した。 含水量~14 wt%の天然の鉱物、 スオルナイト(Ca2Si2O5(OH)2・H2O)を出発物質として、 SPring-8のBL04B1に設置されている高圧発生装置SPEED-MkIIを用いて圧力10-30 GPa、 温度1723℃までのX線その場観察実験を行った。 揺動を行いながらエネルギー分散型システムにより高温高圧下での試料中の金と試料のX線回折パターンを取得し、 出現相の確認および圧力と試料の格子体積を算出した。加熱中の各温度圧力で取得された試料のXRDから、出現が確認された相は、スオルナイト・Dm・氷VII相であった。また10-28 GPaの1000℃以下では未同定ピークが観察された。これは未知含水相に由来するものだと考えており、発表で詳細を説明する。その場格子体積観察では、 約15 GPaでのDmの格子体積は、500℃で出現後1300℃まで無水の格子体積とほぼ等しいことが分かった。 一方で、 約20-28 GPaでは、最初に出現したDmの格子体積は最大+0.8~+4.3%と過剰に膨張していた(過剰体積)。 しかし過剰体積は温度の上昇・時間経過により縮小した。さらに20 GPa以上では、縮小した格子体積は昇温に伴い無水Dmの格子体積よりも小さい値を示すことが分かった(-0.2~-0.7%)。水飽和系でのDmの格子体積が縮小することはChen et al. (2020)と整合的な観察であるため、Chen et al. (2020)の見積もりを参考にすると約0.1 wt%の水の含有に相当する。しかしより正確に飽和含水量を推定するため、二次イオン質量分析計(SIMS)による含水量測定を検討中である。