2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

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Poster presentation

R3: High-pressure science and deep Earth’s material

Thu. Sep 12, 2024 12:30 PM - 2:00 PM Entrance Hall (Higashiyama Campus)

12:30 PM - 2:00 PM

[R3-P-02] Differential Scanning Calorimetry of Mn2SiO4 tephroite

*Yuta Asami1, Itaru Ohira2, Hiroshi Kojitani2 (1. Gakushuin Univ. Sci, 2. Gakushuin Univ.)

Keywords:Tephroite, Heat capacity, d-orbital electrons

地球の上部マントルの主要鉱物であるオリビン型(Mg,Fe)2SiO4を熱力学的に扱うためには、オリビン型Mg2SiO4およびFe2SiO4の定圧熱容量が必要である。このうちオリビン型Fe2SiO4の実測値から算出したCVは、Dulong-Petitの法則から算出されたCvを約700 Kで上回り、Fe2SiO4は格子振動とは別の熱容量による効果があると報告された(Benisek et al. 2012)。Fe2+などd電子をもつ場合は、格子振動寄与の熱容量以外にスピン自由度に由来したショットキー熱容量などの効果が考えられる。このd軌道電子による熱容量を議論するためには、格子振動の熱容量以外の過剰な熱容量の大きさを知る必要がある。様々な3d遷移金属元素の2価の陽イオンを含むオリビン型化合物の熱容量データを比較することで、格子振動以外の過剰な熱容量を検討できるようになる。このような3d遷移金属元素を含むオリビン型のうち、オリビン型Co2SiO4およびNi2SiO4の熱容量は、Robie et al.(1984)によりそれぞれ360–1000 K、5–1000 Kまで測定がなされている。しかし、オリビン型Mn2SiO4であるテフロアイトのCPデータは、Robie et al.(1982)により断熱シールド熱量計を使用して5–380 Kまで測定されているが、それより高温のデータは存在しないため比較できない。このため、本研究ではMn2SiO4テフロアイトの定圧モル熱容量を300 Kより高温側の温度範囲で決定することを目的とした。
 Mn2SiO4テフロアイトは、モル比MnCO3 : SiO2 = 2.1 : 1の混合物を電気炉で1000–1200℃でCO2:H2:Ar=3.3:6.7:10(cc/min)の混合ガス気流下で合計80時間加熱して合成した。合成試料は粉末X線回折測定によりオリビン構造を持つ単相であることを確認した。Mn2SiO4の熱容量は示差走査熱量計(PerkinElmer Diamond DSC)を使用して測定された。熱量計の温度較正はIn、Sn、Znの融解温度、およびLi2SO4の相転移温度を使用した。300–830 Kの温度範囲で、加熱速度は10 K/min、データは10 Kの昇温ステップで取得した。エンタルピーの標準物質としてα–Al2O3を使用した。各サンプルはAlパンに詰められ、空のパン、α–Al2O3、Mn2SiO4の3つを1セットとし、150 Kの温度範囲において測定が行われた。測定された熱流シグナルを用いてエンタルピー法により熱容量を決定した。各温度の熱容量は4~5個のデータの平均値とした。
 図1にMn2SiO4テフロアイトのDSC測定結果、および比較のため他のオリビン型M2SiO4(M=Fe,Co,Ni,Mg)の実測による定圧熱容量を示した。本研究では300–830 Kで新たに熱容量のデータが得られた。また、Robie et al.(1982)によるMn2SiO4の300–380 Kにおける測定値と誤差範囲内で一致した。他のオリビン型珪酸塩化合物の熱容量との比較をすると、低温側で熱容量に違いが見られる。その違いは、大まかに調和振動によるCVの違いにより説明できる。しかし、Fe2SiO4とCo2SiO4の熱容量はMn2SiO4 、Ni2SiO4およびMg2SiO4より大きい。このことから、Fe2SiO4やCo2SiO4のショットキー熱容量などによる過剰な熱容量の大きさは、Mn2SiO4、Ni2SiO4 、Mg2SiO4と比較して大きいことが推測される。また、Mn2SiO4の熱容量は、温度上昇に伴いNi2SiO4と同様にd電子を持たないMg2SiO4と同等になる傾向が見られる。このことから、ショットキー熱容量などによる過剰な熱容量は、約1200 Kより低温側で寄与するかもしれない。そして、Mn2SiO4の過剰な熱容量の寄与の大きさはFe2SiO4、Co2SiO4より小さく、Ni2SiO4と同等になるだろう。
R3-P-02