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[R4-02] 広島花崗岩の風化による色変化過程
キーワード:花崗岩、風化、色
中国地方には花崗岩が広く分布している。花崗岩の風化断面を観察すると,地表付近の風化が進行した部分は鉄の二次鉱物の生成により黄~褐色を呈し,地下の未風化部に近づくにつれて白っぽくなることが多い。本研究では,広島花崗岩を例として,風化による色変化の特徴やメカニズムを調べた。広島大学東広島キャンパス横のががら山において深さ20 mまで掘削された花崗岩のコアを研究対象とした。分光測色計を用いて,各深度の色(L* a* b*値)を約2-10 cmおきに測定した。色の値は,L*値が大きいほど明るく,a*値が大きいほど赤みが強く(a* > 0の場合),b*値が大きいほど黄色味が強い(b* > 0の場合)。コアの色は,深さ12 m以深の白っぽい未風化部はa*値,b*値共に小さく,L*値は大きい。一方,深さ約12 mから約4 mにかけては,位置によりばらつきがあるものの,全体としては地表に近い部分ほどa*値,b*値共に増大し,L*値は低下する。各深度の色を,風化で生じる鉄の二次鉱物として代表的な4種類の含鉄鉱物で作成した標準物質の色と比較した。この標準物質は,goethite(黄色),ferrihydrite(暗褐色), lepidocrocite(明褐色),hematite(暗赤色)を,それぞれSiO2粉末と0-100%のさまざまな割合で混合したものである。掘削コアの風化の初期段階に相当する部分では,割れ目の周辺に濃褐色の帯があるがそれより奥は白っぽいことが多く,この濃褐色の帯はferrihydriteとgoethiteの混合物に相当する色を示した。一方,風化が進んだ部分では岩石マトリクス全体が黄色味を帯びていることが多く,この部分の色はgoethiteの色に近かった。一般に,ferrihydriteは時間の経過と共により安定なgoethiteやhematiteに変化していくことが知られている。掘削コアの色測定の結果から,風化の初期段階ではまずferrihydriteが多く生成し,その後風化の進行に伴いferrihydriteからgoethiteへの変化が進んだことが推察される。また,掘削コアの風化度が異なる数カ所について,選択的鉄溶解法で鉄の二次鉱物を溶かして定量した。コアの色と標準物質の色との比較からコアの各地点の鉄の二次鉱物の量(全てgoethiteと仮定)を推定し,選択的鉄溶解法で得られた値に対してプロットすると,概ね比例関係が認められた。現段階ではferrihydriteの寄与を評価できておらず,その影響を補正すると結果が変わる可能性はあるが,迅速・簡便なコアの色測定のみから鉄の二次鉱物の量を大まかには推定できる可能性が示された。