一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R5:地球外物質

2024年9月14日(土) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R5-P-05] 初期空隙がルチルの衝撃変成微細組織へ与える影響

*梅田 悠平1,2、永井 優馬1,2、富岡 尚敬3、関根 利守4、宮川 仁5、小林 敬道5、遊佐 斉5、奥地 拓生1,2 (1. 京大複合研、2. 京大院工、3. 海洋研究開発機構、4. HPSTAR、5. 物質材料研究機構)

キーワード:ルチル、衝撃変成微細組織、空隙

隕石やクレーター物質に含まれる鉱物の衝撃変成組織を調べ、その変成度を評価することは、過去の衝突の規模、強度、熱履歴などを読み解くために必要不可欠である。衝撃圧力と衝撃変成組織の関係については、主に衝撃回収実験データを参考に多くの鉱物種について検討され、衝撃スケールを見積もるための指標として用いられている[1]。しかし、各指標が制約できる圧力範囲は広く、さらに重複していることから現状においても精度の良い指標とはなっていない。この問題を解決するためには、飛翔体及び被衝突体の空隙率をきちんと考慮する必要があるということを本発表では問題提起したい。本研究では、衝撃変成組織に対する空隙の効果を検討するために、出発試料には二酸化チタン(ルチル)の単結晶(空隙無)とペレット化した粉末(空隙率30%)に対して、両者の衝撃圧力を30 GPaに揃えた条件で行った。二酸化チタンは圧力・温度によって様々な結晶構造へ変化し[2]、自然界では、TiO2の多形がドイツ・リースクレーター[3]、月クレーター[4]、コンドライト隕石[5]などから見つかっている。
衝撃回収実験は、物質・材料研究機構の一段式火薬銃を用いて行った。衝撃圧縮後、回収した試料について、X線回折法(XRD)による結晶相同定、透過型電子顕微鏡(TEM)による微細組織観察を行った。回収試料分析の結果、空隙の有無によって両者の衝撃変成組織は全く異なっていた。単結晶試料(空隙無)のXRDとTEM分析の結果、ルチルの{101}面に積層欠陥が卓越しており、塑性変形における支配的な転位のすべり系が{101}<01>であったことが明らかとなった。また、ルチルの一部においてα-PbO2型構造への高圧相転移が確認され、シェアメカニズムによる無拡散型の相転移が起きたことが示唆された。一方、粉末回収試料(空隙30%)では、α-PbO2型構造への相転移は確認されなかった。ルチル相のみからなり、絡み合った転位を持つ粒子と転位がほとんどない再結晶化した粒子から構成されていた。また、積層欠陥はほとんど存在しなかった。本研究から空隙の有無によって、同じ衝撃圧力においても衝撃変成組織が全く異なることが明らかとなった。本発表では、この違いが生じた要因について、塑性変形におけるルチルのすべり系の観点から考察する。

参考文献
[1] Stöffler et al., Meteoritics & Planetary Science, (2018)
[2] Nishio-Hamane et al., Physics and Chemistry of Minerals, (2010).
[3] El Goresy et al., Earth and Planetary Science Letters, (2001).
[4] Hou et al., IOP Conf. Series: Earth and Environmental Science, (2021).
[5] Xie et al., Acta Geochimica, (2023).