12:30 PM - 2:00 PM
[R3-P-08] Extreme pressure generation using toroidal diamond anvil cell
Keywords:Toroidal type DAC(t-DAC)
地球や惑星の深部環境は高温高圧の世界になっており,実験的にその環境を再現することで惑星構成物質の結晶構造・物性・化学反応が研究されてきた。惑星科学分野では,近年の惑星探査において5000を超える系外惑星が発見されており,観測技術の制約によるところもあるが,そのほとんどは地球よりも大きな惑星(スーパーアースまたはサブネプチューンなど)である。系外惑星の内部構造や進化の理解のためには,水素,ヘリウム,水,メタン,アンモニア,ケイ酸塩,酸化物,鉄系合金といったあらゆる惑星構成物質について,地球内部の温度圧力条件に留まらないサブテラパスカルからテラパスカルオーダーの非常に広範な温度圧力範囲で研究する必要があり,高圧物質科学にとって広大なフロンティアを提供している。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)は地球中心に及ぶ広範な圧力条件を実現できる静的圧縮実験手段として広く利用されてきたが,従来のDACでは400 GPa超の圧力発生は困難であった。これを可能にする手法として2段式DAC(ds-DAC)(Dubrovinsky et al. 2012, 2015; Dubrovinskaia et al. 2018; Sakai et al. 2015, 2018, 2020)とトロイダル型DAC(t-DAC)(Dewaele et al. 2018; Jenei et al. 2018; Zurkowski et al. 2024)が注目されているが、いまなお400 GPa超の圧力発生は容易ではない。本研究では400~500 GPaの圧力発生を目的として,様々な先端形状のt-DACによる高圧力発生実験を行った。
t-DACにおいて先端の凸部とそれを支える平坦部は,ds-DACにおける2段目アンビルと1段目アンビルの関係に対応する。凸部の形状は先端部の圧力分布・勾配を決定する重要な要素である。本研究では特に高い圧力発生報告のあるds-DACにおいて用いられている半球形状を模して,上部に微小なculet相当の平坦部を残しつつ球体上部1/4を切り出した形状を集束イオンビーム加工装置(FIB)によって作製した。Culetサイズは5, 10, 20 umの3種類を試行した。アンビル材は単結晶ダイヤモンド,ガスケットはレニウムを用い,圧力評価はレニウムの状態方程式(Anzellini et al. 2014; Sakai et al. 2018)を用いた。XRD測定はSPring-8 BL10XUにて行った。
Culet 5 umのt-DAC実験で,476~510 GPaまでの圧力発生に成功し,圧力スケールによる幅はあるものの,目的の500 GPa発生を実現することができた。ここでReの体積はRe 100, 101, 110の3本のピークを用いて決定しており,c/aは1.60程度と妥当な値であった。ただピークのブロードニングに起因する体積誤差が大きい(±~40 GPa)ため,もう少し大きなculet径にするなど,非静水圧の効果を低減しより質の良い圧縮状態を実現する工夫が必要と思われる。一方,測定箇所が中心から1~2 μmずれただけでも体積およびc/a比が大きく変化し,従って算出される圧力も大きく低下する。c/aが異常に大きいケースでは,一軸的な応力の効果として体積を過大評価し,従って圧力は過小評価されると考えられるため,先端部における正確な圧力分布の評価は非常に難しい。Culet 10 umおよび20 umのt-DAC実験では,それぞれ455~487 GPa, 421~449 GPaの圧力発生に成功し、いずれも400 GPa超を達成することができた。Culet 10 umでの実験では最高圧条件において数umの範囲においておおよそ均質な圧力場となっていることを確認できた。また、Culet 20 umの実験では最高圧の421 GPaにおいて6本のピークが測定され,c/aは1.58,体積誤差は0.8%であった。このような圧力領域では圧縮率が非常に小さくなるため、わずかな体積差が大きな圧力差に相当する。従って、体積誤差0.8%は圧力誤差±15 GPa (3.5%)と10 GPaを超える圧力差となるが、culet 5 umの実験に比べれば半分以下となっており測定精度としては改善がみられた。
t-DACにおいて先端の凸部とそれを支える平坦部は,ds-DACにおける2段目アンビルと1段目アンビルの関係に対応する。凸部の形状は先端部の圧力分布・勾配を決定する重要な要素である。本研究では特に高い圧力発生報告のあるds-DACにおいて用いられている半球形状を模して,上部に微小なculet相当の平坦部を残しつつ球体上部1/4を切り出した形状を集束イオンビーム加工装置(FIB)によって作製した。Culetサイズは5, 10, 20 umの3種類を試行した。アンビル材は単結晶ダイヤモンド,ガスケットはレニウムを用い,圧力評価はレニウムの状態方程式(Anzellini et al. 2014; Sakai et al. 2018)を用いた。XRD測定はSPring-8 BL10XUにて行った。
Culet 5 umのt-DAC実験で,476~510 GPaまでの圧力発生に成功し,圧力スケールによる幅はあるものの,目的の500 GPa発生を実現することができた。ここでReの体積はRe 100, 101, 110の3本のピークを用いて決定しており,c/aは1.60程度と妥当な値であった。ただピークのブロードニングに起因する体積誤差が大きい(±~40 GPa)ため,もう少し大きなculet径にするなど,非静水圧の効果を低減しより質の良い圧縮状態を実現する工夫が必要と思われる。一方,測定箇所が中心から1~2 μmずれただけでも体積およびc/a比が大きく変化し,従って算出される圧力も大きく低下する。c/aが異常に大きいケースでは,一軸的な応力の効果として体積を過大評価し,従って圧力は過小評価されると考えられるため,先端部における正確な圧力分布の評価は非常に難しい。Culet 10 umおよび20 umのt-DAC実験では,それぞれ455~487 GPa, 421~449 GPaの圧力発生に成功し、いずれも400 GPa超を達成することができた。Culet 10 umでの実験では最高圧条件において数umの範囲においておおよそ均質な圧力場となっていることを確認できた。また、Culet 20 umの実験では最高圧の421 GPaにおいて6本のピークが測定され,c/aは1.58,体積誤差は0.8%であった。このような圧力領域では圧縮率が非常に小さくなるため、わずかな体積差が大きな圧力差に相当する。従って、体積誤差0.8%は圧力誤差±15 GPa (3.5%)と10 GPaを超える圧力差となるが、culet 5 umの実験に比べれば半分以下となっており測定精度としては改善がみられた。