一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

講演情報

口頭講演

R3:高圧科学・地球深部

2024年9月12日(木) 14:00 〜 15:15 ES025 (東山キャンパス)

座長:境 毅(愛媛大学)、新名 良介(明治大学)、石井 貴之(岡山大学)、川添 貴章(広島大学)

14:45 〜 15:00

[R3-12] 高温高圧下におけるB2-FeNiSi相の音速測定と地球核の構成

*大谷 栄治1、生田 大穣2、福井 宏之3,4、坂巻 竜也1、石川 大介3,4、バロン アルフレッド3,4 (1. 東北大・院理、2. 岡山大惑星物質研、3. JASRI、4. 理研)

キーワード:音速、B2-FeNiSi合金、高温高圧、内核

Fe-Ni-Si系の高温高圧下における相関係(Ikuta et al., 2021)によると,B2相のFe0.67Ni0.06Si0.27合金は地球核の高温高圧下において,Si量の少ないhcp-FeNi合金(またはSiをほとんど含まないhcp-Fe-Ni合金)と共存する.内核がB2相とhcp相の混合物からなる可能性を検証するために,B2-Fe0.67Ni0.06Si0.27(7wt% Ni-15wt% Si)の高温高圧下(130 GPa、2300 Kまでの温度圧力条件)における音速と密度を,SPring-8のBL43LXUビームラインの高分解能X線非弾性散乱法とX線粉末法を用いて測定した.高圧の発生にはダイヤモンドアンビル高圧装置を,高温の発生と測温には,ポータブルレーザー加熱測温装置を用いた.その結果,縦波速度(Vp)と密度(ρ)には,線形の関係(バーチ則)が成り立ち,その温度依存性はほとんど存在しないことが明らかになった.このようにバーチ則の弱い温度依存性は,純鉄のbcc相(Shibazaki et al., 2016)およびFeSi合金のB20相(Whitaker et al., 2009)に見られる温度依存性と同様である.本研究で得られたB2-Fe0.67Ni0.06Si0.27合金のVP-ρ関係を内核の条件に外挿するとともに,状態方程式との組み合わせで横波速度(VS)を見積もり,地震学的モデルPREMの内核の値と比較した.内核の温度を6000 Kと見積もると,内核の条件において,B2-Fe0.67Ni0.06Si0.27合金とhcp-Fe-Ni合金の二相混合物のVPとVSは,PREMの値と比較して,どちらも誤差の範囲ではあるが僅かに大きい値を示す.この結果から,PREMの内核はFe-Ni-Si合金のB2相とhcp相の混合物として説明可能であるが,PREMの内核をより良く説明できる可能性として,(1)内核の温度が本研究で想定した6000 Kより高い,(2)ケイ素に加えて,鉄合金に含有されることで音速(VPとVS)を下げる性質を示すと考えられるケイ素以外の軽元素成分(例えば硫黄)が内核に含まれていることなどの可能性が考えられる.

引用文献
Dziewonski and Anderson (1981). Preliminary reference Earth model. Physics of the Earth and Planetary Interiors, 25, 297‒356.
Ikuta et al. (2021). Two-phase mixture of iron–nickel–silicon alloys in the Earth’s inner core, Communications Earth and Environments, 2, 225.
Shibazaki et al. (2016). Compressional and shear wave velocities for polycrystalline bcc-Fe up to 6.3 GPa and 800 K. American Mineralogist, 101(5), 1150–1160.
Whitaker et al. (2009). Thermoelasticity of ε-FeSi to 8 GPa and 1273 K. American Mineralogist, 94, 1039–104