10:15 AM - 10:30 AM
[R6-06] Estimation of temperature and pressure conditions of granitoids in the eastern part of Shimane Prefecture, San'in Belt.
Keywords:granitoids, Amphibole only geothermobarometer, San-in granitoids
はじめに 西南日本内帯に分布する山陰帯花崗岩類は,磁鉄鉱系列に分類される (例えばIshihara, 1977など).Kawakatsu and Yamaguchi (1986)は,山陰帯花崗岩類に含まれる角閃石のゾーニングから,磁鉄鉱が二次的な晶出鉱物であり,マグマの固結末期におきた脱水により生成された熱水流体よるFe-Ti酸化物の再平衡で晶出したものと指摘している.またこの熱水変質作用により斜長石や黒雲母の変質も確認される (Takagi et al., 2010).このため,主成分鉱物の化学組成を用いた地質温度圧力計による山陰帯花崗岩類の形成温度圧力条件の推定について,その報告は限られている.一方で近年,マグマの高温高圧平衡実験データに基づいた角閃石単相温度圧力計が提案されている (Ridolfi and Renzulli., 2012; Putirka, 2016など).角閃石単相温度圧力計は経験的温度圧力計であり,適用の際に共存相の平衡状態を仮定する必要がなく,さらに一つの分析点から独立した結果が得られる(石橋ほか, 2021).そのため本研究は,山陰帯花崗岩類の形成環境を推定することを目的として,島根県木次~竹崎地域の花崗岩類について,岩石記載と角閃石単相地質温度圧力計を用いた温度圧力条件の解析をおこなった.
研究手法 本研究は大東岩体,小木石英閃緑岩,阿毘縁岩体を対象に行った.これらの岩体については,火成活動についての議論が既になされている (薬師寺ほか, 2012; 岩田ほか, 2013; 野口ほか, 2021).各岩体から試料を採集し,薄片の作成,観察をおこなった.形成温度圧力の検討は,Ridolfi and Renzulli (2012)による角閃石単相圧力計,Putirka (2016) による角閃石単相温度計を用いた.角閃石の組成分析は愛媛大学理学部設置のSEM-EDS を用いた.
結果・考察 本研究で検討した全ての岩体の試料について,角閃石は内部の褐色部とそれを覆う緑色部に分けられた.褐色部は累帯構造やパッチ状組織を呈している.また褐色部の縁辺や緑色部は磁鉄鉱を包有する.角閃石の化学組成は褐色部から緑色部にかけて [A](Na +Ca),Fe/(Fe +Mg),AlTが減少する.さらに角閃石は,Hawthorn et al. (2012)による角閃石の分類において,主にマグネシオホルンブレンド に分類された.本研究では,角閃石の褐色部がマグマから晶出した際の組成を保持しているものと考え,褐色部の化学組成を用いて角閃石単相温度圧力計を適用した.その温度圧力見積もりの結果は,大東岩体で78~169 MPa,761~804 ℃ (n=4),小木石英閃緑岩で98~147 MPa,747~794 ℃ (n=6),阿毘縁岩体で158~235 MPa,763~830 ℃ (n=8)であった.これらの温度圧力見積もり結果はH2Oに飽和した花崗岩質からトーナル岩質マグマのソリダス曲線 (Piwinskii and Wylli, 1970)にそれぞれ調和的である.また,先行研究の全岩化学組成分析結果を用いて,ジルコン飽和温度計 (Watson and Harrison, 1983)を適用すると,大東岩体で736~786 ℃,小木石英閃緑岩で640~753 ℃,阿毘縁岩体で759~791 ℃を示し本研究の温度見積もりの結果と調和的である.さらに大東岩体については,溶結凝灰岩に貫入している産状が認められる(野口ほか, 2021).このことは大東岩体が地殻浅所で形成されたことを示唆しており,本研究の圧力見積もりと調和的である.
引用文献 Hawthorn (2012),Am Mineral,97,2031-2048,Ishihara (1977),Min Geol,27,293-305; 石橋ほか (2021),火山,66,2,119-129; 岩田ほか (2013),地質雑,119,3,190-204; Kawakatsu and Yamaguchi (1986),GCA,51,535-540; 野口ほか (2021),地質雑,127,8,461-478; Piwinskii and Wyllie (1970),J Geol,78,52-76; Putirka (2016),Am Mineral,101,841-858; Ridolfi and Renzulli (2012),CMP,163,877-895; Takagi et al.(2010),JMPS,105,194-214; Watson and Harrison (1983),EPSL,64,295-304; 薬師寺ほか (2012),地質雑,118,1,20-38
研究手法 本研究は大東岩体,小木石英閃緑岩,阿毘縁岩体を対象に行った.これらの岩体については,火成活動についての議論が既になされている (薬師寺ほか, 2012; 岩田ほか, 2013; 野口ほか, 2021).各岩体から試料を採集し,薄片の作成,観察をおこなった.形成温度圧力の検討は,Ridolfi and Renzulli (2012)による角閃石単相圧力計,Putirka (2016) による角閃石単相温度計を用いた.角閃石の組成分析は愛媛大学理学部設置のSEM-EDS を用いた.
結果・考察 本研究で検討した全ての岩体の試料について,角閃石は内部の褐色部とそれを覆う緑色部に分けられた.褐色部は累帯構造やパッチ状組織を呈している.また褐色部の縁辺や緑色部は磁鉄鉱を包有する.角閃石の化学組成は褐色部から緑色部にかけて [A](Na +Ca),Fe/(Fe +Mg),AlTが減少する.さらに角閃石は,Hawthorn et al. (2012)による角閃石の分類において,主にマグネシオホルンブレンド に分類された.本研究では,角閃石の褐色部がマグマから晶出した際の組成を保持しているものと考え,褐色部の化学組成を用いて角閃石単相温度圧力計を適用した.その温度圧力見積もりの結果は,大東岩体で78~169 MPa,761~804 ℃ (n=4),小木石英閃緑岩で98~147 MPa,747~794 ℃ (n=6),阿毘縁岩体で158~235 MPa,763~830 ℃ (n=8)であった.これらの温度圧力見積もり結果はH2Oに飽和した花崗岩質からトーナル岩質マグマのソリダス曲線 (Piwinskii and Wylli, 1970)にそれぞれ調和的である.また,先行研究の全岩化学組成分析結果を用いて,ジルコン飽和温度計 (Watson and Harrison, 1983)を適用すると,大東岩体で736~786 ℃,小木石英閃緑岩で640~753 ℃,阿毘縁岩体で759~791 ℃を示し本研究の温度見積もりの結果と調和的である.さらに大東岩体については,溶結凝灰岩に貫入している産状が認められる(野口ほか, 2021).このことは大東岩体が地殻浅所で形成されたことを示唆しており,本研究の圧力見積もりと調和的である.
引用文献 Hawthorn (2012),Am Mineral,97,2031-2048,Ishihara (1977),Min Geol,27,293-305; 石橋ほか (2021),火山,66,2,119-129; 岩田ほか (2013),地質雑,119,3,190-204; Kawakatsu and Yamaguchi (1986),GCA,51,535-540; 野口ほか (2021),地質雑,127,8,461-478; Piwinskii and Wyllie (1970),J Geol,78,52-76; Putirka (2016),Am Mineral,101,841-858; Ridolfi and Renzulli (2012),CMP,163,877-895; Takagi et al.(2010),JMPS,105,194-214; Watson and Harrison (1983),EPSL,64,295-304; 薬師寺ほか (2012),地質雑,118,1,20-38