2024 Annual Meeting of Japan Association of Mineralogical Sciences (JAMS)

Presentation information

Oral presentation

R6: Plutonic rocks, volcanic rocks and subduction factory

Sat. Sep 14, 2024 9:00 AM - 12:00 PM ES Hall (Higashiyama Campus)

Chairperson:Tatsuhiko Kawamoto(Shizuoka University), Takashi Yuguchi, Atsushi Kamei

9:45 AM - 10:00 AM

[R6-04] Petrography and geochronology of the Kuki granite, Kitakami Mountains, northeastern Japan: Shallow crustal intrusion and emplacement processes of granitic magma

*Satoshi SUZUKI1, Takashi YUGUCHI2, Keito ISHIGURO1, Kyoka ENDO1, Asuka KATO1, Kosuke YOKOYAMA1, Yasuhiro OGITA3, Tatsunori YOKOYAMA3, Shuhei SAKATA4, Takeshi OHNO5, Eiji SASAO3 (1. Yamagata University, 2. Kumamoto University, 3. Japan Atomic Energy Agency, 4. University of Tokyo, 5. Gakushuin University)

Keywords:Flare-up, Non-adakitic magma, Fractional crystallization, P-T history, t-T history

島弧-海溝系の沈み込み帯で生じるカルクアルカリ~ショショナイト質マグマ(非アダカイト質マグマ)の形成は,大陸地殻の発達・進化に大きく寄与する(例えば,Gill, 1981; 巽, 2004).さらに,島弧-海溝系の沈み込み帯では,若い海洋地殻の沈み込みの部分溶融により生じるアダカイト質マグマの産出も報告される(Martin, 1986; Defant and Drummond, 1990).また,島弧-海溝系の沈み込み帯において,「フレアアップ(Paterson and Ducea, 2015)」と呼ばれるマグマの生成量が爆発的に増加する時期が知られており,フレアアップ期には,マグマの上昇や貫入・定置プロセスに関連し,大陸地殻の大規模な発達・進化が生じる.そのため,島弧-海溝系のフレアアップ期におけるアダカイト質マグマ・非アダカイト質マグマの貫入・定置プロセスを把握することは,大陸地殻の発達・進化を理解する上で重要なピースとなる.
 島弧-海溝系の沈み込み帯のマグマ活動のダイナミクスを評価する上で,北上山地の深成岩体は,マグマの生成量が増大する白亜紀「フレアアップ期(Pastor-Galán et al., 2021)」,「アダカイト質マグマ」と「非アダカイト質マグマ(カルクアルカリ~ショショナイト質マグマ)」(土谷ほか, 2015)の特徴を併せ持つため,最適な研究対象と言える.北上山地の深成岩体の産状として,非アダカイト質マグマ単独で形成されるカルクアルカリ~ショショナイト質深成岩類と,アダカイト質岩の周囲に非アダカイト質岩が分布する累帯深成岩体に分類される(土谷ほか, 2015).本研究では,非アダカイト質マグマの一例として北部北上山地の久喜花崗岩体の貫入・定置プロセスを解明することで,フレアアップ期の大陸地殻浅部への大量のマグマ供給に由来する大陸地殻の発達・進化の理解の第一歩と位置付ける.
 本研究では,久喜花崗岩体に対し,岩石学的研究と年代学的研究を実施したため,大陸地殻浅部におけるマグマのマグマ溜りプロセス(冷却過程,分別結晶作用など)について議論する.岩石学的研究ではホルンブレンドの化学組成から結晶化温度と圧力を導出し,マグマの温度-圧力(P-T)履歴が明らかとなった(図1a).ここで,圧力は深度に読み替えることができるため,久喜花崗岩体のP-T履歴からは,マグマの冷却(800 ℃から730 ℃へ)と深度の変化に相関が認められないことがわかる.また,その導出された圧力から深度約9-10 kmにマグマが定置したと解釈できた.年代学的研究として,ジルコンのU-Pb年代,Ti濃度,Th/U比の同時測定から,(1)マグマが固化するまでの時間-温度(t-T)履歴,(2)ジルコンの結晶化温度とTh/U比の関係からマグマの分別結晶作用について考察した.ジルコンのt-T履歴は,マグマ溜りが約125 Maにおいて約900 ℃から700 ℃まで冷却したことを示唆する(図1b).ジルコンのTh/U比の変化については,マグマ溜りの温度低下に対する分別結晶作用の評価に有用であることが知られる(Schofield, 2010; Kirkland et al., 2015; Pineda et al., 2022).この変化はUよりもThを取り込みやすい鉱物,例えばトーライトの結晶化に伴う分別に起因しており,ジルコンと共結晶化することでジルコン中のTh/U比の低下につながると理解されている(Pineda et al., 2022).久喜花崗岩体では鏡下観察からジルコンと接触(共存)関係にあるトーライトが確認されており,ジルコンとトーライトは共結晶化していたことが示唆される.ジルコンのTh/U比と温度変化の関係では,800 ℃以上でジルコンの結晶化温度の低下に対するTh/U比の減少が大きいことから,800 ℃以上でマグマ溜り内での鉱物の分別結晶作用が活発であったと解釈できる(図1c).つまり,約125 Maにおいて,久喜花崗岩体を形成したマグマ溜りは,比較的活発な分別結晶作用(ホルンブレンドやジルコンの晶出)を生じながら深度約9-10 kmに温度800 ℃で定置しその後,比較的穏やかな分別結晶作用を生じつつ冷却し,約700 ℃においてホルンブレンドとジルコンの結晶化が終了したと結論した.
R6-04